日本語教師のすべてが国家資格(登録日本語教員)にならなければならない、というわけではありません。

【目次】

  1. 【誤解】「日本語教師」が国家資格になる・・・わけではない
  2. 登録日本語教員(国家資格)になる方法
  3. 登録日本語教員(国家資格)に関するQ&A

【誤解】「日本語教師」が国家資格になる・・・わけではない

日本語教育のシェアと国家資格の影響

まず、資格制度に関して、マスコミ含め、大きな誤解が拡散されていますが、「日本語教師」が国家資格になるわけではありません

そうした誤解がはびこってしまったため、国家資格の名称は、当初の「公認日本語教師」から「登録日本語教員」へと変更されました。

すべての日本語教師が国家資格である必要はない

正確に表現すると、日本語教師の中で、「一部の機関で日本語を教えたい人」が国家資格を有することが必要となる、というだけのことです。

一部とは、法務省告示の日本語教育機関(法務省告示機関=在留資格「留学」が付与される留学生を受け入れることが可能な日本語教育機関・・・つまり「外国人への日本でのビザ発給が関係する」日本語教育機関・・・一般的によくイメージされるのは、専ら法務省告示校である「日本語学校」)のことです。

日本語教師をされている人の中で、その法務省告示機関で日本語を教える教員として働きたい場合は、登録(国家資格を取得)しなければならない(=登録日本語教員にならなければならない)というだけのことです。

「教師」ではなく「教員」と表現されているのも、その点を識別するためです。
「教員」の「員」とは、ある特定のグループに所属する「メンバー」のことを指します。つまり、全体の日本語「教師」のことではありません。

日本語教師(日本語教育)全体の中でのその割合は、約20%程度のシェアです。

また、国家資格(登録日本語教員)を取ったからといって、その資格でもって、全世界どこでも日本語教師ができる、というわけでもありません(全世界共通の資格ではありません)。

これらの制度は、あくまでインバウンド(日本国内)の外国人労働者を管理する枠組みの一環として、基本的には法務省告示機関(いわゆる日本の日本語学校など)で働く日本語教師を想定した制度であり、それ以外のすべての「日本語教師」を取り仕切る制度ではありません。

例えば、日本国内において、すでに別に就労ビザ・永住ビザなどを持って滞在している外国人に対して、ビザを発給しない語学学校や日本語教室、企業派遣などの日本語教育機関、会社(社内)、オンラインなどで日本語教師をする場合は、「登録日本語教員」である必要はありません。

海外 vs 日本国内 の区分けも間違い

また、「日本国内の日本語教師は国家資格が必要になる」「海外の日本語教師は必要ない」という国内・海外の区分けの認識も間違いです。

  • 日本国内であっても、すべての日本語教師が登録日本語教員(国家資格)になる必要があるわけではなく(法務省告示機関以外の日本語教育機関や働き方もたくさんある)。
  • また逆に、海外であっても、数は少ないですが、法務省告示機関(日本国内でのビザ発給)が関係する場合は、登録日本語教員の資格が必要になる場合もあります(技能実習生送り出し機関など)。

ですので、国内か海外か?で「ゼロか100か」で分別できるものでもありませんが、基本的には海外は関係ないことが多い・・・特に欧米圏は多くの場合、関係ない・・・ということです。

前述通り、全体として国家資格の影響を受けるのは、約20%超程度です。

そもそもこの制度の主旨は、日本にやってくる外国人労働者の管理目的で発足し、「外国人を管理するためのインバウンドな制度」の一環として・・・あくまで外国人へのビザ発給に関わる部分における限定的な制度ですので(だから管轄は法務省なのです)、その辺りを重々理解し、勘違いしないようにしないと、「日本語教師」の可能性を自ら狭めてしまうことになりかねません。

資格のイメージ(例え)

