質問
Q. 将来、日本語教師になることが夢です。ただ1点、気がかりのは、この職業は多忙なのに給料が低い、正社員として手取り月収20万円も難しい、とよく耳にしますが、実際のところはどうなのでしょうか。また、なぜ給与が低いのでしょうか。今後、給与アップや待遇改善が見込める職業でしょうか?

回答
A. 給料については、「どこで」働くか、にもよりますが、国内・海外含め、総じて日本語教師の給料は安い、と言えます。

日本では一般的に、年収300万円以下はワーキングプアー(働く貧困層)と呼ばれていますが、日本語教師においては、国内で働く場合は、正社員(専任・常勤)であっても年収300万円ぐらいになれば良いほうで、通常は300万円を下回るケース(年収200万~250万円程度以下)がほとんどです。

専任から主任等に昇格しても、収入は頭打ちの状態です。

非常勤に関しては、生徒である留学生のほうがアルバイトで稼いでいる(教員より生徒のほうが収入が多い)というのはよくある話です。

海外で働く場合は、その国相応の給与水準になりますので、さらに日本円換算の収入は少なくなります。特にアジア圏では月5万円~10万円相当以下の収入になることはザラです。

「やりがい」だけではなく、「お金」も求めている人には向いていない職と言えます。

【目次】

  1. なぜ日本語教師の給料は安いのか?
  2. 7割が「非常勤」である日本語教師の業界
  3. 将来性:今後、日本語教師の給料は上がるか、下がるか?

なぜ日本語教師の給料は安いのか?

理由1:顧客層(アジア依存の脆弱性)

なぜこの仕事の所得が低いか、簡単に言えば、貧しい人* を教えることが多いからです。日本語教師は、経済格差の上に成り立つ貧困ビジネスと言えるかもしれません。

* 貧しい人・・・というと語弊があるかもしれませんが、ここでいうのは、例えば日本の円と比べて為替格差や物価格差がある国の人々、発展途上国の国の人々などを指します。経済発展著しい中国や韓国であっても、日本円換算の一般的な平均月収等は日本よりも低い場合が多く、その他アジア圏の国々も、日本円換算の月収が月5万円以下の国などたくさんあります。

世の中では、一般的に、物やサービスの値段(価値)は、需要と供給の関係で決まっていきます。需要が多くて供給が少なければ、物(やサービス)の値段は上がっていきますし、需要が少なければいくら供給しても値段は付きません。

給料決定の関係グラフ

「日本語を教える」というサービス(転じて教員の給料)も同じで、日本語を習いたいという需要との関係性によって決まっていきます。

では、その値段を決める「日本語の需要」はどこにあるのか、というと、こちらの日本語学習者のランキングにもあるように、8-9割近くがアジアに偏っています。物価などが日本と同等かそれ以上の欧米圏及び欧米人にはほとんど需要はありません。

日本語教師は「アジア人のお世話係」と言っても過言ではなく、アジア諸国との経済格差がなければ成立しにくい職業とも言えます。

日本語というものが、かなり特定地域のマイナーな言語であることを強く認識しておく必要があります。英語と同等にとらえるのは禁物です。

 生活を少しでも豊かにしたいから外国語である日本語を学ぶ

そもそも外国語を学ぶ理由の1つに、外国語を学ぶことで仕事につなげ、「少しでも生活を豊かにしたい」「現状から脱したい」といった背景があります。つまり、現状「貧しい」から新境地を求めて学ぶのであり、現在「すでにリッチな方」というのは、事足りているので外国語をあまり学ぼうとしません(学んでも趣味程度)。

アジアの人たちが、GDP世界2位-3位の経済大国の日本語を学ぶことで、「少しでも生活を豊かにしたい」からわざわざ日本語という外国語を学ぼうとしているのです。元来、「外国語を学ぶ」というのはそうした性質も持つものであり、(富を)持たぬ人が主な需要源であることを認識しておく必要があります。

