日本語教師の不安

社会情勢の変化が激しい現在、今は日本語教師を目指すのはやめたほうがいい理由が何点かあります。

尚、当ページは、

  • これからゼロから日本語教師の資格を取ろうとしている
  • 「法務省告示の日本語教育機関」で働こうと考えている

の2点を満たす方を念頭に書いてあります。
すでに日本語教師をされている方や「法務省告示の日本語教育機関」以外で働こうと考えている方には該当しません。

理由1.制度の変更

こちら国家資格(公認日本語教師)でどう変わるかにて説明してありますように、もうすぐ「法務省告示の日本語教育機関」における日本語教師の資格制度が変わります。

しかし、実際はどのように変わるのか、具体的な点がまだ不明な部分が多いです。

おそらく今の資格(大学で専攻/420時間講座修了/検定合格)に加えて、指定の教育実習を受ける、という形になりそうな感じではありますが、この制度の全容が具体的に明らかになり、さらに「制度が安定」するまでは、新たに日本語教師を目指すのは控えて、見守っていたほうがよいかもしれません。

例えば以下のような可能性もあります。

制度案の二転三転

2019年の国家資格(公認日本語教師制)案では、日本語教師はすべて「四大卒以上」でなければならない、となっていましたが、2021年3月の案では、学歴は撤廃(学士/四大卒以上という文言が消滅)されています。

2019年の案で慌てて大学に編入学した人などは、多額の授業料や時間などを損したことになります。

今後も制度案は二転三転する可能性が高いので、制度案の一挙手一投足に反応して、今動いてしまうことは得策ではないと言えます。

制度変更前に資格を取ってもブランクがあると無駄になるかも?

文化庁届け出受理の養成講座を運営する会社は「商売」ですので、「制度が変わる前に資格を取っておかないと!!」というスタンスで猛烈に販促をしています。

特に日本語学校を併設している会社は、日本語学校のほうの来日外国人生徒がコロナ禍で激減している現在、国内の日本人が養成講座に払ってくれるお金がないと死活問題でもあるので、とにかく「今、講座に申し込むように!」と切実なはずです。

しかし、資格をとっても、法務省告示の日本語教育機関で、一定数の勤務実績が無いと、資格は無効になる可能性もあります。

なぜなら、例えば、もし制度改革前の資格がすべて有効であるならば、「10年前に検定合格した」「5年前に養成講座を修了した」けれど、日本語教師をまったくやっていない人でも、そのまま「有資格者」になってしまうからです。それは今回の国家資格化の趣旨に反しているように見えます。

ですので、そこを見極めずに、言われるがまま、慌てて今、資格を取ってしまうと、ブランクが生じた場合は、結局資格として認められず、無駄な資格に多額なお金と時間を費やしたり、さらに別の資格を取らなければ意味がなくなったりする可能性があるからです。

もしかしたら、その資格取得後の勤務条件も、例え法務省告示校であっても、非常勤の経験は認められず、常勤で〇年以上の勤務経験者のみ、過去の資格はそのまま有効なものと認める、という厳しい条件が課せられるかもしれません。

以上のように、結局、制度がどうなるかわからない現段階において、あれやこれや動きすぎるのはリスクがあります。

理由2.新型コロナウィルスの影響

十分な教育実習ができない可能性

ご存知のように、新型コロナウィルス感染症の影響で、来日外国人が減っています。日本語教師になるための2つの方法「大学で専攻」「420時間講座修了」は、教育実習が肝になっていますが、これだけ外国人が減ってくると、実践的な教育実習が十分にできない可能性があります。

十分に実践的な教育実習ができないとなると、「教育実習が売り」の高額な420時間養成講座受講料に見合ったものがない、ということになります。

平常時よりも十分な教育実習を受けられないまま、日本語教師デビューしてしまうと、さらにコロナ禍で新人研修体制が十分ではない緊急事態下の環境で働くことになり、出だしからつまずく確率が高くなっています。

需要の低下(求人数の激減)

コロナ禍で、日本語教師が働く日本語学校等、日本語教育関連機関は経営の危機に直面しています。実際、先日も外国人実習生の介護仲介団体が破綻したニュースがありました。
また、生徒の減少で日本語教師を解雇した機関も多くあり(つまりリストラされた・失職した日本語教師が多数おり)、当面、日本語教師の雇用は、通常よりもさらに不安定な状態が向こう数年は続くものと思われます。

全体的な求人数は実質、半減です。

日本語学校も半年くらいは持つとは思われますが、それ以降は倒産する所がバタバタと出てくるかもしれません。

求人はあるにはありますが、当初の応募締切日より前倒しして応募受付終了することが多いことから、少ない求人に応募者が殺到していることがうかがえます。

つまり、このような状況下では、新参者は弾かれてしまうか、就職できたとしても、コロナ禍で生徒数が少ない日本語学校なので、最少人数で学校をまわしているため、ちゃんとした新人研修などは期待できない可能性が高いです。

