Q. 外国人に日本語を教える日本語教師という仕事に興味があるのですが・・・もうお世辞にも「新卒」という時期からは遠く離れてしまったのですが、日本語教師になるには適正年齢といったものはあるのでしょうか?


A. 日本語教師の業界では、何才から何才まで、といった共通の年齢制限というのは存在していませんが、完全に中途採用市場であることは確かです。ですので、一般の会社に就職するのとは異なり、「新卒だから有利」ということはまったくありません。むしろ新卒などの若い人ほど不利になるケースも少なからずあります(別問題として、事実上、新卒だと日本語教師として働けないケースもあります)。

年齢の幅が広いというのが日本語教師という仕事の1つのメリットであり、「何才でも始められる」「定年無くいつまでも働ける」というのは、まんざら誇大広告でもなんでもなく、そのことに魅力を感じて日本語教師の道に進む方もいらっしゃいます。

 30歳前後~40歳台が理想

雇用対策法違反になるため、国内の日本語教師の求人票には年齢制限が書かれていませんが、一般的には、日本語教師の適正年齢は20代後半~40代である、と業界では認識されていることが多いです。
その理由は、日本語教師としてやっていくには、

1.社会経験
2.教師としての貫禄
3.柔軟性・体力・気力
4.お金(貯蓄や生活基盤)

があったほうが、うまくやっていけることが多いためです。

1.社会経験

1の社会経験が求められる理由は、日本語を学ぶ外国人は、日本語を学ぶとともに、日本企業の風土・慣習やビジネスマナー、日本の社会そのものも知りたがっているためです。日本語教師自身が、日本の社会を身をもって知っておかないと日本語のクラスで生徒が知りたがっている「リアルな日本」を、説得力を持って説明することができません。

また、日本語を教える際も、ただ文法だけならテキストを読めばいいわけで、日本語学習者は、テキストに描ききれていない行間にある生きた日本語を、実社会に則した形で伝えないと、学習者の心に言霊として響くことはありません。

ですので、大学を出て、少なくとも何年かは一般企業などで働きながら、自身が身を持って日本社会を経験し、いろいろな職場環境や企業風土など、日本社会の良い面も悪い面もインプットできた日本語教師のほうが、結果、教室でのアウトプット(引出し)も増え、言葉に説得力が生まれ、バリエーションの多い、評判の良い教員として、自ずと生徒に慕われるようになっていきます。

また、ご自身が一般の就職を経験しておかないと、日本語教師となって困難に直面した時に、「あー、やっぱりサラリーマンやOLになっておけばよかったー」と、どうしても隣の芝生は青く見える/無いモノねだりで、日本語教師という専門職から逃げ出しやすくなってしまいます。
その点、脱サラや脱主婦で、この新世界に飛び込んできた人は、元いた世界の良い面も悪い面も経験し、決別して日本語教師になっているので、別世界に未練がなく(逃げ道もなく)、覚悟を持って本腰入れて日本語教師をやっていける、という特性があります。

そのため、社会経験を何年か積んだ30歳代~の頃合がちょうどよく、実際、現役日本語教師として働いている年代層は、30歳代、40歳代が一番多いのがこの業界です。→参考:日本語教師か就職かの進路に迷ったら・・・社会人経験も日本語教師の勉強の1つ

2.教師としての貫禄

日本語教師の土台2も1と関連しますが、日本人は外国人から見ると、外見的にどうしても若く見られがちです。ただ若いだけならよいのですが、精神的にも外見的にも知識的にも「幼い」といった、どちらかというと「innocent」(無知・無邪気)に近い意味で見られてしまっていることが多々あります。

20歳代の方も、もちろん、生徒と年齢が近く、お姉さん・お兄さん的な親近感を持たれるというメリットはありますが、しかし日本語学習者は必ずしも20歳前後の学習者ばかりではありません。
けっこう20台後半や30代のビジネスマン、またはそれ以上の年代の生徒がたくさんいるのも日本語学校などの現実でもあり、中には年齢主義が強い国などは、「自分より年齢が下は教師とはみなさない」といった価値観を持った生徒もいます。

