Q.日本語教師になろうと420時間の日本語教師養成講座を受講するか、日本語教育能力検定試験を受験しようか、迷っているのですが、最近、日本語教師が国家資格になり資格がいろいろ変わると聞いて、資格取得を躊躇しています。講座修了や検定合格が無意味になるのであれば、取得してもまるで意味がないので、どうしようか迷っています。

A. 特に躊躇する理由はないかと思われます。
と言いますのも、「日本語教師が国家資格になる」といっても仕組み自体は今までと大きくは変わらないからです。

今までの資格をベースにして、それに付加するような形で国家資格化するため、現行の資格を取っていても、有利にこそなれ、無駄になることはありません。

むしろ、420時間講座修了も、検定合格も、迷わずどちらも積極的に取得しておいたほうがよいでしょう。

国家資格(公認日本語教師)案

日本語教師の国家資格を作る上で、文化庁が以下のような「たたき台」を公表していますが、

「日本語教師の資格の仕組みのイメージ(案)議論のためのたたき台」-文化庁
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/nihongo_kyoiku_wg/04/pdf/r1421325_03.pdf
国家資格のイメージ

上図をご覧の通り(一部、文化庁の図に赤字と矢印で解説をこちらで加えています)、基本的な部分はこれまでと同じで、既存の「大学での専攻」「420時間講座修了」などがベースになっており、それらの資格保有者は、今後の制度化では「一部免除」されるなど、資格の優遇措置が取られることになっています。

変更点

  • 判定試験を設置(日本語教育能力検定試験がこれに充当される?可能性。但し、大学での専攻者や420時間修了者は一部免除措置が取られる可能性。)
  • 教育実習(追加講習)を設ける
  • 学士(四大卒)以上じゃないとダメ。これまでは日本語教育能力検定試験さえ合格していれば学歴は不問だったが、今後は四大卒未満は道が閉ざされる可能性。
  • 資格に有効期限を設ける(10年更新制)
  • 注目点:「多様な背景を有する、日本語教師を目指す者」枠の登場で、多様性を確保。
ちなみに朝日新聞が『「公認日本語教師(仮)」資格取得の流れ』(www.asahi.com/articles/ASM9N00QRM9MUCVL027.html)にて次のURLにある図
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20190920004319.html
を掲載していますが、その図の中で「教育実習(45コマ以上)」としてあたかも「授業数が45コマ以上ある」と読み取れるような掲載をしているのは正しくなく、これは、文化庁が「1コマ(45分程度)以上」と書いてあったものを読み間違えたのかと思われます。

既存資格が反故になることはない

前述の通り、どのように制度が創設されるにしても、これまでの既存資格がまったく反故にされる、ということはありません。

なぜなら、これまでの資格が無効になったら、日本語教師の数は一瞬にしてゼロになってしまい、日本語教育政策が崩壊してしまうからです。

そのため、今回の国家資格がどのように制度化されるにしろ、これまでの資格がベースとなり、また既存の日本語教師には、なんらかの救済措置が取られます。

救済措置については、2006-2007年の、法務省告示の新基準及び日本語教師養成講座の文化庁届出受理制度が始まった時も同じでした。

以上のように、資格については、どれか1つではなく、むしろ複合的に取得する必要が高まってきていますので、420時間修了した人は検定も、検定合格者は420時間修了も、大学での専攻者は420時間修了や検定合格もしておく必要は高まってきています。

実際、2017年と2018年の日本語教育能力検定試験は受験者数が増加し、過去最高の合格率も記録しています。それだけ、「どれか1つだけではなく、複数の資格を網羅しておく必要がある」と感じた人が多くなっていることがうかがえます。

国家資格化で改善するか

但し、上記はあくまで日本語教師になるためのシステム上の話であって、国家資格になったからといって、日本語教師の職場環境等待遇が改善するか?というとそれはまた別の話になります。

介護系でホームヘルパー等が介護福祉士など国家資格になったからといって、成り手が増えて人手不足が解消したかというと、全くそうでなかったのと同じように、日本語教師についても、成ることは難しくなっただけで、今後の人手不足は解消しないものと思われます。

制度が変わっても需要の不安定さは続く

なぜなら日本語教師(日本語の需要)は、結局のところ、アジアベースであることに変わりがないからです。

日本語が世界的に大きな需要があればよいのですが、需要があるのは、

  • 日本の少子高齢化による社会変化のギャップが埋まるまでの(人手不足が生じている)間
  • アジアの新興国や発展途上国が、豊かになるまでの間

がピークと思われるからです。

日本の少子高齢化に社会が適用するようになり(または日本の経済規模の縮小化が落ち着き)、人手不足が解消してくると、それほど外国人労働者はいらなくなってきます。
(例:定年廃止による高齢者雇用や女性人材活用の促進、A.I.化によるマンパワー削減化成功等)

また、アジア各国が豊かになってくると、わざわざ日本まで出稼ぎにやってくる必要もなくなるか、日本よりももっと稼げる国が登場すればそちらに労働者は流れるようになりますので、日本における日本語教育の需要というのは、今ほど無くなってくることが考えられます。

そうでなくても、ただでさえ、日本は地震などの自然災害大国な上に、近年、地球温暖化でスーパー台風など新たな大規模災害が起きやすくなっているところ、安全神話が崩壊しつつある日本に、リスクに敏感な外国人がどれだけ安定的に来続けてくれるかは楽観視できないでしょう。

まとめ

国家資格化でどう変わるか?を簡単にまとめると、

  1. 基本的な資格の土台はこれまでと変わらない(既存有資格者には救済措置もある)
  2. 公認日本語教師になるためのプロセスが少し追加された
  3. 四大卒に満たない人は、今後、公認日本語教師への道は閉ざされる可能性あり

という感じになるようです。

日本語教師(特に日本国内において)は「アジアの人々のお世話係」といっても過言ではないほど、根本的にアジア人ベースであり、どちらかというと貧困ビジネスに近く、介護業界と似た部分もあります。

最近の制度改正でむしろ(日本人が働きたがらない単純労働職や3K職への)労働力輩出のための日本語教育という様相が強まってしまったために、今後ますます(特に日本国内の)日本語教師は、殺伐としたものになってくる可能性が強いです。

また、近年始まった外国人日本語教師の育成との競合や、上記の国家資格と外国人日本語教師の矛盾(資格が違う)問題も生じてくるでしょう。

日本語教師に「なるのは難しくなったのに、なった後の環境があまり変わっていない」では資格取得の「費用対効果」は考えものの部分があります。

もちろん、これらは専ら日本国内事情(日本国内の日本語学校と技能実習生が関わるアジアの一部においての日本語教師環境)に限るお話であり、それ以外で日本語教師をやる場合は、「国家資格」とはまた別の話になりますので、「日本語教師になりたい/やっていきたい」場合は、まず「どこで、どのように働きたいのか」を明確に特定して、その自分の用途に応じた資格や知識をピンポイントで取得していくことが大切です。