日本語教師の需要の変化

日本語教師の需要がある国、つまり日本語学習者が多い国は、近年、大きく変わってきています。10年前は中国と韓国の2ヶ国が鉄板(中韓2強)でした。しかし、中韓での国内情勢の変化や、ASEANなど新興国の隆盛に伴う日本企業の他国移転等を受けて、日本語学習者数の変化=日本語教師の需要がある国(顧客層)も変化していっています。

 【2017年現在のまとめ・概要】

ASEAN・・・今後の日本語教師の主な活躍の場(顧客層)。インドネシア,カンボジア,シンガポール,タイ,フィリピン,ブルネイ,ベトナム,マレーシア,ミャンマー,ラオスで日本語学習者及び日本への留学生が急増中。ASEANで人口5億人を超える大きな市場。特にVIP3ヶ国(Vietnam, Indonesia, Philippines)との関係は経済連携協定(EPA)などにより、今後大きな伸び白が期待でき、ベトナムには多くの日系企業が進出中で、中国を超える勢いで求人数が増加しています。

  • インド・・・2024年に人口16億で中国を抜く巨大市場、’14年モディ首相が世界に先駆け来日、日本語教育環境も強化。日本との良好な関係国で今後、要注目。
  • 中国・・・日本語学習者は横ばい または微減。
  • 韓国・・・前回調査から33%以上の激減。世界で一番日本語学習者が激減中の国と言えます。

こうした変化はこちらの日本語教師の求人情報にも如実に現れています。

 学習者数ランキング

■ 2015年 ※2017年現在の最新の調査結果が2015年のものになります。

日本語学習者が多い国(地域) 日本語を学びに来日学習者数と国籍(地域)
1位:中国(953,283人)
2位:インドネシア(745,125人)
3位:韓国(556,237人)▼33.8%減
4位:オーストラリア(357,348人)↑
5位:台湾(220,045人)↓微減
6位:タイ(173,817人)↑1.3倍増
7位:アメリカ(170,998人)↓
8位:ベトナム(64,863人)↑1.39倍増
9位:フィリピン(50,038人)↑
10位:マレーシア(33,224人)↓
※国際交流基金「2015年-海外の日本語教育の現状」より
1位:中国(63,520人)-微減・順位不変
2位:ベトナム(26,409人)↑3倍増
3位:ネパール(9,681人)↑3倍増
4位:韓国(9,597人)
5位:フィリピン(5,685人)↓
6位:台湾(5,839人)-微増・順位不変
7位:アメリカ(5,157人)-微増・順位不変
8位:インドネシア(3,832人)↑微増
9位:タイ(4,241人)↓不変・順位下落
10位:ブラジル(4,615人)↓微減・順位下落
※文化庁「H27(2015)年 国内の日本語教育の概要」より

【2012年から2015年にかけての変化】
「日本語学習者が多い国(地域)」では、上位1~5位の順位自体は変動ありませんが、その内訳を見ると、韓国でのさらなる激減ぶり(33.8%減)が世界でも際立っています。この原因は、対日感情の悪化や、初等・中等教育で英語教育に力を注ぎ、それ以外の第二外国語を選択科目から外したことなどが影響していると見られます。
上位3ヶ国は頭打ちないし減少傾向であり、やはり今後の需要はASEAN各国頼みとなりそうです。

英語圏ではオーストラリアとイギリスが、若干、増加していますが、これは初等教育において、外国語教育のカリキュラムの改定による学習者増とみられ、残念ながら、日本語教師の就職先が直接、広がることにはつながらないでしょう。(例えば、小学校で教えるには現地教員と同じく現地の教職員免許を取らなければならない、など条件が厳しく、こうした現場では日本語教師アシスタントなどのボランティアとして活動するぐらいしか機会がないことがほとんどだからです。)

「来日学習者数と国籍(地域)」では、ベトナムとネパールからの増加が際立っています。

■ 2012年

日本語学習者が多い国(地域) 日本語を学びに来日学習者数と国籍(地域)
1位:中国(1,046,490人)↑
2位:インドネシア(872,411人)↑
3位:韓国(840,187人)
4位:オーストラリア(296,672人)↑
5位:台湾(233,417人)
6位:アメリカ(155,939人)↑
7位:タイ(129,616人)↑
8位:ベトナム(46,762人)↑
9位:マレーシア(33,077人)↑
10位:フィリピン(32,418人)↑
※国際交流基金「2012年-海外の日本語教育の現状」より
1位:中国(64,172人)
2位:韓国(10,573人)
3位:ベトナム(8,154人)
4位:フィリピン(5,811人)↑
5位:ブラジル(5,690人)↓
6位:台湾(4,829人)↓
7位:アメリカ(4,595人)↓
8位:タイ(4,286人)↑
9位:インドネシア(3,278人)↑
10位:ネパール(3,044人)↑
※文化庁「H24年(2012年)国内の日本語教育の概要」より