 無いものは無い

よって、平均月収が日本円換算で5万円とか10万円といった国の人々が日本語教師の給料の元となる授業料を払うわけですから、いくら絞り出そうとしても「無いものは無い」ので、高額な授業料は設定しても誰も払えません。いくら力強く搾っても乾いたタオルから水滴は出てこないのと同じです。
それゆえ、需要と供給の関係から、日本語教師の給料も低値へおさまっていくことになります。

アジア各地に赴任した日本語教師の給与は、現地の人々より良いことが多いですが、それでも日本円にして月10万円相当にいけば良いほうです。

日本国内で教える場合も、そうした国々から多額の借金をして来日するために、下記理由2の「形だけの日本語教師」になり、給与は低値におさまることになります。

よく英語教師などのイメージと同等に日本語教師をとらえている人がいますが、お金もそこそこあり、物価もそこそこ高い国の日本人が、世界的に需要がある英語(英会話)を学ぶのとは事情が異なります。

 学生数が安定しない

アジア諸国依存ゆえに、学生数が安定しない、というのも教員の給料の安さの一因になっています。日本語学校への入学者数も、良い時は良いが、悪い時は悪い、とバラつきがあり、年によって、また1,4,7,10月の各期毎の入学者数の動向に応じて、非常勤講師の増減で調整するか、無給の待機状態にて調整させられる日本語教師もいます。

日本語教師のシェア

例えば新型コロナウィルスのような事態が発生すると、日本語教師は一気にリストラされます。外国人完全依存ビジネスの脆弱性が日本語教師という職には存在します。

この学生数の不安定さというリスクは、後述の非常勤が業界の7割を占める要因の1つにもなっています。

理由2:「日本語」と「教師」は形だけ

これは特に日本国内の日本語学校に言えることですが、日本語学校は現地の斡旋業者に生徒の集客を依存しています(集客に学校や教師の質はあまり関係ありません)。そのため、例えば仮に生徒が来日前に払った授業料が70万円だったとしたら、そのうち10万~15万円以上を斡旋業者にキックバックするようになり、残ったお金で学校の家賃や運営費、講師の給料などをやりくりしなければなりません。

また、アジア各国の人々にとって、この授業料は高額なため、来日前に年収を超える多額の借金をし、それを取り戻すために日本国内で稼ぐこと(就労)が主目的となりがちです(そしてそれほど高度な日本語を必要としない職はたくさんあります)。

日本語より日本円
つまり、(学校にもよりますが)「日本語を学ぶ」より「就労で稼ぐ」が主目的の留学生が多くなり、「日本語」は見せかけの飾り・・・日本語学校は日本語を教えるより、就労ビザ発給で儲けを上げている実状があり、「日本語」と「教師」は形だけが実態である学校も少なくありません。

実際、自社での労働力不足解消のために、日本語学校も経営を始めた会社や団体も年々、増加しています。そのようなたいした日本語は必要としない単純労働への就労(斡旋)目的の学校では、日本語教師の設置は形だけですので、形だけの人件費にはお金を割かない(割けない)ので、教員の給与も形式的で最低限なものになります。授業中、寝ている/やる気がない生徒が多い日本語学校は、こうした背景もあります。

理由3:マイナーでニッチな言語である日本語の需要の低さ

需要を構成する2点のうち、ユーザーが貧しいというのが1点、そしてもう1つの要素が、世界的な言語シェアで見た場合の、日本語のマイナーさも、講師の給料の低さの原因です。

言語の世界シェア

現在の世界人口を約76億人、日本の人口を約1億とすると76分の1。つまり世界の76人に1人(世界人口の約1.3%)が日本語話者ということになります。日本語が海外で公用語となっている国はありませんので、つまり日本語のニーズは、日本または日本人に関する事象だけになり、この1億という数字は、そのまま世界言語の中の日本語のシェア(ニーズ)と捕らえてもほぼ間違いないでしょう。

一方、中国の人口を約14億人とすると76分の14、つまり世界の7人に1人以上(世界人口の約18.4%)が中国語を話します。世界各地にチャイナタウンがあるように、実際は中国語話者の人口は14億人より多いと考えられます。