国家資格後は、例えば、以下のような資格の職業に例えると、イメージしやすいかもしれません。

  • 構造・・・小中高校教員
    • 制度の全体的な構造のイメージとしては、小中高校の教員と同じような感じをイメージすると分かりやすいでしょう。例えば、日本の中学・高校などで「英語教員として」英語を教える場合は、学校教員免許(外国語/英語)を持っていなければなりませんが、それ以外の場所で英語を教える場合は、必ずしも学校教員免許は必要ない、むしろ(英会話スクールなど)日本の学校教員免許を持っていない英語教師のほうが多い、のと同じようなことです。
    • 但し、登録日本語教員は、国家公務員でもなければ地方公務員でもありません。給料が税金から出るわけではありません。勤務先のほとんどは中小零細企業です。そして登録日本語教員の約7割は非常勤(パートタイム/アルバイト)です。
    • また、小中高校教員免許を持っていれば、そのまま登録日本語教員になれる、というわけではありません。小中高教員と「仕組み」が似ているだけで、制度や管轄は異なり、「別物」です。
      →詳細:小中高学校教員はそのまま登録日本語教員(公認日本語教師)になれるか
    • 海外在住者が「海外で登録日本語教員の資格を取得したい」と、海外での資格取得方法を探し回って見つからないのは、「海外で日本の小中高校の教員免許を取りたい」と探して見つからないのと同じことです。海外は日本のお役所は治外法権、あくまで日本国内での制度です。
  • イメージとして近い国家資格は・・・
    • 当初「公認日本語教師」の名称が拡散したので、公認会計士などと誤認される方もいらっしゃるようですが、一番近い国家資格としては、保育士介護福祉士のようなものになると考えられます。
      登録日本語教員は、語学講師であること、アジアの貧困層が主な顧客であり、外国人就労・失踪・犯罪・移民問題等々ブラックな部分にも深く関わってくることから、特に介護福祉士がイメージとしては一番、近いかもしれません。
      入管や不法滞在・不法就労等の外国人問題に、ビザを発給する日本語教育機関は密接に関係するため、その引き締めの一環として、「法務省」傘下として日本語学校があり、「登録日本語教員」制度があるのです。
    • 保育士や、介護系のホームヘルパー等が介護福祉士など国家資格になったから、成り手が増えて人手不足が解消したのか?というと、全くそのようにはならなかったのと同じように、登録日本語教員についても、成ることは難しくなっただけで、今後の待遇改善や人手不足は解消しないものと思われます。

国家資格(登録日本語教員)でどう変わるか

メリット

  • 学歴撤廃
    これまでの法務省告示基準では、「文化庁届け出受理の420時間養成講座」修了者は付随条件として「四大卒以上」でなければなりませんでしたが、その学歴が撤廃されました。つまり、所定の講座、所定の試験をパスすれば、中卒・高卒・専門学校卒・短大卒でも登録日本語教員になれることになります。
    四大卒に満たない方で登録日本語教員を目指す方は、2024年4月以降になってから講座に通うほうが得策です(制度前に講座に通い始めると旧制度が適用されるため、大卒など諸条件が必要となってしまいます)。
  • 国籍・母語を資格取得要件としない
    「国籍・母語を資格取得要件としない」ことで外国人日本語教師への期待がうかがえます。近年始まった外国人日本語教師の育成との競合もあいまって、今後は外国人日本語教師の増加・競合がさらに促進され、「外国人の、外国人による、外国人のための日本語」のシェアが広がり、将来的には、日本語教育も日本人の手を離れていくことが予想されます。
    その初期段階では、初級日本語学習者は、外国人が彼らの母語を媒介語として間接法で日本語を教え、中上級者を日本語ネイティブの日本人日本語教師が教える、という役割分担になり、日本人日本語教師は今ほど数は必要ではなくなっていくのかもしれません。全体的に、日本人日本語教師の人手不足にはもはや諦めムードさえ漂っています。

デメリット

  1. 成り手が少なくなる逆効果(悪化)
    • 主力層の排除
      これまで「検定に何となく受かったので」とか「同年代の人たちとおしゃべりしながら養成講座に通って何となく修了して」気軽に日本語教師になっていた主力層、特にミドル~ご年配の方々が「なること」が難しくなります。少子高齢化が今後ますます深刻化する日本では、この層の活用が重要なのですが、逆に排除されることになります。

