日本語教師になる方法は「どこで働くか」によっても異なってきます。

【目次】

日本語教師とは

日本語教師とは、日本語を母語としない人々に日本語を教えている人の総称で、一般的に「日本語教員」「日本語講師」「日本語指導士」「日本語指導員」「日本語教育支援員」「日本語インストラクター」「JT(Japanese Teacher)」「JLT(Japanese Language Teacher)」などと呼称されることもあります。
日本国内外で多くの日本人および日本人以外の教師が活動しています。

但し、日本語教師の需要は、全世界に均等にあるわけではなく、アジア(アジア人)絡みが大半を占めますので、日本語教師はよほどアジアの人々のお世話が好きでないと務まらない職とも言えます。

日本語教師になるには

日本語教師の資格は、基本的には自由です。

「水戸黄門の印籠」のような、「これ1つあれば全世界どこでも通じる」といった絶対的な資格は存在していません。登録日本語教員(国家資格)も、それを取得したからといって、世界のどこでもその資格で日本語教師ができる、というわけではありません。

働く場所も、国・勤務先・勤務形態によって千差万別で、求められる資格(採用条件)も、「ほとんどない」ところから「様々な採用条件を課している」ところまで本当に様々です。

極端な話、「日本語教師」と自称し宣言してしまえば、1秒後には誰でも日本語教師。

個人のチューターレベルでも立派な日本語教師。生徒を集って日本語教室や塾を開いて教える場合も無資格でもOK。

海外でも「日本人だから」という理由だけで無資格で採用してもらえる場合もある。そんな職業です。

これらのことは、こちらの求人情報などの具体例をざっと見てみるとわかりやすいです。

但し、「日本語を教えるスキルがあることを証明する何か」がないと他人に対して説得力がありませんので、(英語力証明なら英検やTOEICがあるように)日本語教育力に関しては、民間の日本語教師養成講座などを履修して、その修了証明書を日本語教師のスキルとして提示することが多いです。

採用条件や求められる資格は、採用する側(雇用者)によっても採用条件や判断基準はまちまちで、「どこで」働くかによって異なってきます。

どこで働くか?で異なる条件や需要

日本語教師は「どこで」働くかによって、その需要や求められる資格など異なります。

教室での集い

<どこで働くか?>

大きく分けると上記のように分類でき、以下に順に説明していきます。

日本語教師の需要は日本及びアジア圏が8-9割を占めており、欧米圏などでは需要はほとんどありません。

日本国内や特にアジア圏の日本語教育の現場では、日本語を母語とし、日本文化を熟知したネイティブ教員の必要性が高く求められており、全体的には、常に求人情報が絶えない慢性的な人手不足な市場です。

一方、一部(欧米圏など)ではもともとの需要が少ない上に供給過多の飽和状態でもあります。

日本語教師の業界全体で、需要(非常勤などのアルバイト的・一時的なニーズ)と供給(正規常勤希望など)がなかなか合致しづらくなってきている市場であるのも事実です。いずれの職場も、給料・待遇面では、日本語が世界的にマイナーな言語である以上、実際にプロとして生計を立てていくことはたいへん難しいものがあります。

働く場所(国・地域・形態)によっても、需要や採用条件・待遇・就職状況が異なりますので、ここでは「どこで働くか」に分けて、日本語教師の現状を説明していきます。

日本国内で日本語教師になるには?

日本国内でなるには、インターネット経由で検索し、応募するのが一般的な就職方法です。
→参考:[日本国内の求人情報]それ以外にもたくさんの求人情報掲載サイトが存在します。
その他、ハローワーク(公共職業安定所)やクチコミ・人脈(コネ)で探す方法などが挙げられます。
→参考:[ハローワーク他求人サイト一覧] 就職(転職)情報誌に掲載されることもありますが、基本はインターネットでの検索と同じです。自分が通った日本語教師養成講座で就職先を紹介してくれるケースもありますが、一般にインターネット上に出回っている求人情報と同じものが多いです。

国内勤務日本国内での働き方は、

の2つに大別できます。

【A】「法務省告示の日本語教育機関」でなるには

「法務省告示の日本語教育機関」(以下「法務省告示機関」)とは、法務省が管轄する「法務省告示校」など、就学するのに法務省のビザ認可が必要な機関のことです。

日本国内の、いわゆる「日本語学校」(法務省告示校)と一般的に呼ばれているのが「法務省告示機関」に該当します。

この「法務省告示機関」で日本語を教える教員になるには、「登録日本語教員(国家資格)」になる必要があります。

2024年4月施行の「登録日本語教員(国家資格)」では、学歴は撤廃されたので、大卒(四大卒)ではない方・・・中卒、高卒、専門卒、短大卒でも、指定のルートをたどれば、「登録日本語教員(国家資格)」になることができます。
→詳細:登録日本語教員(日本語教師の国家資格?)になるには

