「海外で日本語教師になりたい」とおっしゃる方はたくさんいらっしゃいます。そんなみなさんが「海外」として思い描いているのは、概ね「欧米圏」であることが多いようです。
当ページは、日本語教師になるには(国内編)に続いて、欧米圏で日本語教師になる方法を簡単にまとめたものになります。

欧米圏で日本語教師になるには?

欧米圏で有給の日本語教師として働くのは、別記のアジア圏とはまた少し様相が異なります。

 欧米圏で日本語学習者が多い場所は?

欧米圏
まず、欧米圏で日本語の学習者が多いのは、日本語学校などと違って、外国語の選択科目として日本語を学習している公立・私立の小中高校であることが多いです。

その小中高校で働くには、現地の規定に従って、現地の人たちが教師となるのと同じ課程、例えば現地の大学で教職課程などを数年履修し、卒業しなければならないなど、各国により定められた経歴や語学力、資格などの点から狭き門となっています。

アジア圏と違って欧米圏では日本語の需要、特に高額なお金を払ってまで能動的に日本語を学習したい、という需要がほとんどないため、小中高校以外の民間の語学学校での需要はほとんどなく、欧米圏で日本語を教えるフルタイム職に就く、というのは非常に難しいものがあります。

 語学学校等でなるには?

稀に、民間の語学学校などで募集はありますが、そのほとんどが週1,2日程度のパートタイムであり、パートタイムでは就労ビザ取得は困難なため、必然的にその国での有給の就労ができる適正なビザをすでに持っている人が対象となってしまいます。→参考:[欧米圏の日本語教師・教職の求人情報]

永住権等を持ち、ビザの問題がない人は、一般的には、民間の語学学校やプライベートで教える場合は、特に決まった資格はありません。
その場合は、日本語教育を学んだ/教えるスキルがある証明として、

  • 日本語教師養成講座修了
  • 日本語教育能力検定試験合格
  • 大学で日本語教育を主/副専攻

などが応募資格の参考(採用の判断基準)になることが多いです。
日本の法務省告示機関のような資格の縛りはありませんので、現地在住の人は「日本人だから」という理由だけで日本語教師として採用されるケースもあります。

日本語教育能力検定試験は毎年1回、日本国内でしか開催されませんし、日本語教師養成講座は欧米圏で通学で受講できるもの少ないので、ワーキングホリデーや留学、国際結婚等で現地在住の方は、通信の日本語教師養成講座などで日本語教授法を学び、資格として活用する方もいらっしゃいます。

 欧米圏の特徴「間接法」

欧米圏で日本語を教える際、日本やアジアと大きく異なる点があります。それは間接法で教えることが多いという点です。
間接法とは、学習者の母語を使って日本語を教える方法で、英語圏なら英語を使って、ドイツならドイツ語、フランスならフランス語で日本語を教える、という教授法です。
間接法は特に日本語学習初級者に教える際に効果的だといわれています。

一方、日本の日本語学校などでは、母語がそれぞれ異なるアジア各国からの生徒が1つの教室に集うことが多く、共通言語である日本語を使って教えざるを得ない状況です。
また、アジア圏においても、そもそもアジア各国の言語が話せる日本人の日本語教師がいないため、直接法がとられているケースが多いです。

欧米圏においては、初級学習者が多いことや、英語などを話せる日本人が比較的多いことから、間接法で教えるケースが多く、そのため、資格以外にも相応の語学力が求められます。

欧米圏の過去の給料・待遇事例 国別比較

 アメリカの例

アメリカ画像【勤務地】:アメリカ・サンフランシスコの日本語学校
【給与・待遇】:時給23ドル~ 【勤務条件】:週1日2コマ、契約雇用期間:3ヶ月
アメリカでは日本語の需要はあまりなく、フルタイムの仕事はほとんどありません。また、稀に求人が出てもそのほとんどは時給制のアルバイト職であり(時給目安:20ドル~50ドル程度)、週に1コマ(あっても2,3コマ)などで、かつ雇用期間も短期1ヶ月~6ヶ月以内などに限られているものが多く、ビザ取得が困難なことから、すでに就労可能なビザを持つアメリカ在住者(アメリカ労働許可書、OPT、グリーンカード等保持者)を対象限定としている求人がほとんどです。加えて、アメリカ在住日本人の数も多く供給過多の状態ですので、日本からの求人応募は受け付けていない場合が多いのが現実です。