コロナ後も環境変化

また、アフター・コロナになっても、オンライン授業の増加など、日本語教師の働き方や需要が大きく変わる可能性があります。特にこの1,2年は変動が激しいので、どのように変わっていくか、しばらく様子見をしたほうがよいでしょう。

でも述べたように、外国人日本語教師の育成も始まっていますので、今後は日本人の日本語教師も、今ほど必要ではなくなってきます。

また、コロナ禍で、専任(常勤)の日本語教師を多く抱えることにリスクを感じた日本語学校経営者も多くいたことでしょう。元々、日本語教師業界は非常勤が7-8割を占めていましたが、今後はますます非常勤が主流となるとみられます。「非常勤」といえば聞こえがよいかもしれませんが、実質アルバイトであり、フリーターです。

では「常勤(専任)」なら天国なのか?というと決してそうではなく、所詮、もっぱらアジア人を対象としたマイナーな言語の語学講師なので給料は頭打ち、しかも、今後は国家資格(公認日本語教師)の規則にあれやこれやがんじがらめとなり、求められるものだけは多くなって、リターンはさらに少なくなっていきます。

ブランクが生じると就職に不利

前述の通りの求人数激減で、すでに日本語教師になっている人数だけで、数字上の需要は満たしている状態です。また、今後大きく日本語教師としての働き方自体が変わっていく可能性があります。

日本語教師に求められる素養も変わってくる可能性があります(例えば、資格を持っていても、パソコンやオンラインのネットワークに強くなければ採用されない等)。現行の文化庁届け出受理の日本語教師養成講座のほとんどは旧態依然で、こうしたオンラインでの授業ができる日本語教師の養成にはあまり対応できていません。

そのため、今、新たに資格を取ったとしても、すぐに就職できるとは限らず、資格取得後、ブランクが生じると、就職に不利になります。

学んだことを忘れてしまうので、面接の模擬授業で失敗したり、就職したとしても「しんどい」ことになり、すぐ離職してしまうことにつながりかねません。

採用側も、資格取得からブランクがある未経験者はあまり採用したがりません(よほどの応募者不足のブラックな日本語学校などは除く)。

さらに長期的な視点で見ると

コロナに関係なく、日本語教師の需要というのは、今がピークだと言われています。

現在は、日本政府が外国人に対してビザを緩和したため、訪日外国人が増えただけであって、日本そのものの人気が自然発生的に上がったわけではありません。

2000年~2020年の20年間がそうであったように、向こう10年~20年で、アジアの国々の隆盛に従って、相対的に「日本や日系企業で働くことの価値」はさらに失われていきます。それに伴って、日本語の需要、つまり日本語教師の需要も落ちていくと思われます。

例えば、日常生活においても、昔は家電大国だった日本ですが、すでに日本製の家電を探すのも難しくなってきています。日本のメーカーであっても、海外の工場で作られているため、日本における産業の空洞化は顕著です。日系企業も海外の企業に買収される事例が相次いでいます。

前述の「ビザの緩和」も、少子高齢化および「日本で売るものがなくなってきた」ので、「他に売れるものは?」ということで、「観光資源」と「労働市場」を「販売」するためです。少子高齢化で内需だけでは国が成立しづらくなってきており、さらに産業の空洞化で売るものがなくなったため、ビザを緩和して外国人のインバウンドに期待しようという施策ですが、裏を返せば、日本の危機的な状況が見えてきます。

そして不足するすべてを外国人で補おうというのも無理があります。彼らとて同じ人間ですので、いつまでも日本人が敬遠する3K職に甘んじてくれるわけではありません。

いずれにしてもこれからはA.I.の活用や経営の効率化が進み、「人が少なくてもまわる社会」へ徐々にシフトチェンジしていきますし、そうならなければやっていけません。つまり、人はそれほど必要なくなる、ということです。

これから日本語教師になったとしても、また、公認日本語教師が制度化されても、日本語教師は7割以上が非常勤であることは変わりませんし、そもそも主な勤務先の日本語学校は多くが「中小零細企業」です。→参考日本語教師は常勤と非常勤どちらが多いですか?

むしろコロナを経験して、日本語教育機関の経営者は、改めて常勤(専任)の日本語教師を多く抱えることのリスクを感じたことでしょう。今後はますます非常勤多用での経営にシフトしていくはずです。

以上をふまえ、日本語教師になることは慎重に、検討には検討を重ねたほうがよいでしょう。

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