ボランティアは経験としてカウントできるのか

Q. 日本語教師養成講座の受講を検討している者です。これまで、オーストラリアのオーストラリアの現地小学校で日本語クラスのアシスタントのボランティアを2ヶ月ほど、そして現在はカナダの日本語学校でボランティアをしています。外国の人々や文化に触れることが多い環境で生活してきたため、将来的に語学に関わる仕事をしたいと思っており、今回の日本語教師は自分に対してのステップアップとしても考えています。今後、仮に日本語教師の資格を取るとして、資格取得前の今までの経験というのは、「日本語教師としての活動」としてカウントする(経験としてみなされる)ことは可能なのでしょうか。

A. これまでの日本語教師ボランティアの活動を経験としてカウントするかどうか、はご本人様次第、そして「日本語教師の経験としてみなされるか」は、雇用先次第です。

日本語教師の業界は、資格等については、こちらの日本語教員資格ガイドライン等にて参考指針が示されているだけで、日本語教師には国家資格など絶対的基準がない以上、「何をその経験としてみるか否か」も個人次第、そして多種多様な雇用先の基準次第によって様々です。

例えば、法務省告示の日本語教育機関で日本語教師として働く場合は、評価される経験は「法務省告示の日本語教育機関にて常勤(専任)として3年以上の経験(非常勤は不可)」「ボランティアは不可」としている求人情報が多いように見受けられます。

法務省告示の日本語教育機関以外においては、まさに雇用先の判断次第であり、ボランティアであっても経験として認められるケースもあります。

しかし、働き先がいずれにしても、確実に言えることは、一般的には、例えば以下の同レベルの2者、

A.一人は日本語教師有資格者でまったくの未経験者
B.一人は日本語教師有資格者でボランティアだが経験ある者

が採用の際、並列した場合は、間違いなく後者Bのほうが優先採用される、ということです。
本来、資格や経験はそのように(消去法的に)見るものです。

もちろん、ボランティア経験を履歴書に書いてはいけない、としている雇用先もありませんし、どのように評価されるかは、ご自身がどのように経験し、何を得たか、の書き方次第のところもあります。

 ボランティア経験をすることの就職以外でのメリット

ボランティアであっても、「日本語を教える経験」「国際交流/異文化交流する経験」は、就職以外の場面でもメリットがあります。

例えば、日本語教師養成講座を受講したり、日本語教育能力検定を受験する場合も、ボランティアでさえ経験がない人は、机上の空論的にしか理解できないため、テキストやテストに書かれている文章がなかなか理解できない傾向があります。

片やボランティアでも経験があったほうが、経験則として書かれていることが頭にすっと入ってきますので、養成講座にしろ、日本語教師検定の学習にしろ、非常に理解度及び学習効率が良い傾向があります。

また、「日本語を教える」という経験をしたことがないが日本語教師に興味がある人は、ボランティアで疑似体験をすることで、自身の日本語教師の適性を事前に確認することもできます。

そして何よりもボランティアであれ、そうした経験をお持ちの方は、異文化交流の中でもまれ、精神的にもたくましくなり、経験がない人よりも威風堂々として少々のことではめげない傾向がありますので、ボランティア経験を積むことはメリットこそあれ、デメリットはほとんどありません。

 日本語教師の経験として認められやすいボランティアとは

日本語教師の就職先(日本語学校などの雇用先)の中には、「ボランティアは経験として認めない」としている所も中にはあります。これはなぜかというと、一般的に日本国内の日本語教室などのボランティアは、

1.週1日~週2,3回程度以内のコマ数であり、経験の絶対時間数が足りない
2.体系だてられたカリキュラム下での日本語教育指導がおこなえていない

といった点を「ボランティアを日本語教師の経験として認めない」理由として挙げている雇用先もあります。

しかし、逆にいえば、上記の1,2の逆の要件を満たしていれば、ボランティアであっても経験とみなされる、ということでもあります。

例えば、欧米圏の中でも日本語教育が比較的盛んなオーストラリアなどの日本語教師ボランティアなどでは、学校にもよりますが、1日4コマ、週20コマの日本語の授業をおこなっている現地の学校もあり、ともすれば、日本の日本語学校のプロの専任日本語教師よりもこなす授業量とコマ数が多い場合も少なくありません。

カリキュラムも学期毎に体系だてて、年間通して教えていきますので、こうしたオーストラリアの日本語教師ボランティアの経験などは、きちんとアピールしていけば、就職の際の「日本語教師の経験」として認められることが
多いです。

実際のオーストラリアの日本語教師ボランティアの担当時間割 例1
L.O.T.E. TIME TABLE (JAPANESE AND CLASSROOM ASSISTANCE)

オーストラリア日本語教師の授業時間割

上図[例1]は、日本語クラス(Japanese Lesson)以外の授業でも、Classroom Assistanceとして日本文化を紹介したり、Artの授業でも日本語の授業が取り入れられたりしています。週の日本語を教える機会はゆうに20コマを超えています。LOTEとは“Languages Other Than English”(英語以外の外国語教育)のこと。

下図[例2]は他校の例ですが、こちらでもJapanese Enrichment(日本語教育の深化)として、Enrichment(日本語レッスン)だけでも週に14コマ、実際はそれに加えて他の授業のアシスタント・ボランティアとしても日本文化紹介などをおこないますので、これまた日本国内のフルタイムの日本語教師よりも多いかもしれない、週に20コマ程度の非常に多忙な授業数を日本語教師ボランティアは経験することになります。

実際の海外の日本語教師ボランティアの担当時間割 例2
Japanese Enrichment Timetable

海外の日本語教師の担当授業時間割

以上のように、一言に「日本語教師ボランティア」といっても、その経験は千差万別であり、「ボランティアは経験として認められない」とは必ずしも言えない例もある、ということです。

日本語教師の求人に掲載されている応募資格や採用条件は、必ずしも「絶対的」なものではありません。中には「40歳以下の女性が望ましい」としている求人でも、熱意とタイミングが合えば「45歳の男性」が就職できたこともありますし、日本語教師ボランティアであっても、在籍した学校からきちんと証明書(スクールレター)や校長や担当教師からの推薦状などを、担当してきたコマ数や時間数などとそえて就職応募すれば、認められやすくなります。

ですので、要は最初から自分で決め付けて「ボランティアは経験としてダメだ」と諦めてしまうのではなく、無駄な経験などこの世に無いわけですから、後は柔軟な視点を持って、雇用先へのアプローチの仕方を工夫するなどの点に労力を割いたほうがよいでしょう。

「できる人」というのは、「この資格はダメ」「この経験はダメ」などの資格その他「表面上の体裁」を気にする以前に、履歴書や職歴書の端々から熱意と能力、創意工夫などのオーラがあふれ出ているものです。

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