 イギリスの例

イギリス画像【勤務地】:イギリス・ロンドン郊外の民間の日本語サービス機関(派遣事業)
【勤務体系】:週1出勤、または出向個人レッスン
【給与・待遇】:時給15~20ポンド(または日給50ポンド/毎土曜)
イギリスもアメリカ同様、日本語の需要というのはほとんどなく、あっても個人ベースの単発的な求人であり、その職で生計を立てるのは困難です。また、イギリス在住者(英国の就労できる適正なビザ所持者)のみを対象にした求人がほとんどです。
→参考:[ イギリスで日本語教師になるには? ]・・・日本人の教師は多いけれど・・・ビザがポイント

 フランスの例

フランス画像【勤務地】:フランス・パリの語学学校
【給与・待遇】:時給12ユーロ~ 【勤務条件】:平日夜または土曜の数コマ担当
【採用条件】:日本語教師有資格者で日常会話程度の仏語又は英語話者
フランスに限らず欧州も求人需要は単発的なものしかなく、正規雇用(フルタイム)職は皆無に等しいのが現実です。また、ただでさえ厳しい失業率に悩まされている欧州ですので、当然、外国人には雇用の門戸は閉ざされており(就労ビザが取れません)、フランス在住者を対象とした求人がほとんどです。
→参考:[ フランスで日本語教師になるには? ]…←CAPESや補助教員の道などから

 オーストラリアの例

オーストラリア画像【シドニー近郊】:民間の語学学校
【給料・待遇】:時給15~25オーストラリアドル
【勤務体系】:非常勤(パート/アルバイト) 主に土曜日
【採用条件】:日本語教師有資格者でオーストラリアで就労できる適切なビザ保持者で長期勤務できる方。英語での教授(間接法)経験ある方。
【オーストラリアの現状】:
欧米圏の中でも日本語教育が盛んと言われるオーストラリアではありますが、実態は現地の小中高校で外国語の選択科目として履修している人数が加算されているだけで、民間の語学学校まで通って日本語を習いたいという需要はほとんどなく、勤務先となる民間の語学学校は片手で数えられるほどしかありません。→参考:[ オーストラリアで日本語教師になるには? ]・・・養成課程をもつ教育機関や大学など。
そのため、オーストラリアであっても他の欧米圏同様、「履歴書を持っていけばどこかで雇ってくれる学校」が数字上の日本語学習者数ほどあるわけではなく、どうしてもオーストラリアで安定的に日本語教師をやりたいならば、豪州の大学に通って現地の教職課程を取って、小中高校の先生になるしかありませんが、それも日本語人気の低下で、年々厳しくなる一方ではありますが、アシスタント教師(ボランティア)としてなら、オーストラリアで日本語教育に携わる機会を比較的簡単に得ることができます。

 欧米圏のまとめ

以上の通り、欧米圏では需要の低さとビザの厳しさなどから、日本語教師として有給で働くのは非常に厳しいものがあり、今後も欧米圏での日本語の需要増加は見込めませんが、国際結婚をするなどして現地に長らく住んでいる方は、パートタイムなどの日本語教師の求人に巡り合えることもあるかもしれません。

また、現地の一般企業で働きながら、社内で日本語を教えるインハウス日本語教師という安定的な働き方をしている方もいらっしゃいます。

その他、無給ボランティアですが日本語教師アシスタントとしてなら、欧米兼の小中高校などで日本語を教える経験をすることができる国はあります。

日本語教師は結局、基本的にはアジアの国々の人々を相手にしたお仕事であることが、欧米圏などの日本語事情から見えてきます。

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