そして英語を公用語や準公用語としている国は約21億人で、76分の21、つまり世界の7人に2人以上(世界人口の約27.6%、3人に1人程度)が英語を話すことになり、それだけ英語のニーズは世界的に高いことがわかります。

ですので、英語は高いお金を払ってでも皆さん、学びたがるのは日本でも英会話学校が乱立していることからも見て取れますし、中国語についても、元々の世界人口に占める中国人の多さに加え、最近の中国の国の隆盛に比例して、中国語のニーズも高まってきています。そのため、これまで第二外国語として、日本語が人気があったオーストラリア(豪州白書参照)やニュージーランドでも中国語重視の教育へと転換していっているわけです。

理由4:日本語教師は日本経済のコバンザメ

日本語の需要、つまり職業としての日本語教師というのは、日本経済の規模に比例しますので、日本経済の腹にくっついたコバンザメみたいなものといえます。

日本経済と日本語教師の関係図

日本の経済規模が大きくなれば、日本語ができればビジネスで有利になるので、外国人も日本語を学ぼうと群がってきます。その「おこぼれ」を日本語教師はおすそ分けでいただくコバンザメ的な立ち居地にいます。
日本経済が衰退すると、日本語を学ぶメリットもなくなるので、外国人の日本語学習者も減少します。結果として日本語教師も食えなくなっていきます。

日本語の需要は、1980年代のバブル時代が1つのピークでした。1990年頃は、日本語学校もあちこちに乱立したものでした。その後、20年間、なんとかバブルの後光でのらりくらりとやってきていましたが、外国人集客による経営も厳しくなり、日本人からお金を集めるために日本語教師養成講座を併設する学校も増えました。

最近はビザ緩和のため、来日する外国人が一時的に増えていますが、「外国人は水物」ですので、5年、10年以上のスパンで見た場合、安定的に推移するかは予断を許さない状態です。

日本については、少子高齢化で、今後人口が1億人を切ります。また、経済についても、高度経済成長期は終わりました。アジアの会社による日本企業買収も進んでおり、英語や中国語が社内言語である日本企業が増えてきています。
インフラ整備もおおよそ完了してますので、後はインフラの維持とメンテナンスが主になり、現状維持ないし徐々に衰退せざるをえない状況です。日本全体が北欧のワークシェアリングのような形で、日本人全員が総フリーター状態のような社会にならざるをないし、それを目指していかなければならない状況でもあります。
今後、日本語のニーズというのは、(まったくなくなることはないとしても)劇的に増加することは見込めませんので、日本語教師という職業に過剰な夢を抱くのは禁物です。

7割が「非常勤」である日本語教師の業界

Q. 日本語教師は生活が厳しいとはよく言われますが、求人はいつもあります。それも結構あるように見受けられます。実際のところはどうなのでしょうか?

A. 一見、日本語教師の求人数というのは多く見えます。ネット上でも日々新規の求人募集情報が登場しており、募集していない日はないと言っても過言ではないのは事実です。

このような状況から、「日本語教師には簡単になれる。」との誤解に至り、この業界についての全体像が捉えられていない人が意外に多いのですが、それらの求人をよく見ていただけるとわかるのですが、国内・海外ともに7割が非常勤という勤務体系で占められています。

非常勤の割合

非常勤というのは、コマ単位あたりに給与を支払う、つまりパートタイム・アルバイトと同等ということです。7割がフリーターみたいなもの、ということです。→参考:[ 常勤と非常勤どちらが多いですか? ]

常勤(専任)講師:非常勤講師=3:7という比率は、この30年間変わっていません。日本語人気がピークだった1980年代でさえ、七割が非常勤だったわけですから、今後も日本語教師としての勤務体系のほとんどが「非常勤」であることは変わらないでしょう。
また、「専任(常勤)講師」(正社員)であっても、1年または2年契約更新であることが多く、結局、一般の会社でいうところの契約社員や派遣社員とあまり立場は変わらないのが実状です。

