Q. 日本で日本語教師をやっている者です。日本語教師としてのキャリアにマンネリを感じ、もっと日本語教師としての幅を広げるために、今後はアジア圏の人たちだけでなく、欧米圏の人たちにも日本語を教えたいと思い、こちらの間接法が学べる日本語教師養成講座に興味を持ちました。
幅広い教え方をマスターすることにデメリットは何もないと思いますが、実際のところ、間接法をマスターしたことによって具体的にどのような展望が広がりますでしょうか。ずっと国内の狭い環境で直接法で教えてきたのでご教示いただけますとありがたいです。


A. 間接法(indirect method)をマスターすることによって、日本語教師だけでなく、生徒(日本語学習者)の双方にメリットがあります。

1.生徒にとっての間接法のメリット

まず、日本語を学ぶ生徒にとっての間接法で教わることのメリットですが、一般的に、外国語は学習者がその言語の初級者であればあるほど、その学習者の母語を使って(媒介として)、外国語を教えたほうが親切であり、効果的であると言われています。

例えばアメリカ人に日本語を教える場合、日本語をまったく知らないのでしたら、いきなり日本語で日本語を教え始めても相手方もチンプンカンプンになることは安易に想像できるでしょう。
こんな時に、間接法、つまり英語で日本語を教える手段を用いて、例えば、
“In Japanese, ‘this is’ is KORE WA ~DESU. ”
などと教えてあげたほうが、初級者にとってはわかりやすく、日本語理解の突破口が開きやすくなります。

また、教える日本語の先生が、「自分とコミュニケーションが取れる言語を話せる」「自分の母語を話してくれる」ということは生徒を安心させ、信頼も生みやすいメリットがあります。

生徒側にとってのデメリットを強いてあげるなら、いつまでも間接法で教え続けると、ある時期から成長が止まってしまう場合がある、ということです。ですので、日本語がある程度上達したら、その時は間接法から直接法に切り替えて、できるだけ多くの日本語に触れさせ、日本語で日本語を考えさせるように、教師も教え方を生徒合わせてスウィッチしていくとよいでしょう。

2.日本語教師にとっての間接法のメリット

日本語教師にとっての間接法で教えることができることのメリットは、上記の効率的な教え方ができるという点に加え、

日本語教師の就職の幅を広げる(就職成功率を上げる)というメリットがあります。

例えば、間接法で教えることができる/英語で日本語を教えることができる日本語教師は、通常の求人に加え、以下のような求人にも応募することができるようになります。

【日本国内において】

【海外において】

以上の一例のように、日本語教師が英語ができること/間接法で教えられることで享受できるメリットはたくさんあります。

では、なぜ日本やアジアでは、日本語教師は直接法だけでよいという慣習になっていたか、というと、

日本においては、中国、韓国、東南アジア、南米、北米、欧州など中国語、韓国語、英語、ポルトガル語、スペイン語、フランス語、ドイツ語など母語が多種多様な留学生らが1つのクラスに集まって授業をおこなうために、生徒らにとって共通の外国語である日本語で教えざるをえないという理由があるためです。
しかし、本来は先述のように、学習者が日本語初級者であるほど、それぞれの学習者の母語を使って日本語を教えた方が効果的ですので、グループレッスンではなく、マンツーマンレッスンの時などは、間接法を使って教えてあげるなどの工夫を凝らしたほうが生徒の日本語吸収率もアップします。

また、アジアにおいてもなぜ日本語教師は直接法でとりあえずOKなのかというと、

これは単に、例えば中国で働く場合、中国語が流暢に話せ、中国語を使った間接法で教えられる日本人の日本語の先生があまりいない、韓国で働く場合も、韓国語が流暢な日本語教師があまりいないため、消去法で、「直接法でよい」ということに落ち着いているというだけの話です。
本来は中国語や韓国語など、それぞれの国の母語ができる日本語教師を学校側も採用したいのですが、その条件で求人をかけても応募者がいないため、仕方なく日本語教師の外国語力には目を瞑り、直接法で日本語のクラスを運営している、ということになっているだけなのが実状です。

ですので、実際は中国語や韓国語ができる日本人の日本語教師は非常に優遇され、求人応募の競合他者を抑え就職も決まりやすい傾向があります。

以上のように、間接法も一旦マスターすれば、後は間接法で教えるか/直接法で教えるかは日本語教師のサジ加減1つの部分であり、間接法ができるようなればメリットこそあれ、デメリットは何もありません
ぜひ日本語教師は、間接法も体得し、広く世界に対応できる教師にステップアップしていただきたいものです。

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