    • 本腰を入れて資格制度に臨まなければならなくなるので、「老後の生きがいに」とか「ボランティア感覚で」「主婦がお手伝いがてら」といった成り手が排除されることになります。
    • まずは大金
      費用も何十万円も掛けなければならなくなります。これまでは極端な話、独学で日本語教育能力検定試験に合格すれば、最少費用1,2万円程度で告示校での資格要件を満たすことができていました。
      その道がほぼ閉ざされ、まずは「お金ありき」で、指定の養成講座や大学に、最低でも数十万円以上を払わなければならなくなります。
      完全に資格商法化してしまいました。指定機関への「天下り」や「癒着」がないことを祈るばかりです。少子化で衰退が必須な大学救済の意図もあったのではないか?とも推測されます。国家資格化に合わせて、「日本語教師」資格で稼ごうとする怪しいサイトも乱立する結果となりました。
  2. 待遇は変わらない
    • 一方で、教員の7割が非常勤という状態は変わりません。非常勤とは、「1コマあたりなんぼ」のアルバイトであり、フリーターです。結局、日本語教員は語学講師であり、主な勤め先の国内日本語学校はどこも中小零細企業です。特に学校下で働く教員は、差別化が難しく、むしろ制度下でがんじがらめの度合いが強まります。
    • 顧客層(日本語の需要)がアジア、特に中国と東南アジアがメインであることも変わりありません。とても脆弱な土台の上に成り立っている職です。また、全世界の人口構成や日本経済の推移から、日本語のシェアが落ちていくのは確実です。
      →関連記事:日本語教師の需要と将来性

日本と世界の人口推移

チャイナリスク
その他、国際情勢の潮目が変わり、かつてないほど不安定化してきています。特に日本国内の日本語教育は、中国人学生に大きく依存している中国依存ビジネスです。国内の日本語教育業界の、全体としては50~60%ほどが中国に依存しており、個別では、ほぼ100%が中国籍の学生で占められている日本語学校も少なくありません。
ちょっとしたチャイナリスク(中国の台湾進攻等)により、数年以内に、国内の日本語学校の半数近くは倒産ないし長期営業休止・大規模縮小する(=登録日本語教員の多くが職を失う)リスクも、とても現実的です。その影響は「反日暴動(2012年)」や「コロナ禍」より深刻で、十年、二十年単位で続くことが予想されます。
※「まさか侵攻することはないだろう」との大方の予想の下、ロシアのウクライナ侵攻は起きました。

登録日本語教員(国家資格)になる方法

文化庁から登録日本語教員になる方法として、3つ、掲示されています(下図A,B,C)。

学歴・国籍などは撤廃されていますので、四大卒でなくても・・・中卒でも高卒でも専門卒、短大卒でも登録日本語教員になれます。

登録日本語教員の資格取得ルート(文化庁)国家資格・登録日本語教員になる方法https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/93964001_03.pdf

ヒント:自動車免許と同じ

分かりやすく例えると自動車免許の取得課程と同じような感じです。

  1. 自動車教習所(学科&技能教習)に通って卒業し、運転免許センター(学科試験)に合格する(→上図A ※Bは無視)
    または、
  2. いわゆる「一発試験」・・・直接、運転試験場もしくは運転免許センターへ行き、学科試験と技能試験に合格する(→上図C ※但し、登録日本語教員の場合、実践研修は1日では終わらない)

のと同じような構成になっています。

無資格者でゼロ・スタートの場合→主に2択(ほぼ1択)

文化庁から登録日本語教員になる方法として、3つ、掲示されていますが(上図A,B,C)、一般的には2択・・・しかし現実的にはほぼ1択になります。

2択とは、上図の一番左側の「A」の中の1と2のことです。

Aについて

  1. 大学で指定の養成課程26単位を履修して「応用試験」をパスする
  2. 文化庁届出受理の420時間の日本語教師養成講座を修了して「応用試験」をパスする

の2つが、一番オーソドックスな「登録日本語教員になる方法」です。

しかし、社会人の方が大学に入り直すのは現実的には困難かつ高額なので、ほとんどの方は、事実上、

  1. 「文化庁届出受理の420時間の日本語教師養成講座を修了して「応用試験」をパスする」

一択になることでしょう。

Bについて

選択肢Bは、座学だけしか準備できない(実践研修の場が準備できない)大学や民間の日本語教師養成講座のために設けられたコースのようですが、実際はそういう大学や講座に通う人は少ない(通わない方がよい)ので、Bの選択肢は現実的には無視(考慮対象外)ということになるでしょう。