語学教師はコマ単位いくらの職業

日本語に限らず、民間の韓国語講師や英語教師、中国語講師・・・XX語講師などいずれも、そのほとんどが元々が「コマ数あたり時給いくら」の世界です。その授業1コマにかける準備時間まで賃金を払うようになると、それでは準備に何時間もかかってしまう「できない教師」のほうが給料が高くなってしまいます。ですので、語学講師は、「担当したコマ時間あたりなんぼ」の仕組みは今後も変わることはありません。

そこに日本語教師が薄給のもう1つの理由があります。例えば、一般的なスーパーのアルバイトだと、

  • 時給800円×1日6時間勤務×週5日×月4週=月給96000円

という計算が成り立ちますが、日本語教師の場合、1日に担当可なコマ数は通常2コマ(多くても4コマ程)なので、

  • 時給1500円×1日2コマ×週3×月4週=月給36000円
  • 時給1500円×1日2コマ×週5×月4週=月給60000円
  • 時給2000円×1日2コマ×週5×月4週=月給80000円

と、普通にコンビニなどでアルバイトしたほうが、給料はよいケースがほとんどです。日本語教師の場合、1コマの時給は一般的に1500円、よくても2000円程度の場合がほとんどであり、しかも1日6-8コマも担当することは不可能であり、通常担当できる1日のコマ数は2、多くて4コマ程度に留まります。また1コマの授業を準備するのに、教案から配布する教材やプリント作成などの時間が別途かかりますので、特に新人や経験が浅い人、要領が悪い講師は、1日2コマ担当でもパンクしてしまうことでしょう。
語学教師というのは、所詮、「コマ単位いくら」の世界であることを重々肝に銘じておく必要があります。

手段であり目的ではない語学というものの講師

以上のように、そもそも語学教師というのは「ほとんどが非常勤」「コマ数あたりなんぼ」の世界であり、日本語教師に限らず、韓国語講師や英語講師なども同じです。

これは語学というものの性質が、そもそも「手段」に過ぎず、「目的」ではないので仕方がないことかもしれません。つまり、語学ができること自体でお金が稼げるようになることは稀で、語学を使って「何かができるスキルを持っていること(=目的)」のほうが重要だからです。

手段と目的ゴール

例えば、英語を使って法務や商取引ができる、不動産取引ができる、インターネットビジネスを展開できる、などのそれぞれ後者にあたるスキルのことです。商取引・不動産取引、インターネットなどの専門的知識を持っていることの方があくまで重要であり、「語学ができる」というのはあくまで後付けの補足的手段にすぎないわけです。
それゆえ、そもそも手段に過ぎない語学というものから高額なお金を徴収すること自体に元々限界があるわけです。

将来性:今後、日本語教師の給料は上がるか、下がるか?

登録日本語教員(国家資格)で、今後、日本語教師の給料は上がるのか、下がるのか?というと、残念ながら日本語教師(日本語)の需要は今がピークと見られます。

日本語学習者や訪日外国人の増加は、単純に「ビザが緩和」されたからであり、日本語自体の人気や需要が自然に高まったわけではないからです。

そのため、今ここ数年の盛り上がりがピークで、今後は向こう10年くらいかけて、徐々に下火になっていくものと思われます。もちろん、日本語教師の職は急には無くなることはありませんが、必ずしも楽観はできないのも事実です。

リスク1:人口減と経済縮小

前述のような諸事情が背景にあることから、日本語教師の将来性及び今後、「給料や待遇は上がるか、下がるか?」というと、全般的には横バイであり、何十年かの長期的スパンで見れば、日本の人口が1億人を切る2050年に向かって、徐々に低下(衰退)していくものと思われます。
これまでの日本語需要の9割を占め「お得意様」であった中国や韓国ですが、特に韓国においては、昨今の緊張関係を見てもわかるように、日本への反日感情は根深く、日本語学習者は激減中です。自国の経済が強大化するにつれて、日本経済への実利も失われ、つまり日本語を学ぶ実利も徐々に無くなっていきますので、今後は日本の経済力が相対的にいかに持続・向上できるかにかかってくることになります。