【2012年から2015年にかけての変化】
2009年から2012年にかけての変化として「全体的な日本語学習者数の増加」が挙げられます。特に、前述のようにASEAN各国(インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピン等)での日本語学習者数増加が顕著で、全体のボトムアップに貢献しています。
反面、特に韓国での激減ぶりが目立っており、前回比12.8%以上の激減。今後も韓国での減少は続くものと推測されます。

また、特筆すべきは、2011年の3.11東日本大震災(地震)の影響。日本留学者の帰国や、日本への留学取り止めなど、日本語学校の経営をはじめ、日本語教育も大きな影響を受けました。外国人に依存する日本語教育ビジネスは、水物で砂上の楼閣的なリスクがあることも、多くの日本語教育従事者が思い知らされたのではないでしょうか。

明るい兆しとしては、経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシアやフィリピンなどで、看護師・介護福祉士の日本受入が実施されていることからも日本語への関心が高まっていることです。EPAでの看護士や介護福祉士の運営状況はまだまだ諸問題を抱えていますが、国際交流基金などが来日前のインドネシア人に日本語を教えるための日本語講師などを派遣しており、今後もインドネシア、フィリピンでの日本語の需要増加が見込まれます。

■ 2009年

日本語学習者が多い国(地域) 日本語を学びに来日学習者数と国籍(地域)
1位:韓国(964,014人)
2位:中国(827,171人)
3位:インドネシア(716,353人)
4位:オーストラリア(275,710人)
5位:台湾(247,641人)
6位:アメリカ(141,244人)
7位:タイ(78,802人)
8位:ベトナム(44,272人)
9位:香港(28,224人)
10位:カナダ(27,488人)
※国際交流基金「2009年-海外の日本語教育の現状」より
1位:中国(83,934人)
2位:韓国(17,094人)
3位:ベトナム(8,123人)
4位:ブラジル(6,457人)
5位:アメリカ(5,579人)
6位:台湾(5,020人)
7位:フィリピン(4,921人)
8位:タイ(3,240人)
9位:インドネシア(3,165人)
10位:ペルー(2,907人)
※文化庁「H22年(2010年)国内の日本語教育の概要」より

これまで2010年頃までの一般的な日本語教師の海外の勤務先としての主要国および日本に日本語を学びにやってくる学習者の国籍(地域)は中国と韓国でしたが、経済及び国際情勢に相まって、今後、変動していくことが予想されます。

アジア市場開拓日本語の需要は経済情勢に比例する(日系企業の進出/日系企業の工場で働く→日本語を学ぶことは生計につながる→日本語教師の需要発生・増加・・・という図式が成り立っている)ため、オリンピック景気(気運)で盛り上がった2020年以降は、日本国の経済力の低下に伴い、日本語教育の需要(=日本語教師の需要)は全体数としては徐々に衰退しながら、主にインドネシア、タイ、ベトナムなどを中心とした東南アジアが日本語教育のメインの対象となっていくことでしょう。

ただ、こうした新興国も、自分の国がある程度発展してくると、日本への出稼ぎ(留学)も減ってくるという将来的なリスクは存在します。誰しもが、本音では母国で働き、母国で生活するのが一番と感じる人がほとんどだからです。

【欧米】

欧米圏については、今後もあまり日本語の需要増加は期待できません。日本語教育が盛んと言われていたニュージーランドでも、経済関係から今後は中国語教育に力を入れると首相が宣言しており、実際、日本語クラスを廃止する学校なども出てきています。→参考:[ ニュージーランドで日本語教師になるには ] ニュージーランドはオーストラリアの縮図のようなもので、NZと類似な動きはオーストラリア他欧米圏全般で起きています。
また欧州各国含め、日本のポップカルチャー起因の日本語ブームも脆弱なものですので、今後も欧米圏での日本語教師需要の増加はあまり期待できません。