特に大学は少子化ですでに定員割れが始まっており、コース維持がかなり困難で、認定の「検討中」「対応済」を繰り返したり、「廃止」になったり不安定な状況のところが多いです。
→詳細:日本語教師になるための大学
大学での養成課程履修はあまりお勧めではありません。

Cについて

Cは独学系です。座学の部分を独学で勉強して「基礎試験」と「応用試験をパスした後、教育実習を指定の「登録実践研修機関」で受ける、というものです。

イメージとしては自動車免許の「一発試験」に近いものがあります(前述)。

この選択肢Cのメリットは、一番、安く済むという点です。(おそらく登録日本語教員になる方法が資格商法化してしまい、いずれも高額になることの批判をかわすために設けられた道かと推察します。)

しかし、「登録実践研修機関」での研修は最低でも3ヶ月以上は想定されますし、「基礎試験」と「応用試験」の難易度は未知数です。おそらく日本語教育能力検定試験(合格率20-30%弱)に準ずる難易度になることが予想されます。
→参考:登録日本語教員(国家資格)筆記試験対策講座

まとめ

以上をふまえると、前述の通り、登録日本語教員を目指す無資格者ゼロスタートのほとんどの方は、事実上、

  • A-2「文化庁届出受理の420時間の日本語教師養成講座を修了して「応用試験」をパスする」

の一択になるのが現実的です。学歴は撤廃されているので、大卒である必要はありません。

旧有資格者・現職者の場合→経過措置

以前に資格を取った人や、現職の日本語教師の場合の経過措置に関する文化庁の発表は、以下の通りです。

登録日本語教員の資格取得に係る経過措置(文化庁)日本語教師の国家資格の経過措置https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/93964001_03.pdf

経過措置を受けられるのか?のポイントは、

  • 必須の50項目 / 5区分の教育内容
  • 現職者(1年以上の指定の日本語教育機関での経験)

の2点いずれかの有無です。

必須の50項目 / 5区分の教育内容

一番左の(C)の「必須の50項目」とは、要するに、

  • 指定の大学の日本語教育を専攻
    または
  • 文化庁届出受理の420時間の日本語教師養成講座

のいずれかを修了したか?ということです。

日本語教師の現職者でなくても(資格だけ持っている未経験者でも)「大卒」であり「必須の50項目」を修了している人は、「応用試験」をパスすれば登録日本語教員になれます。

左から2番目の(D-1)の「5区分の教育内容」というのも、「必須の50項目」に準ずるものですが、学習内容が少ない分、「応用試験」の前に「講習Ⅱ」を追加でクリアしなければなりません。

現職者(1年以上の指定の日本語教育機関での経験)

現職者の定義は、上図の ※1 に記載してある通りですが、

平成31年(2019年)4月1日(法施行5年前)~令和11年(2029年)3月31日(法施行5年後)の間に

  • 法務省告示機関で告示を受けた課程、
  • 大学、認定日本語教育機関で認定を受けた課程、
  • 文部科学大臣が指定した日本語教育機関(認定を受けた日本語教育機関が過去に実施した課程)

で日本語教員として1年以上勤務した者

のことです。

要は、法務省告示校(日本語学校)等の指定機関で日本語教員として1年以上勤務したことがあるか?ということです。

文化庁が公開している上図は、昭和・平成・令和の元号が入り乱れて非常に分かりづらく、その元号表記第一主義からも、いかにもこれが日本国内の資格制度である(海外はあまり念頭に置いていない)ことが分かります。

登録日本語教員(国家資格)に関するQ&A

Q.検定試験合格のみで登録日本語教員になれるか?

Q.大学で日本語教育を専攻しておらず、日本語教師養成講座も受けたことがない日本語教師未経験者が、2024年の4月までに日本語教育能力検定試験に合格していれば、そのまま国家資格の登録日本語教員になれるでしょうか?資格化後、何か更新などが必要になってくるのでしょうか?

