日本語教師の就職先

質問
Q.日本語教師に興味を持ち、単に日本語を教えること以外に何ができるんだろうという疑問を持ちました。日本語教師の資格を持ったら、どんな仕事ができるのか、日本語学校以外にどんな就職先があるのか、教えてください。

回答
A. 日本語教師は、「日本語」に関わることのすべてを仕事にすることができます。「日本語のプロフェッショナル(専門職)」として、個人の努力次第で、いかようにも活動の場を広げていくことはできます。

日本語教師といえば国内の日本語学校(法務省告示校)で働く、を思い浮かべる人がほとんどですが、実際は、日本語教師の就職先は多岐にわたります。

但し、資格を取ったら何でもすぐにできるというわけではもちろんなく、「日本語教師であること」を活かすには、まずは日本語教師としての下積み(経験)が必要となることが多いです。

ご参考までに、「日本語を教える」以外の日本語教師の働き方を10選(10例)、以下にご紹介します。

1.放送局

テレビ局やラジオ局で、日本語教師を募集していることがあります。

一例として、以下は某公共放送局の日本語教師の過去の求人例となります。

やさしい日本語ニュースの「日本語教師」の募集

  • 職務内容:日本在住の外国人や小・中学生のために、ニュースを「やさしい日本語」に書き換える作業。「やさしい日本語」とは、例えば旧日本語能力試験3級以下の文法事項を使っての、外国人でもわかりやすい簡易な日本語のことです。
  • 採用条件:検定合格者または大学で日本語教育専攻者で、日本語教師10年以上の経験者。要パソコン能力。
  • 雇用形態:直接雇用スタッフ
  • 勤務条件:11時~19時、シフト制、週休2日制
  • 待遇:時給制1980円(30分単位で支給)、交通費支給、社会保険適用あり
  • 勤務期間:1年(延長可能性あり/応相談)

「やさしい日本語」は、翻訳・通訳や、日本人が習った「国語」とは違うものです。国語の教師だからできる、というものではありません。むしろ「国語」の知識や経験が邪魔をすることもあります。

日本で外国人が増えるに伴い、今後も放送局などメディアでこのような番組制作に携わる日本語教師の需要は増えてくることでしょう。

2.出版社・教材開発

出版社に就職して、

  • (日本人を念頭に)日本語教師になるための本や、日本語教師としてやっていく際の教材・テキスト開発
  • (外国人を念頭に)日本語を学習するための本や、日本語能力検定やJLPTなど日本語の試験問題や問題集の開発、「やさしい日本語」を使った外国人用の日本語の本の開発

・・・という仕事もあります。いずれも日本語教師の有資格者であるというだけでなく、日本語教師としての現場経験が必要となってきます。

3.webコンテンツ・ソフト開発

前述の出版社と同じような仕事内容ではありますが、それよりも最近増えてきているのが、web系・オンライン系のお仕事です。例えばこれまでも、

  • オンラインJLPTハーフ模試の開発アイテムライター
  • 日本語を使うゲームソフトなどのコンテンツ開発・監修
  • iPhoneやiPadなどで利用できる日本語学習用アプリケーション制作、ポッドキャストによる音声およびビデオレッスン、ならびにレッスン教材を日々配信し、見て聞いて、楽しく日本語と日本文化を学べるサイト運営など

など外国人が日本語を扱う必要があるweb系・オンライン系のコンテンツ作成において、日本語教師が求められています。

4.役所

国または都道府県庁や市町村区役所などで、地域に住む外国籍の住人に対して発行する広報などの案内物の作成・日本語の校閲、web告知などの監修、サービス開発などに携わる日本語教師を募集することがあります。

ハローワークや各役所のホームページ等に求人情報は載っています。

特に外国人(日本語非母語者)に対する「やさしい日本語」の観点からの監修が求められます。この「やさしい日本語」は、単純に「通訳・翻訳」することや「国語としての日本語」の知識やスキルとは異なるものです。

在外の日本大使館・領事館職員が、在任中に通信で日本語教師養成講座を学び、外国人職員の日本語指導などに役立てるケースもあります。

5.事務・カウンセラー(進路指導・留学生サポート)

日本語学校や語学スクール、専門学校などで、外国人留学生などの対応をする事務職員・カウンセラーとして進路指導(大学・大学院への進学指導主事)や留学生サポートをする仕事もあります。

