Q. 日本語教師になるために、420時間の日本語教師養成講座の受講を検討中です。日本語教育能力検定試験も受験したいと考えています。この道を進むにあたって、ネット上でいろいろ自分なりに調べているのですが、「日本語教師は飽和状態」と書いてあるものがある一方、「人手不足」という人もいます。「日本語教師の就職は簡単」という意見もあれば、「就職は難しい」「正規雇用はまずない」と書いてあるのもあり、両極端なのですが、実際のところはどうなのでしょうか?


A. 日本語教師の業界は、「全体的には人手不足」ですが、「部分的には飽和状態」なのが実態です。それゆえ、両極端な意見がネット上で飛び交う結果になっています。

 全体的には人手不足

まず、日本語教師の業界が「全体的には人手不足」なのは、毎日のように多くの求人があふれかえっていることからも明らかです。こちらの日本語教師の求人サイトをご覧になればわかりますが、毎日どこそこで新しい求人が登場し、常時、募集しているような状況で、慢性的な人手不足であることがわかります。

日本語教師の空き状況人手不足なのは、成り手が少ない職(離職率が高い職)・・・例えば、日本国内の日本語学校における非常勤職や郊外・地方の学校の全職、アジア、特に東南アジアなどで深刻な人手不足となっています。

実際、東京の郊外の、ある日本語学校(法務省告示校)が、

(規定数の)教員が不足しているとして、東京入国管理局が、4月に入学予定だった留学生約520人の在留資格を認めなかった (https://jp.reuters.com/article/idJP2018041301001967)

という件が2018年4月13日にも各メディアにて報道されました。

以上のように一部では深刻な人手不足であり、「選ばなければ」、日本語教師養成420時間講座修了や日本語教育能力検定試験合格など、一般的な有資格者であれば、必ずどこかに就職できる仕事ではあります。ほとんどの養成講座の就職率が100%に近いのも、そうした背景があります。こうした人手不足な現場では、未経験者でも雇ってくれる可能性は高いです。→参考:未経験者が応募できる日本語教師・教職の求人情報

但し、「就職できること」と「食っていけること(生計が立てられること)」はまったく別問題ですので、注意が必要です。「就職率が高い」と日本語教師養成学校や職安(ハローワーク)などで聞いて、安易に日本語教師の道へ進むと、その給料の安さと現実に直面し、すぐに辞めてしまう結果になりかねません。普通にコンビニでアルバイトしたほうが稼げる(割に合う)ケースも少なからずあります。「人手不足」=「離職率が高い」=「待遇や職場環境が良くない」ということの裏返しでもあるのです。

 部分的には飽和状態

一方、飽和状態なのは、待遇が良かったり、人気のポジションなどです。例えば、

  • 待遇と評判の良い日本国内の一部の日本語学校の常勤(専任)職
  • 大学など高等教育機関で教えるポジション
  • 欧米圏

などです。

日本国内の居心地も待遇も良い職場は、日本語教師も一度そこに就職すると、できる限り契約更新を繰り返しますので、なかなかそのポジションに空きは出ません。

大学で教える場合も、元々のパイが少ない上に、研究専門職でもあるので、慢性的に埋まっている状態です。

欧米圏も、元々の日本語の需要が少ない上に、欧米圏に住んで、欧米人に教えたい、という日本人があふれかえっている供給過多の状態です。そのため、稀に欧米圏で求人があっても、応募者の競争倍率は60倍以上になることもあります。

また、欧米圏は、需要が低いゆえに、あってもパートタイム的な仕事しかなく、パートタイムでは就労ビザが取れないというビザの壁も存在しています。(元々、欧米圏は失業率も高く、新たな外国人への就労ビザ等発給条件は厳しい国が多いのが実状です。)

以上のような人気のポジションは、飽和状態となっており、就職が厳しいのが実状です。

 今後は人手不足(日本語教師不足)が深刻化する恐れ

今後は日本国内及びアジア圏において、日本語教師不足が深刻になる可能性があります。その理由として、
(1)少子高齢化と人口減
(2)講座の認定制開始による資格制限
が挙げられます。

(1)少子高齢化と人口減

日本では少子高齢化と人口減が同時に進んでいます。労働力の核となる30-40歳代前後の人口は年々減っており、日本語教師においても高齢化が進んでいます。実際、日本語教師が10人くらいいる日本語学校のうち60歳以上の教師が2-4人程(3人に1人程度)を占めている職場というのは今では珍しくありません。

また、2050年には日本の人口は1億人を切ると予測されており、全体の労働力不足はもちろんのこと、日本の経済力の低下に伴って、日本語の需要自体の低下も考えられるため、日本語教師の待遇改善(給料の増加)は期待できません。日本語教師の給料は年収100万~300万円程度が一般的で、生計を立てるのが難しいため、生涯を生きる生活の糧が必要な若年層の大幅な流入は見込めない業界であることに今後も変わりがありません。

こと日本語教師に関しては、日本語を母語とするネイティブ教師である必要が高く、他の単純労働職のように、外国人労働者で簡単に置き換えることはできない「日本人である必要がある」職種でもあり、今後も(部分的な飽和状態と)全体的な人手不足は解消されることはないでしょう。

(2)講座の認定制開始による資格制限

さらに2017年より、日本語教師の資格の1つである「420時間講座」の文化庁認定制(届出制)が始まりました。フタを開けてみると、全国にある日本語教員養成校のうち、届け出自体も100校に満たず「要件が厳しく、教員不足に陥る」との懸念が広がっています。
認可された講座は高額なものが多く、日本語教師の実際の待遇に対して初期費用として見合わない側面もあり、その排他的な制度化は、学校や教員の質向上どころか、教員の画一化そして日本語教師自体が形骸無為化してしまう可能性をはらんでいます。

 まとめ

現状、日本語教師に関しては、資格だけが厳正化し(つまり門戸が狭まってしまった上に)、アジア圏の国々が専らの主要顧客であることに変わりがない以上、待遇(特に給与)部分の改善は見込まれません。
少子高齢化と人口減が進む中で、日本語教師も年配層(シニア)を中心としたパートタイム(非常勤職)で補っていく「高齢化」にならざるをえず、全体的な人手不足は今後も続くものと考えられます。

→ 文化庁認定や海外で受講できるものなど|日本語教師養成講座の比較・一覧
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