【国内】

日本国内では、2020年の東京オリンピックへの気運や、少子高齢化による外国人労働者獲得の必要性などから、2017年現在は、日本語学校の乱立傾向で、あいかわらず日本語教師は人手不足な状況ではありますが、待遇自体には改善は見られません。
また、法務省及び文化庁が新基準にて、日本語教師の資格の門戸を狭めてしまったので、今後も日本語教師は「成り手が少ない」わりには「待遇も良くない」という厳しい状況が続くことが予想されます。
特に、東京オリンピックブームが去った後の2020年以降が危惧されます。

【まとめ】

日本語の人気のピークは日本経済が世界を圧巻していた1980年代バブル~1990年代~2005年頃迄です。
・1980年代~バブル経済で日本が世界を圧巻、日本語を学ぶことがメリットに。
・1990年代~そのため、各国で日本語教育が普及。
・2000年代~上記の残像で「持った」10年。日本語学習者は隣国の中韓2ヶ国に依存。
・2010年代~日本語学習者は中韓2ヶ国からASEAN新興国に推移中。
・2020年代~東京五輪バブル後、日本語需要の実力が問われる。~2050年頃、日本の人口1億人割れ。
これから日本語教師を目指される方も含め、これまでよりも一層、東南アジアを視野に入れた日本語教師活動をされることを推奨いたします。

 関連Q&A

Q1.豪・NZ・米国では簡単になれるのでは?

Q. オーストラリアやニュージーランド、アメリカは日本語学習者が多い/日本語教育が盛んとよく聞きます。ということは日本語教師に簡単になれるのではないですか?

A. いいえ、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカなどの欧米圏で日本語教師になること、そして日本語教師としてやっていくことは非常に困難です。

まず、これらの国で「日本語教育が盛ん」といっても、その日本語学習者の内訳(実状)がアジア各国と異なるということを押さえておかなければなりません。

【能動的・積極的学習者のアジア】

アジア各国では、日本語を学ぶことが将来ないし現在の仕事に有利、という生計に直結するというモチベーションがあるため、「積極的日本語学習者」がわざわざお金を払ってまで民間の日本語学校などで日本語を習っている学習者がいます。そのため、公立の学校機関のみならず、民間の語学学校でも日本語教師の求人があるわけです。

【受動的・消極的学習者の欧米】

それに対し、欧米圏の中でも日本語学習が盛んと言われているオーストラリアやニュージーランドなどの日本語学習者は、小学校・中学校・高校などで外国語の選択科目として日本語を選択している子供が単に多い、つまり「何となく(趣味的に)日本語を学んでいる人が多い」というだけです。必ずしも生活がかかっているわけではないので、そのモチベーションは脆弱です。そして日本語では試験で高得点が取れないため、学年が上がるにつれ、日本語学習から離脱していきます。例えば低学年では100人いた日本語学習者も、卒業する頃には5人くらいしかいない、というのが実状です。→参考:[ オーストラリアで日本語教師になるには ]

またこれらの国々では日本語学習者の学習の場は上記のように小・中・高校ですから、そこで日本語を教えるには、その国の大学などで教職課程を履修して小・中・高校の教員免許を取らなければならない、場合によっては他の科目も教えなければならないため、すでに現地にいる日本語教員数も数が足りているため、実質的に、日本語教師単品でその国で就職する、というのはほぼ無理なのです。

日本語教育の学習者が多く、ランキングに入っている国だからといって、そのランキング順に安易に日本語教師になりやすい国であるというわけではありません。その数字の内訳と実状はまったく異なりますので、注意が必要です。

Q2.今後の需要や将来性がある国は?

Q. 日本語教師の就職先として、韓国や中国が今後微妙なのはわかりました。それでは今後、日本語教師の勤務先として、需要があり将来性がある国はどこでしょうか?

A. 端的にいえば、ASEAN(東南アジア諸国連合)の国々です。
また、EPA(経済連携協定)に基づいた看護師・介護福祉士の日本受入制度が実施されている国は、日本や日本語への関心が高まる傾向があり(つまり日本語教師の需要が高まるということです)、かつEPAというのは日本が「それなりの国」とお墨付きを与えていることでもあるので、インドネシア、ベトナム、フィリピンを中心とした東南アジアが、これまで以上に日本語教師の需要と将来性が見込める国として挙げられます。

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