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「日本語教師の資格について」

日本語教師に国家資格はありません。採用条件や資格に対する判断基準は、国・地域・雇用先によっても様々です。その中で、本頁では、法務省告示の日本語教育機関(外国人生徒受入のために法務省管轄でビザ発給を要する法務省告示校などの日本語学校・・・以下「法務省告示機関」と表記)で働く場合の、いわゆる「日本語教師(日本語教員)の規定/基準/資格」とされる指針及びその指針に至る経緯を時系列でまとめたものであり、それ以外の学校や形態、海外で働く場合には、この基準は必ずしも適用されません。

ガイドラインの変遷・歴史

 1983年~ 序章

1983年:「留学生受入れ10万人計画」(日本国政府)発表を契機に、以下2つの試験始まる。
1984年:「日本語能力試験」スタート←日本語非母語者(外国人留学生)の日本語の測定と認定
1988年:「日本語教育能力検定試験」スタート←専門性を有した日本語教員(日本語教師)の育成
(→この日本語教育能力検定試験の詳細や合格率はこちら)

 1988年 日本語教育施設の運営に関する基準について

1988年(昭和63年)12月23日:
日本語教育施設の運営に関する基準についてby 日本語教育推進施策に関する調査研究協力者会議
にて、日本語教師(日本語教員)については以下のような指針が示されました。
※これが世間一般で「日本語教員資格ガイドライン」と呼ばれているものです。

(教員の資格)
10 日本語教育施設の教員は次の各号の一に該当するものとする。
一 大学(短期大学を除く。)において日本語教育に関する主専攻(日本語教育科目45単位以上)を修了し、卒業した者
二 大学(短期大学を除く。)において日本語教育に関する科目を26単位以上習得し、卒業した者
三 日本語教育能力検定試験に合格した者
四 次のいずれかに該当する者で日本語教育に関し、専門的な知識、能力等を有するもの
(一) 学士の称号を有する者
(二) 短期大学又は高等専門学校を卒業した後、二年以上学校、専修学校、各種学校等(以下「学校等」という。)において日本語に関する教育又は研究に関する業務に従事した者
(三) 専修学校の専門課程を修了した後、学校等において日本語に関する教育又は研究に関する業務に従事した者であって、当該専門課程の修業年限と当該教育に従事した期間とを通算して四年以上となる者
(四) 高等学校において教諭の経験のある者
五 その他これらの者と同等以上の能力があると認められる者

1993年(平成5年)7月14日:「日本語教育推進施策に関する調査研究協力者会議」文部科学省webに記載↓
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19930714001/t19930714001.html

【解説とポイント】:
上の1988年の「日本語教育施設の運営に関する基準について」では、短大卒は不可で、四年制大学卒業者が望ましい。またその他条件を付しているが、結局、「五 その他これらの者と同等以上の能力があると認められる者」と最後に添えられているため、結局のところ、「同等以上の能力があると認められる者」であれば日本語教師は誰でもなれる(任意)ということも書かれている。



上記のガイドラインが曖昧なため、補足として、

 1993年 日本語教育機関審査内規

1993年(平成5年)12月14日:
日本語教育機関審査内規 by 財団法人日本語教育振興協会(日振協) 審査委員会
にて、以下の補足が加えられました。基準としての「420時間」の文言が初登場します。

9. 教員の資格
基準11(教員の資格)第四号の
「日本語教育に関し、専門的な知識、能力等を有するもの」とは、学士の学位を有する者及び
「(四) 高等学校において教諭の経験のある者」については、学校、専修学校、各種学校等における日本語に関する教育若しくは研究に関する業務に1年以上従事した者
又は420時間以上日本語教育に関する研修を受講した者とする。
日本語の教員としての資格を満たさない者については、収容定員に必要な教員数として認めないものとする。

法務省web :「日本語教育機関審査内規」(http://www.moj.go.jp/content/000073837.pdf)より↑

【解説とポイント】:

但し、ご覧の通りこの1993年の日振協の「日本語教育機関審査内規」でも「420時間」の具体的な学習内容については示されておらず、規定も認定もありません。
※財団法人 日本語教育振興協会(日振協)は、日本国内において「日本語学習を目的として来日する外国人学生が安心して日本語を学習できるよう」設立された「日本語学校の運営を見守る機関」であり(参照 http://www.nisshinkyo.org/ ) 、元々「日本語教師養成講座」のほうを認定する機関ではありません



そのため、
420時間以上日本語教育に関する研修」(日本語教師養成講座420時間)
の具体的な内容については、
以下の 文化庁『日本語教員養成において必要とされる教育内容』
が一般的に「420時間」の日本語教師養成講座の学習内容のガイドライン(指針)となっており、
日本国内の大手の学校をはじめとする多くの日本語教師養成スクール・講座が、
このガイドラインをベースにして日本語教師養成420時間講座のカリキュラムを組んでいます。

 2000年 日本語教員養成において必要とされる教育内容

2000年(平成12年)3月30日:
日本語教員養成において必要とされる教育内容
by 文化庁日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議『日本語教育のための教員養成について』報告より
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/bunka/007/0803.htm
またはPDF版(http://www.bunka.go.jp/file_l/1000011504_attach_1.pdf)