A. 残念ながら検定合格のみでは登録日本語教員にはなれません。上記「登録日本語教員の資格取得に係る経過措置(文化庁)」図の通りです。

前述しましたが、経過措置では、

  • 「必須の50項目」+「大卒」
    または
  • 「現職者(認定機関での1年以上の教員経験者)」

等が必須です。

ポイントは実習(実務経験)の有無
日本語教育能力検定試験は、「必須の50項目」には該当しないため、「現職者」でもないのであれば、検定合格だけでは経過措置には該当しません(検定合格のみでは有資格者とはなりません)。ゼロスタートからになります。

登録日本語教員の制度は、

  • 「必須の50項目」の中の、特に「教育実習(実践研修)」を最重要視しています。
  • また、「現職者(認定機関での1年以上の教員経験者)」というのも、その「必須の50項目」内の「教育実習(実践研修)」と同等の評価、ということで経過措置に該当することになります。

日本語教育能力検定試験は、実習がないペーパー試験ですので、「実習(実務経験)命」の登録日本語教員制度においては、評価が無いのです。

ただ、登録日本語教員の「基礎試験」や「応用試験」は、日本語教育能力検定試験の内容とあまり変わらないので、検定試験合格のために学んだ知識や経験は、すべてが無駄になるというわけではないでしょう。

Q.資格取得は制度開始 前と後、どちらが得か?

Q.日本語教師になりたい者です。思い立ったらすぐに取り組みたいタイプなので、すぐに資格取得に取り組める講座のスクールを探しているところです。ただ、4月から登録日本語教員制度が始まる、ということで、今すぐに講座を始めることのメリットやデメリットが分かりません。今から始めたほうがいいのか、制度が始まった後からスクールに通ったほうがよいのか悩んでいます。

A. 最終的には人それぞれで個人様のご自由ですが、制度が始まった後から資格取得にのぞんだほうがよいでしょう。理由は以下の通りです。

例えば、四大卒に満たない人は、4月からの新制度では学歴は撤廃されますので、新制度になってからのほうが得策です。

  • 旧制度:文化庁届出受理の420時間の日本語教師養成講座+四大卒+応用試験(経過措置)
  • 新制度:文化庁届出受理の420時間の日本語教師養成講座+応用試験

旧制度下で資格を取得してしまった人は、大学に通わなくてはいけなかったり、「経過措置」を受けるために大学の卒業証明を取り寄せたり、いろいろ手続きが煩雑となります。

新制度下で、スッキリした状態で資格取得にのぞんだほうがよいでしょう。

文化庁認定の養成講座を運営するスクールは「民間の営利会社」ですので、「明日の予約より今日の現金(今日のノルマ)」で、すぐに申し込ませようとするかもしれませんが、現在、国家資格というパワーワードに異常反応してハネムーン状態(テンションが上がって冷静な判断ができない状態)の消費者が多いので、一度、期間を置いて、冷静になったほうが良いです。特に年末年始は「新年の計は元旦にあり」等々の心理が働き、資格取得に張り切る人が多くなる危険な時期です。

また、滑り込みで日本語教育能力検定試験を合格した人で、日本語教育能力検定試験しか資格条件に満たない人は、前述の通り、新制度では検定試験だけでは資格条件を満たさないので、焦って動いたことで損したことになります。

ですので、新制度が始まって、落ち着いてから資格取得にのぞんだほうがよいでしょう。時間的余裕がある人は、新制度の動向を2,3年は様子見したほうがよいかもしれません。

Q.海外では登録日本語教員になれるか?

Q.日本語教師が国家資格になるそうですが、国家認定資格はどのように取得出来ますか?(海外在住者)

A. まず、「日本語教師」が国家資格になるわけではございません(当ページ前述の通り)。

次に、ご指摘の国家資格(登録日本語教員)は、日本国内の制度であり、かつ専ら日本国内の一部の特定の機関(日本国内の外国人に、日本国のビザを発給する必要がある法務省告示機関等)で「教員」として「登録」するための資格です。
よって、海外で受講(取得)できるものはございません。

このご質問は、「日本の小中高校教員免許を海外で取得したい」と言っているのと同じです。

そして、上記以外の機関で日本語教師をする場合(海外含む)を拘束するものではなく、基本的には関係ありません。あくまで日本国内の特定の機関での教員を管理することを想定した狭い制度です。

Q.現職者・旧有資格者はいつまでに試験を受ければよいのか?