ですので、教師としての貫禄と説得力を持たせるためにも、1の社会経験といった内実的な理由に加え、外見的な理由からも、日本語教師は30歳代~が理想的な適正年齢だと言われています。

3.柔軟性・体力・気力

では、「年齢が上なほど有利か?」というとそこが難しいところで、思考の柔軟性や、体力、気力が求められるため、これらと経験のバランスから、適正な年代層(年齢の上限)が曖昧ながらも存在しているのも事実です。

柔軟性:外国人に日本語を教えるということは、自分が考えもしなかったことにハッとさせられる自己破壊の連続でもあります。そのため、自分の既成概念や決めつけ、偏見が変えられない頭が固い人、頭の中を一旦、真っ白にできない人は、日本語教師には向いていません。年齢が高くなればなるほど、どうしてもこの辺りが難となってくる人が多いため、その意味でも「中間層の30歳台が一番、適している」と言われる一因です。

体力・気力:言わずもがな、日本語教師は異文化との衝突で大量のエネルギーを消費しますし、クラスコントロールから教案準備に数時間かかったり、時には教室の外を飛び出しての課外授業など、体力、気力(精神力)が非常に求められる仕事です。あらゆる学生に対応できる意味でも、30歳代くらいが丁度よいと考えられています。

4.お金(貯蓄や生活基盤)

最後に、日本語教師としてやっていくには、ある程度のお金(貯蓄)なり、生活基盤が確保されていること、が重要な要素になります。よく、農業で独立する人などに、

3年間、無収入でもやっていけますか?

とコンサルタントの方などがアドバイスで問いかけることがありますが、日本語教師も同じです。日本語教師は農業ほどインフラ(設備投資)にはお金がかかりませんが、収入が不安定な職種であることには変わりありません。

例えば、領土問題などの国際情勢や地震などの地理的リスクの影響を受けやすい(日本語学習者である生徒が増減しやすい)仕事ですし、それらリスクがなくても、基本、非常勤での勤務形態が7割以上は占めている業界ですので、常勤になるまで、つまり日本語教師としての経験を積む3年~それ以上の期間を低収入で乗り越えていかないといけないリスクに常に向き合っていかなければなりません。→[日本語教師の給料が低い理由]

例え海外で日本語教師をやるにしても、日本語の需要があるのはアジア圏ですので、アジア圏勤務の場合、物価格差がありますので、その国での生活はなんとかなっても、実際の給料を日本円に換算すれば数万円程度に過ぎず、プラマイゼロかマイナス(貯蓄切り崩し)になることもしばしばあります。

そのため、20歳代のうちに、ある程度お金を貯めておくか、もしくは主婦の方のように、最低限の生活基盤だけは確保しておく必要があります。
尚、20歳代の方で親の支援を受けて日本語教師をやっていっても、結局、2,3年持たず、辞めてしまう/親の進言で辞めざるをえない方が多いので、やはり自分の力でお金を貯めて、30歳代頃に満を持してから日本語教師
の世界へ入っていったほうがよいことが多いのも、1つの事実です。

以上から、一般的には日本語教師の適正年齢は、30歳代~40歳代と言われています。但し、雇用先によっては採用の際に、明確に年齢制限を設けている学校などもありますし、もちろん、適正云々は個人差があることです。年齢のデメリットを能力と個性でカバーしているすばらしい日本語教師の方もたくさんいらっしゃいますので、あくまで一般論として参考にしていただければ幸いです。

 高齢化の傾向

追記として、年々、少子高齢化が進むに連れ、また日本語学校の乱立で、日本語教師の業界も人手不足が深刻になってきています。今では勤めている教員の3人に1人が60歳以上、という職場も少なくないのが現状です。
日本語教師は薄給で若年層が生計を立てられず参入しづらい一方、外国人労働者では代替し難い職種であり、今後はますます主婦やシニア人材の活用をせざるをえなくなってきていますので、年齢の上限については、あまり気にする必要はなくなってきています。