インハウス日本語教師

質問
Q. 会社員ですが、ここ数年、外国人社員の増加で、社内で日本語を教える機会も増え、日本語を教える楽しさを覚えました。現在の給料には満足しているのですが、日本語教師という仕事にも興味があります。会社を辞めて、資格を取って、ゼロから日本語教師として第二の人生を歩むのもありかな、と考えているのですが、迷っています。何かアドバイスありましたら、よろしくお願いします。

回答
A. そのまま今の会社にお勤めされながら、リスキリングとして日本語教授法を学んだり、日本語教師の資格(検定合格や養成講座受講)を取るなどして、インハウス日本語教師として働く、という可能性も探ってみてはいかがでしょうか。

日本語教師を本職(日本語学校勤務の日本語教師など)にすると、コロナ禍の例のみならず、迫りつつある台湾をめぐるチャイナリスクなどで、一瞬で職を失ってしまう可能性があります。

インハウス日本語教師とは

インハウスとは「社内」「企業内」といった意味があります。例えば、独立した士業ではなく、会社などに雇用され、組織内で働く弁護士や税理士をインハウス弁護士、インハウス税理士などと呼ぶことがあります。

それと同じように、会社勤めをしながら、社内(組織内)や関係先の外国人従業員などに、専門性を持って日本語を教える「インハウス日本語教師(企業内日本語教師)」として働く、という選択肢もご検討されるとよいでしょう。

メルカリの例
例えば、フリマアプリの「メルカリ」を運営する株式会社メルカリでは、インドなどからIT技術者を大量に採用し、社内で日本語レッスン「メルクラス」を開き、社内の業務だけでなく日常生活でも必要な日本語を教えていたりします。
→参考:インド難関大から大量採用のメルカリ「言葉の壁」乗り越えるルール
https://www.asahi.com/articles/ASR1Z5666QDDUPQJ006.html

インハウスのメリット

会社を辞めて、ゼロから日本語教師をするよりも、インハウスで働くことにはメリットがあります。

メリット1:収入の安定性

インハウスで働くことの一番のメリットと言えるのが、収入(給料)の安定性です。弁護士や税理士と違って、日本語教師は、ほぼ100%外国人(それもほとんどがアジア)依存の職業であるため、普通に日本語学校などで働く場合、待遇も悪く(給料が低く)不安定で、離職率も高いことでも有名です。

日本語教師を本職とした場合、主な勤務先は日本語学校となり、以下のような特徴があります。

  • 日本語学校はどこも「中小零細企業」である
  • 日本語は世界的にはマイナーな言語でありアジアでしか需要がない
  • 時間を切り売りする労働モデルであり、体を壊せば終わり
  • 「語学講師」であり、差別化やキャリア構築も難しい
  • 入管法下、就労ビザ取得目的の日本語学校(仮面学生)というブラック的要素
  • 新型コロナウィルスの経験から今後も「非常勤」(バイト)が主流
  • チャイナリスクで日本語学校の多くが倒産(日本語教師失業)の可能性
    日本国内の日本語学校の多くが中国人留学生に依存。中国が台湾周辺で引き起こす紛争・戦争で中国人の日本渡航禁止、中国国内での日本語教育禁止、それに伴い他国の留学希望者も紛争地域である日本への留学・渡航を控える。国内の日本語学校は壊滅状態・・・等々の事態がいつ起きてもおかしくない状態です。

2020年の新型コロナウィルス感染症のようなことが起こると、一気に職を失います。2012年の中国のように、他国の政治情勢が変動しても大きな影響を受けます。日本国内で数年に一度は起きる大震災などの自然災害の影響も、外国人は過剰に反応するので無視できません。

こうした職を失うような大きな事態が10年に1,2回は生じるのが日本語教師の業界です。

日本語教師専業の場合、こうした事態に対して「ゼロか100か」になってしまい、ゼロになっていざ転職しようにもつぶしが効かないというディメリットがあります。

一般企業では「教員経験者は使えない」という認識があるからです。

数年、教師として教壇に立っていると、己の威厳保持のために「上から目線での物言いや知ったかぶりが身についてしまう」「他人の間違いや粗探しにばかりに奔走する」「利益計算(コスト意識)に疎い」「自分の主義主張・理想ばかりを押し付けてしまう」傾向があるため、「使えない人材」ということで教員経験者の採用には消極的です。

インハウスで働く場合、「日本語を教える」部分以外の会社員としての給与も確保できるため、「日本語教師一本」に絞るより、少なくとも給与面でのリスクを下げることができます。

メリット2:学習者のモチベーションが違う

インハウスで会社がらみでの日本語学習者は、実際にビジネスでそれなりのレベルの日本語を使わなければならない(習得しなければならない)状況にある人が多く、それなりの人材が、それなりの高いモチベーションを持っているので、比較的教えるのが楽しい環境にある(おいしいとこ取り)と言えます。