日本語教員の所得源の変遷

2013年頃まで訪日外国人と言えば、韓国、中国、台湾、香港からが約65%と大半を占め、偏りすぎた点から、日本国政府は、2013年6月の「観光白書」(観光立国推進閣僚会議)以降、今後は東南アジア・・・特にタイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシアなどを中心とした国々からの集客に力を入れることを明言しました。

具体的には、ビザの緩和、例えば、タイとマレーシアの観光客への査証を免除や、フィリピンとベトナムへの数次ビザ(有効期間内なら何度でも入国可能)を認めるなどの施策が実行され、特にマレーシア、インドネシアはイスラム圏ですので、そうしたイスラム教の人々を迎え入れられるようなインフラ整備(戒律に則した食事提供や祈るためのマットなど)も、国内の民間の宿泊施設など中心に進められてきました。

しかしながら注意しておきたいのは、訪日外国人の増加の原因は、単純にビザを緩和したからであり、世界的に日本語の人気や需要が高まったわけではないという点です。

前述の通り「日本語教師は日本経済のコバンザメ」ですので、今後は、これらASEANを中心とした東南アジアの地域でいかに日本への関心が高まり、日本との経済関係がより強固になり、日本語の需要がいかに高まるか、に日本語教師の待遇改善(給料アップ含)もかかっている、と言えます。

但し、日本に来ている外国人留学生は、お金(稼ぐ)目的がほとんどです。日本語習得というより、留学ビザにて資格外活動許可を得れば、週28時間就労(アルバイト)することができるため、日本語学校に籍を置く人が大多数を占めているのが実態であり、こうした東南アジアの国々も豊かになれば、わざわざ日本に来て3K職に就いて稼ぐ必要もなくなり、日本語学習者の減少(日本語教師の需要の低下)は、長期的には避けられないでしょう。日本人にとって3Kな職は、他の国の人にとっても3Kであることに変わりはなく、本当はそうした職には就きたくないのが本音だからです。

この現象はすでに中国や韓国で起きていて、中国国内の人件費が上がるとともに、わざわざ日本に来るメリットも無くなり、その国の隆盛とともに、日本への留学生・手稼ぎ労働者減少の傾向が見受けられています。
そして韓国においても、今、世界で一番、日本語学習者が激減していっている国となっています。
2010年頃までは日本語学習者と言えば、中国と韓国が圧倒的多数を占めていましたが、わずか10年程度でこの変貌ぶりです。その国の隆盛とともに、日本語学習者は減っていく傾向が明確であり、同じ現象は中韓以外の国でも今後、起こりうるでしょう。
例えば、今はベトナムでの求人(需要)が非常に多いですが、あと数年である程度ベトナムが発展すれば、ベトナムでの需要は減っていくと考えられます。

リスク2:需要を妨げる自然災害のリスク

その他、日本語教師の給料に直結する需要の低下を招く要因として、日本は自然災害大国である、という点も看過できません。
特に日本では数年おきに各地で大地震が発生し、その度に、日本に来ている留学生らは一斉帰国したり、日本への渡航を取りやめたりし、日本語学校縮小・閉鎖→教員リストラ→その回復に数年かかる・・・を繰り返しています。

南海トラフ地震も控えています。

日本人の想像以上に、外国人の地震への不安というのは大きく、この不可避な地震というリスクが、日本語の需要拡大(教員の収入増)の妨げの1つとして存在しています。

外国人という「水物」に依存している職業であることも忘れてはなりません。

リスク3:A.I. 台頭でやがて消えゆく職業?