Q.現職の日本語教師です。四年制大学を卒業し、日本語教師養成講座420時間を修了し、都内の日本語学校(法務省告示校)で非常勤として10年以上、教えております。今回「国家試験」では、おそらく「応用テスト」のみを受験することになると思い、これから勉強し直していきたいと思っておりますが、試験は2024年4月になるとすぐに受験しなければならないのでしょうか。登録日本語教員(国家資格)筆記試験対策講座を考えておりますが間に合いますでしょうか。

A.上記の文化庁公表の経過措置の図を見ての通り、該当者は、経過措置期間中(~2029年3月31日)までに試験にパスすればよいのかと存じます。
ですので、2024年から勉強を始めれば、比較的時間的余裕(5年間)はあることになります。経過措置の期限が近づくにつれ、精神的余裕がなくなってくるので、早めに勉強は始めたほうがよいでしょう。

Q.国家資格化で日本語教師の待遇は改善するか

Q. 国家資格になることで、日本語教師の待遇は改善しますでしょうか?

A.国家資格化は、あくまで「教員になるまで(資格取得まで)」の話であって、国家資格になったからといって、日本語教師の職場環境等待遇が改善するか?というとそれはまた別の話になります。

制度が変わっても需要の不安定さや待遇の悪さは続く

なぜなら日本語教師(日本語の需要)は、結局のところ、

  • 日本語は世界的にはマイナーな言語で、日本の経済規模縮小・人口減・世界人口・他国の隆盛でそのシェアはさらに小さくなりつつある
  • アジアベースであること(アジア、特に東南アジアでしか専ら需要がない)
  • 主たる勤務先(日本語学校等)はどこも「中小零細企業」である
  • 一応「専門職」ではあるものの、差別化やキャリア構築が難しく、毎年同じことの繰り返し
  • 語学講師であり、「非常勤」(パートタイム/アルバイト)がメイン。時間を切り売りする労働モデル(自分の労働価値は他人による査定依存)である

に変わりがないからです。

日本語が世界的に大きな需要があればよいのですが、需要があるのは、

  • 日本の少子高齢化による社会変化のギャップが埋まるまでの(人手不足が生じている)間
  • アジアの新興国や発展途上国が、豊かになるまでの間

がピークと思われるからです。

日本の少子高齢化に社会が適用するようになり(または日本の経済規模の縮小化が落ち着き)、人手不足が解消してくると、それほど外国人労働者はいらなくなってきます。
(例:定年廃止による高齢者雇用や女性人材活用の促進、A.I.化によるマンパワー削減化成功等)

また、アジア各国が豊かになってくると、わざわざ日本まで出稼ぎにやってくる必要もなくなるか、日本よりももっと稼げる国が登場すればそちらに労働者は流れるようになりますので、日本における日本語教育の需要というのは、今ほど無くなってくることが考えられます。

そうでなくても、ただでさえ、日本は地震などの自然災害大国な上に、近年、地球温暖化でスーパー台風など新たな大規模災害が起きやすくなっているところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの災難も降り注ぎ、安全神話が崩壊しつつある日本に、リスクに敏感な外国人がどれだけ安定的に来続けてくれるかは楽観視できないでしょう。

全世界で働けるわけでもない

また、この国家資格を取ったからといって、全世界で日本語教師として働けるわけではありません。例えば、この国家資格を取ったからといって、アメリカ他欧米圏でビザが降りるわけではありません。

国家資格の効果は限定的であり、あくまで日本国内における外国人労働者を管理するためのシステムの一環としての、法務省告示の日本語教育機関(専ら日本国内の日本語学校)で働くための規制(資格)という、インバウンド・内向きで排他的な資格・・・というニュアンスが強いです。

非常勤メインも変わらない

国家資格と言えば、聞こえは良いかもしれませんが、結局、日本語教師は「コマあたりナンボ」の語学講師に過ぎません。

上述のように海外依存ほぼ100%の業界につき、生徒数も不安定なので、1,4,7,10月各期の入学者に応じて、授業のコマ数及び教員数を調整しなければなりません。

日本語教師のシェア

そのため、日本語教師は7-8割が非常勤で占められていると言われる現状は、今後も変わらないでしょう。日本語教師を本職(専業)としてやっていける人は、今後も限られるどころか、「なること」が難しくなり、気軽さは失われ、さらに深刻な人手不足に陥る可能性があります。