こうした職種では、語学力(外国語力)に加え、「日本語教師の資格/経験があると尚良し」としていることが多々あり、日本語教師としての職歴や資格は評価される傾向があります。
日本語教師の資格というのは、多様な国の文化の背景(外国人のバックグラウンド)を理解していることの1つの証明としての効果もあるようです。

6.学校経営・運営

自分は日本語教師として働かず、日本語学校や語学スクール、日本語教室などの「箱モノ」を作って、経営側に徹する、という方法もあります。「労働者」から脱して、「資本家」として働く、ということです。

これは良く言えば、学習者への学びの機会提供、日本語教師や事務スタッフなどの雇用の創出という社会的意義がある事業ですし、悪く言えば、自分は働かず、労働者から搾取する資本家になる、ということでもあります。

これからの社会は、ITによりますます精神労働の価値が高まり、単純労働者と二極分化していきますので、早い段階で「時間と労働の量り売りに終始する労働者」を脱することは、生活の安定を確保する点において、とても重要な試みと言えます。

7.日本語教師を養成する講師

「外国人に日本語を教える」ではなく、「日本人(または外国人)で日本語教師を目指す人を養成する」講師、という仕事もあります。

就職先としては、主に、

  • 民間の日本語教師養成講座の講師
  • 大学の日本語教師養成課程の講師

などがありますが、この場合もあくまで日本語教育の豊富な現場経験が求められますので、日本語教師を長年経験してきた上級者が就職できるポジションです。

この場合、日本人が主な顧客になりますので、外国人に教える日本語教師よりも、収入は より安定するため、人気のポジションですので、なかなか空きが出ない傾向があります。

大学で教授として勤める場合は、日本語や日本語教育の研究も仕事になります。

8.検定試験対策の講師

上述の「日本語教師を養成する講師」や「出版社勤務」に似ていますが、

  • 日本語教育能力検定試験対策の講座(通信・通学)講師

などもあります。

検定対策の通信講座を扱っている会社に就職し、検定対策の問題集・参考書の開発や通信添削講師(いわゆる赤ペン先生)として働く、というパターンです。もちろん、本人が日本語教育能力検定試験に合格していることや、日本語教師としての経験も求められます。

9.Youtuber、ブロガーなど

これはフリーランスのカテゴリーにも入るかもしれませんが、日本語教師であることを売りにして、Youtuber(ユーチューバー)やブロガーとして、

  • 広告収入で稼ぐ(アフィリエイトやアドセンスなど)
  • 独自開発の日本語教材の販売、本の出版、セミナーなどで稼ぐ

といった「インフルエンサーを目指す」スタイルもあります。

この場合、主な対象者(視聴者・閲覧者・購入者)は外国人になるのかもしれませんが、例えばアニメに特化して教える教材の開発などで差別化した上で、「日本語教師になるための/やっていくためのノウハウ」などを開発して本を販売したりセミナーを開催したり、TV番組「Youは何しに日本へ?」のような視点で外国人との交流経験・日本語教師経験などを発信していけば、日本人も顧客層に囲い込める可能性もあります。

動画やwebの広告収入自体で稼ぐ、というよりかは、あくまで動画やwebは客寄せのための入り口で、自分のオリジナルコンテンツ(教材や本など)への誘導が主目的、としてやっていくなど導線の工夫が必要です。

10.ふつうの会社

現実的な方法として、自分が今、努めている会社で日本語教師の需要を創り出す、という方法があります。どんな会社や団体も、何かしらの形で海外や外国人と関わらざるをえないのが現代の社会構造ですので、今の本職を続けながら、日本語教育のセクションを開拓して携わっていく、という働き方です。

「日本語教師になる」という発想ではなく、自分が今いる環境の中に「日本語教師を取り入れる」という発想が必要となります。

まとめ

以上のように、日本語教師は「直接教える」以外にも、いろいろな働き方があり、「日本語」に関係してくることのすべてを仕事にすることができます。

また、日本語教師として直接「教える」という働き方でさえも、日本語学校(法務省告知校)以外に、

  • 法務省告知校以外の語学スクール、日本語教室、インターナショナルスクールなどで働く
  • 企業派遣型・出向型で働く
  • オンライン日本語教師として働く(個人で/団体に属して)
  • 在日米軍基地などで働く
  • フリーランスとして働く

など、いろいろな働き方があります。→関連:法務省告示校以外の日本語教師・教職の求人情報

いずれにも共通する点は、ただ与えられることを待っているだけではダメで、常に情報収集のアンテナを張って、自ら開拓していくような意識が必要です。