 2010年 日本語教育機関の審査・証明事業 廃止

2010年(平成22年)5月24日:
日本語教育機関の審査・証明事業 廃止
「行政刷新会議ワーキンググループにおいて、財団法人日本語教育振興協会が行う「日本語教育機関の審査・証明事業」は「廃止(法的により明確な制度に改める)」との評価結果が示されたことから」「従前の制度に代わる日本語教育機関の審査の在り方について、関係省庁とともに検討」に入る。
(http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00044.html)


 2016年 法務省 新基準

2016年(平成28年)7月22日: ※2017年(平成29年)8月1日から施行

 (1)日本語教育機関の告示基準

法務省入国管理局が「日本語教育機関の告示基準」とその「解釈指針」を告知。
→「日本語教育機関の告示基準」:http://www.moj.go.jp/content/001199295.pdf
→「日本語教育機関の告示基準 解釈指針」:http://www.moj.go.jp/content/001200381.pdf

 (2)文化庁【420時間日本語教員養成研修】

※上記(1)の「告示基準」のうち、420時間課程部分を文化庁がまとめたもの
日本語教育機関の法務省告示第1条第1項第13号ニにおいて日本語教員の要件として適当と認められる日本語教育に関する研修について(http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/kyoin_kenshu/)

 新基準(1)(2)のポイント

「日本語教育機関の告示基準」及び「解釈指針」は、これまでの日本語教員資格ガイドラインと骨子の部分は同じで大きな変更はありません。「420単位時間以上の研修」(いわゆる420時間の日本語教師養成講座)の内容については、これまで通り、上記の文化庁のガイドラインにそっているものであり学習内容は変更ありません。特筆すべきマイナーチェンジした点は、

  • 文化庁に届出がなされていること(海外の講座は審査対象外)
  • 1単位時間は45分を下回っていないこと
  • 通信講座の場合は、120単位時間以上は面接又は同時双方向性が確立しているメディアを利用して行う研修であること
  • 四大卒以上でないと、420時間を修了しても資格とはならないこと

・・・などの文言が盛り込まれた点です。つまり、変更点をまとめると(「法務省告示機関」で働く場合)、

  • 通信教育も、基準条件下で420時間修了の一手段として認められるようになった。
  • 420時間講座は文化庁の認可制になった。※海外の講座は審査対象外
  • 四大卒以上でないと420時間を修了しても資格とはならない

ということになります。


 2018年 新指針

2018年(平成30年)3月2日:
文化審議会国語分科会より、上述2000年(平成12年)3月30日の「日本語教員養成において必要とされる教育内容」(シラバス)の改訂版となる、「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」が発表されました。→ http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/__icsFiles/afieldfile/2018/03/02/a1401908_03.pdf

 日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)

日本語教育従事者養成における学習内容については、基本的には2000年(平成12年)3月30日の「日本語教員養成において必要とされる教育内容」(シラバス)を「踏襲」して同じですが、旧シラバスの中から「必須の教育内容」として、(1)~(50)項目が選抜されて提示されました(→上記「文化庁ガイドライン と 日本語教師養成講座 学習内容 対照表」)。

また、大学や420時間の養成課程においては、実際に日本語学習者に対しておこなう教育実習を経験させるよう、求めています。

その他、教える対象を「生活者としての外国人」「留学生」「児童生徒等」の3つに分類。また、日本語教育人材の役割を①日本語教師 ②日本語教育コーディネーター ③日本語学習支援者 の3つに整理され、それぞれに合った研修内容が示されました。


以上の全体をまとめると、現行で求められる資格は、以下1)~3)のいずれかに該当すること、となります。

■2017年8月1日以降、「法務省告示機関」で働く場合:

  1. 四大卒+文化庁届出受理の日本語教師養成420時間講座を修了→[講座の比較 評判や費用]
  2. 日本語教育能力検定試験に合格→[この検定の合格率など]
  3. 大学または大学院で日本語教育を主/副専攻(45単位/26単位)→[大学リスト大学院リスト]

※上記はあくまで最低条件で、個別に検定合格者にも四大卒を課している学校も有り。

尚、冒頭前述の通り、上記の規定は、「法務省告示機関」で働く場合だけの基準であり、それ以外の語学学校や日本語教室、スクール、オンラインや個人教授、出向派遣型、社内で日本語教師を行う場合や、海外で日本語教師を行う場合などには、この基準に拘束されるものではありません。

2019年 国家資格(公認日本語教師)化の動き

現在、文化審議会の小委員会等で「国家資格」創設の方向で、以下の件などが審議中・・・

  • 日本語教師について、判定試験を設ける方針(既有資格者には試験の一部免除等)
  • 日本語教育能力検定試験合格→後、教育実習履修者を優遇

国家資格とするかなども含め、具体的な内容は2019年度内にまとめられる予定。

いずれにしても、今そして過去の日本語教師の資格(420時間修了/検定合格/大学で専攻等)がベースとなるため、これまでの保有資格が反故にされることはないでしょう。なぜなら現有資格者を反故にしたら、日本語教師数が一瞬でゼロになり、日本語教育政策が崩壊するからです。

国家資格化しても、現資格保持者はある程度免除され、それに追加で教育実習などを受ければ、「公認日本語教師」(仮称)となれる・・・そんな制度作りが現在、なされています。

まとめると、日本語教師が「国家資格」化しても、これまでとはそれほど大きくは変わらず、多少、職業としてのお墨付きがなされ認知度も上がる、という形ですが、それはあくまで法務省告示の日本語教育機関においてのみ、ということになりそうです。
さらなる詳細は、国家資格(公認日本語教師)でどう変わるか?をご参照ください。