「国家資格」というネームバリューに魅かれて、一時的に成り手は増えるかもしれませんが、結局、離職者も多いので、さらに日本語教師の高齢化も進むことでしょう。実際、現時点ですでに、日本語教育能力検定試験の受験者の3人に1人以上は50歳以上となっています。

新型コロナウィルス感染症の蔓延で、常勤(専任)講師を多く抱え込むことでの経営のリスクを感じた日本語学校経営者も多くいることでしょう。アフターコロナになっても、今後はますます「非常勤」主体になることは間違いありません。

質の向上も疑問

この制度改革の背景の1つに、「日本語教師の質」が問題視されていた点がありますが、「教育実習さえ受けていれば良い教員になれる」といった「なる前」の教育実習部分だけが独り歩きしている点に問題を感じます。

現行の文化庁届出受理制度下の日本語教師養成講座もすでに形骸化しつつあり、「なった後」の教員の質の向上、管理・チェック機能がおざなりです。

資格商法の激化、何をするにもお金が必要に

この日本語教師の「資格化」の話が出るやいなや、完全に資格商法化してしまい、資格ビジネスの商機とみて新規参入してくる業者が増加。すでに日本語教育関連の「情報を発信する」という「日本語教師〇〇〇」といった名目の怪しいサイトが乱立。ライターを雇って適当な(信憑性のない/間違った)情報を発信したり、特定の講座や大学に強引に誘導しようとするサイトや会社が雨後の筍のごとく発生。

文化庁届け出受理の日本語教師養成講座の中にも、よくわからない(怪しい)講座があり、とりあえず講座は作ったけれど・・・運営状況さえ不明(受講生が集まらず、すでに休止状態?)なものも出てきています。

大学の利権、養成講座の利権、検定試験の利権もからみあい、全員、検定試験(に相当するもの)にお金を払って受験しなければなりませんし、養成講座も高額なものが多く、日本語教師は、何をするにもまずはお金がかかるような方向に向かっています。

Q.国家公務員資格化が検討されていますが・・・

Q.現在、日本語教師の国家公務員資格化が検討されていますが、可決されたとしたら、どのような変化がありますか?(カナダ在住者)

A.まず、「国家公務員資格化」(公務員)ではありません。税金が源泉ではない(税金から日本語教師の給料が支払われるわけではない)ので、「公務員」ではありません。あくまで「登録日本語教員」化(ないし「国家資格」化です。

変化については前述の通りです。すでに2017年より法務省告示校や文化庁届出受理の日本語教師養成講座などは始まっており、その現行制度ベースなので、それほど大きな変化があるわけではありません。

尚、国家資格の名の通り、この「登録日本語教員」は日本国内の一部の機関における制度です。基本的に、その他の機関、海外での日本語教師を拘束する資格ではありません。

Q.全員が国家資格を取らないといけないのか?

Q. これから日本語教師をやる場合、全員、この国家資格を取得しなければならないのでしょうか?

A. いいえ。必ずしもすべての「日本語教師」が登録日本語教員にならなければならない、というわけではありません。

これらの制度は、元々、法務省の外国人管理という観点から発している制度ですので、主に「法務省告示の日本語教育機関」で働く場合は、その制度下で定められる条件を満たさなければなりませんが、それ以外で日本語教師をやる場合は、必ずしも国家資格でなければならない、というわけではありません。

もちろん、いわゆる国家資格の制度は、多方面で「参考」として扱われることはあるかと存じますが、必ずしもすべてを縛るものではありません。

例えば、前述したように、日本国内外で英語を教えている人が、すべて日本の学校の英語の教員免許を持っているのか?と言えば、そうではない(むしろ持っていない人のほうが数は多い)のと同じことです。

特に国外のことは「治外法権」ですので、基本的にはその国のことは、その国のルールが適用されます。また、国・地域・学校によっても、教え方やニーズは異なり、日本語教育の現場は多様性に富んでいますので、「国家資格」制度下での一元的な教え方や価値観の押し付けにも限界はあります。

世界を広く俯瞰するに、「国家資格」制度の直接的な影響があるのは、日本語教育全体の20-30%程度です。