一方、一般の日本語学校の場合、残念ながら、学習者のモチベーションはピンキリで、日本には就労目的で来て、日本語学校での授業中は寝ている・・・という問題点がよく報道されている通りです。
就労できるビザを得るために、形だけ日本語学校に籍を置き、それほど高い日本語レベルを求められない単純労働職(場合によっては違法就労)に勤しむ人が少なくなく、そうした職場環境の悪さも、日本語教師の離職率を高める原因になっています。

日本語学校の専任の日本語教師ともなると、「日本語を教える」という部分以外にも、例えば、事件を起こした生徒の身元引受人として警察署まで引き取りに行ったり・・・など、この業界のブラックな雑務面も担わざるをえなくなります。日本語教師の離職率が高いのは、そういう一面も多分にあるためです。

メリット3:会社にとってもwin-win

グローバル化と人手不足が顕著な現在、日本の一般的な会社であっても、外国人と関わらざるをえない状況であり、社内に日本語を教えられる人材が存在していることは、勤めている会社にとっても重宝する存在といえます。

外資系企業に限らず、例えばファミレスやコンビニ・チェーンでも外国人の雇用は不可避であり、社内で日本語をきちんと教えられるスキルを持つ人間が求められています。

そうした会社では、日本語の研修を日本語教育機関に外注する、という方法もありますが、外注は費用が嵩む上に効果は未知数です。
一方、社内事情が分かっている内部の人間に日本語教師がいれば、話は早いですし、現場をよく知っている人間が教えたほうが説得力もあり、効果的です。

コスト面でも外注するより、社内の人間に「日本語を教える特別手当て」などとして支給したほうがコストも抑えることができます。一方、社員側はその分、給与の増額が期待できます。

教えるための教材費や講座の受講費用なども、会社勤務であれば経費で落としやすいでしょう。

「社内で日本語を教えること」をスキルとして明確化することで、会社にとっても、社員にとっても、win-win の関係を構築できる可能性があります。

メリット4:働きながら資格を取りやすい

日本語教師の資質の証明としては、(1)日本語教育能力検定試験合格や(2)420時間の養成講座修了、(3)大学で日本語教育を主/副専攻などが、いわゆる「資格」として見られる場合が多いですが、社内で教える場合は、資格は自由です。

法務省告示機関(日本の日本語学校など)で教えるわけではないので、その規定に準ずる必要はなく、例えば日本語教師養成講座も、必ずしも「文化庁届け出受理の講座でなければならない」や「登録日本語教員(国家資格)でなければならない」という縛りはありません。四大卒でなければ教えてはいけない、という決まりもありません。

インハウスの場合、比較的自由な資格(資質の証明)で自由に働くことができますので、それだけハードルも低く、働きながらでも十分「資格」は取ることができます。「資格」取得のために会社や所属する組織を辞める必要はありません。

働きながら、英語で日本語を教える間接法も学べる講座

そのため、以下のように、現在の会社に勤めながら、こちらの通信の日本語教師養成講座で教え方を勉強される方もたくさんいらっしゃいます。

20代

社内の研修講師として
日本で計6年、マレーシアで1年、社内の研修講師として携わり現在の仕事で日本語を教える機会があります。今まで教えてきた内容と日本語を教える事に大きな差を感じ、さらに教授方法や日本語に関して理解を深めるために受講を希望します。(福岡県ご在住の29歳男性)

30代

技能実習生が職場に配属されたことがきっかけ
介護の職場にて、技能実習生が配属されたことをきっかけに日本語教育に興味を持ちました。独学で日本語教育能力検定試験に合格したものの、ただ暗記し詰め込むだけになってしまった部分が多く、きちんと理解をしてアウトプットの機会ももちたいと思い、今回受講を考えています。介護や福祉の日本語を教えられるような人になりたいです。(埼玉県ご在住の30歳女性)

流暢な外国人の同僚も実は孤立している
職場で流暢に日本語を話す外国人スタッフに日本語を教えて欲しいと請われました。その時に初めて、日本語のことを気軽に聞ける人がいない、日本語教師に聞いても納得出来る教え方は極わずか等の外国人の悩みを知り、なんとか出来ないかと考えた事が受講動機です。(大阪府ご在住の33歳女性)
→この受講動機の全文はこちらオンラインでの日本語の教え方通信講座にてご覧いただけます。

会社の留学生に教えている
会社の留学生に日本語を教えている時に自分に向いているのではないかと考えました。通信制の大学で少しだけ言語学を受講していたことも影響していると思います。世界で仕事ができる可能性を秘めていると思います。よろしくお願い致します。(東京都ご在住38歳男性)