「日本は少子高齢化で労働力不足だから外国人で補う」とはそうは簡単には行かぬものなのです。人手不足は日本だけでなく、中国などでも起こりつつあり、国際的な人材の争奪戦も、今後ますます厳しくなっていきます。
マンパワーには必ず限界があり、人ほど不確かなものもありませんから、将来的には「人が少なくて済む社会」の方向へ、日本もシフトせざるをえないでしょう。実際、人手不足で24時間営業を取りやめるファミレスやサービスを縮小化する宅配業者などもすでに出てきてます。

基本的に、「目的ではなく手段に過ぎないもの」は、機械(AI)に取って代わると言われています。手段とは例えば、移動手段に過ぎない車の運転手などを筆頭に、単純労働度合が強いものから順に、「消えゆく職業」となっていきます。

現在のところ「やがて消えゆく職業」の中に、教師という職業を入れていないことが多いですが、遅かれ早かれの時間の問題であり、すべてのものが機械(AI)に取って代わられなくはないのが現実です。
医者や弁護士さえもAIの活用が普及すれば、数はそれほど必要なくなると言われています。

語学というものも、結局、(それ自体が目的であることは少なく)コミュニケーションのための一手段に過ぎないものですから、やがて高性能な日本語学習ソフトやAI、同時通訳機などが登場すれば、語学学習者などは激減する、つまり日本語教師の需要も低下することが安易に想像できます。
実際、すでにAIの数学教師などは登場しています。単純に科目を教えるだけなら、人間の教師よりAIのほうが適している時代になってきています。

その前段階として、例えば、この10年で随分、オンラインでの日本語教師という形態が増えました。YouTubeやSNSなどで独学で学んだ流暢な日本語話者さえいます。
日本語を学ぶには必ずしもわざわざ日本にやってきて学ぶ必要もなくなってきたのです。

ITの得意技は「距離と時間の短縮」です。その究極には、わざわざ日本語教師を介さなくても、機械(AI)を通して語学を学べるようになったり、または外国語を学ばなくても外国人とコミュニケーションができるような世界が、今もうすぐそこまでやってきています。

この変化に対応でき、うまくITやAIを使いこなし、付加価値を与えられる者は生き残り(所得を維持でき)、そうでない者は淘汰される、ということになるのでしょう。

リスク4:ビザ発給基準の変化

2019年4月には、日本政府は改正出入国管理法を施行し、外国人労働者政策を大きく方針転換しました。これにより、これまで原則認められていなかった非熟練労働者(単純労働者)にも新たな在留資格「特定技能」を創設し、一定の技能と日本語能力のある外国人(特定技能労働者)には日本での就労を認めることになりました。

つまり、日本語についても「実力主義」になったので、渡航前から一定レベルの日本語ができる人は、わざわざ高い授業料を払って日本語学校に通ってビザ(しかも労働時間制限がある)を担保してもらわなくてもよくなりました。よって、日本国内における(国内日本語教師の主たる働き先である)日本語学校の存在意義も薄れてくる可能性も出てきました。

まとめ

新型コロナウィルス感染症の経験を経て、専任(常勤)の日本語教師を多く抱え込むことのリスクを痛感した日本語学校経営者も多くいたことでしょう。登録日本語教員(国家資格)が始まったとしても、今後も非常勤がますます主流となる(7-8割以上を占める)ことは間違いないでしょう。「非常勤」というと聞こえはよいですが、実質時間給労働のアルバイトであり、フリーターです。

  • 日本語は世界的にはマイナーな言語
  • アジアでしか需要がない
  • 日本語学校はどこも「中小零細企業」である
  • 時間を切り売りする労働モデル(自分の労働価値は他人による査定依存)である
  • 一応「専門職」ではあるものの、差別化が難しい
  • 日本の経済規模縮小・人口減・他国の隆盛
  • 入管法下、就労ビザのための日本語学校というブラック的要素とビザの変化
  • 新型コロナウィルスの経験から今後も非常勤が主流

以上の背景が続くことから、日本語教師というのは一般的に給料は低く、今後も低いことが見込まれますが、やりがいはとてもある職業であるのも事実です。何も知らないでただ夢を描くのではなく、現実を直視し体感して、それでもなおかつ意欲を持ち続けられる人が日本語教師の道に歩むとよいでしょう。

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