40代

ベトナムの日系企業でのインハウス日本語教師として
社内にてベトナム人スタッフに日本語を教えるため。また、キャリアプランのため。(ベトナム・ホーチミンご在住の41歳女性)

職場で技能実習生と接して
技能実習生や在日外国人の社員に接するようになり、日本語教育に興味を持ちました。特に両親ともが外国人で、日本で生まれ育った場合、日本の教育を受けてない場合がある事を知り、簡単な日常会話しかできず、文字も苦手という状況の人も多く存在する事を知り、身近な人にだけでも日本語教育の役に立てたらと思いました。(愛知県ご在住の41歳女性)

客船でのおもてなし
大型客船の乗組員として働いており、1つのパフォーマンスとして外国人のお客様に日本語を教える日本語講座を船内で開催したりするため、本格的に日本語教師としての勉強をしたかった。(長崎県ご在住の42歳女性)

内部の自分が日常的に教えたほうが
現在、外国人社員を管理する仕事をしています。外部から日本語教師を招いて授業をしてもらっているのですが、週に1度の授業では今一つ効果がありません。私が日本語教師の勉強をし日常的に指導できればもう少し日本語力UPを見込めるのでは?と思い、通信で受けられる日本語教員養成課程の講座の受講を検討しています。

日本語教育の専門知識
フィリピンのコンサルティング会社にて日本語をITエンジニアに教える仕事をしています。私個人は、大学の専門が言語学、また海外にて英語教授法のTESOLを取得しているのですが、やはり日本語教育専門の知識、資格を持っているほうが良いのではないかと思い御社の通信コースの受講を検討しております。(マニラご在住の43歳男性)

海外出張で日本の文化を日本語で発信したい
1年前より台湾在住をし、今夏にアメリカで海外拠点の設立を準備しています。貿易関連の仕事をするなか世界中への出張があり、そこで出会う方々に日本の文化を伝えようと感じるようになりました。アジア圏では中国の勢いを目の当たりにするなか、日本語学習を途中でやめている外国の方が多い気がし、自身が各国出張、在住時に少しでも日本の文化を言語を通して伝えたいと思い、受講を考えました。(福岡県ご在住の47歳男性)

50代

関連会社の外国人スタッフに日本語を教えよ、との指令
勤めている会社(東京)で、「オンラインで関連会社のスタッフに日本語を教えよ」というオーダーがあります。ひとまずは本を見てのスタート(独学)になるかと思いますが、自信がないまま進めていくと、いつか辞めちゃうかなあ・・・と思います。こちらの日本語教師養成講座は価格がお安いので、自費にはなりますが、420時間、効率よく勉強できたらと思います。よろしくお願い申し上げます。(神奈川県ご在住の51歳女性)

業務上、外国人との交流が多いので
業務の関係上、外国人の方との交流が多く、そのため日本語を教えるノウハウを学んでみたいと思っています。(中国・広東省ご在住の47歳男性、電子部品の製造・電子製品の購買業)

医療現場にて
日本の国際化で外国人労働者が増え、日本語教育の重要性が高まっておりますので、指導できる力を身に着けたいと考えております。(千葉県ご在住の医療事務の女性55歳)

米国企業にて
現在、米国の日系企業にて通訳・翻訳業務に携わっております。社内での日本語学習熱が高まっており、アメリカ人にときどき日本語を教えています。しかし、系統だった教育方針がなく自己流で教えております。御社の日本語教師養成420時間総合講座では英語での教育方法(間接法)を教えていただけるとのことで、すべて通信講座を希望です。(アメリカ・アラバマ州ご在住の57歳女性)

外資系企業にて
外資系企業で勤務しており、外国人従業員に日本語を我流で教えています。体系立てられた教え方を身に着けたく、また、英語で日本語を教える教授方法を取得できる本コースを選びました。日本語教師の資格も取りたいと思っています。(57歳女性)

60代

日本の大手電機メーカーにて
現在は、日本の電機メーカーに勤務しており、ロンドンに駐在しています。本年末に63歳になります。今からですと会社の業務の片手間での勉強とはなります。が、会社員としての仕事を辞めてから勉強して・・・では、戦力になるのも遅くなるので、漠然と(日本語教師の勉強を)始めたいとの思いです。
需要としては、最近、大手企業の幹部に外国人が登用されるケースがあり、このニーズが増えるのであれば、その類の人とのコミュニケーションの経験が役に立たないか?との淡い期待もあります。(イギリスご在住の62歳男性)

日本語学校に勤めるだけが日本語教師ではありません。日本語教師の働き方は本来、自由で多様性に富んでいるものですので、ご自分が今いる環境をうまく活用しながら、少しずつ領域を広げていくようなイメージで臨まれるとよいでしょう。