日本語教育のシェアと国家資格の影響

尚、資格制度に関して、マスコミ含め、大きな誤解が拡散されていますが、「日本語教師」が国家資格になるわけではありません

正確に表現すると、日本語教師の中で、「一部の機関で日本語を教えたい人」が国家資格を有することが必要となる、というだけのことです。

「一部の機関」とは、前述の法務省告示機関のことで、「法務省告示機関」の、日本語教育機関全体に占める割合は、つまり登録日本語教員でなければならない割合は、日本語教育業界全体の20%程度と言われています。

【B】「法務省告示の日本語教育機関以外」でなるには

残りの約80%を占める【B】「法務省告示の日本語教育機関以外」とは、文字通り、「法務省告示機関」(上記一覧リストの学校など)以外のすべての形態を指します。
→参考:[法務省告示校以外の求人情報]

例えば、生徒受入れにビザ発給を必要としない(例えば各自でワーキングホリデービザを取得して日本に来ている外国人が通う)国内の語学学校、日本語教室、オンライン講師、JICA、会社勤務、インターナショナルスクール、派遣出向企業内出張レッスン、個人・フリーランス、自治体の日本語クラス、公立の小中学校での日本語指導など様々な形態があります。

また、近年、外国人労働者の増加、社内で日本語を教えるようになり、日本語教師になるという方も増えてきています。→参考:インハウス日本語教師という安定的な働き方

法務省告示校以外の日本語教育機関の一例:

海外も、ほとんどが「法務省告示機関以外」に該当します(技能実習生送り出し機関等は除く)。
法務省管轄ではないため、求められる資格も自由で、例えば「文化庁認定の420時間講座でなければならない」といった拘束もありません。

求められる資格の比較

法務省告示機関法務省告示機関以外
登録日本語教員の資格自由
(日本語教師養成講座修了等
採用先の判断次第)

国内の日本語教師の給料/待遇

日本国内で就職した場合の平均的な給料・待遇は、専任講師と非常勤講師(アルバイト・パートタイム含む)とで異なってきますが、おおよその目安は以下の通りです。もちろん勤務先や個々人の能力によって異なりますのであくまで目安としてのご参考にして下さい。

  • 専任給与:月給25万円程(週のクラス担当30時間程)、年収250~300万円前後
    • ボーナスは年平均3ヶ月程。ボーナス支給のない場合も多い。
  • 非常勤給与:月給10万円程(クラス担当週18時間程)、年収100万円前後
    • 参考:年収96万円:東京都内大手日本語学校1校のみ勤務(33歳女性非常勤)の例
    • 非常勤の場合、2,3校を掛け持ちで勤務しているケースが多い。
  • 主任教員:月給30万円~

日本では一般的に、年収300万円以下はワーキングプアー(働く貧困層)と呼ばれていますが、日本語教師においては、正社員(専任・常勤)であっても年収300万円ぐらいになれば良いほうで、通常は300万円を下回るケースがほとんどです。専任から主任等に昇格しても、収入は頭打ちの状態です。

注意点

時間外手当や残業手当は無し

上記の時間外にも、自宅などでの教案・問題作成や答案の採点などに時間を割かなければなりませんが、それらは時給や給与に換算されない場合がほとんどです。残業代は出ることのほうが珍しいです。

雇用契約中も無収入期間あり

学校の夏休みや冬休み期間中は授業がないので、その期間数ヶ月は収入も途絶えます。学校によっては春休みやゴールデンウィーク中も数週間休みで無収入期間となります。

無昇給/微昇給

年次昇給や定期昇給はない場合が多い。あっても微量な場合がほとんどです。

先立つ物が必要

日本語教師は、当面はワーキング・プーアです。新人かけ出しのビギナーは、基本的には最初から専任(フルタイム)教員職に就けることはまずありませんし、新人が最初から週5日フルタイムで授業を受け持つのはスキル的にかなり難があります。
また、良い条件のポジションほど飽和状態であるため、新人や未経験者はまず、非常勤(パート・アルバイト)でこの業界に入っていくしかないのが現状です。よって、この仕事でやっていくには5年(少なくとも3年)間ぐらいは年収100万円程度でも生活できるぐらいの貯蓄(貯金)か生活支援の後ろ盾があることが前もって必要です。通常、3-5年ほど下積みを積んでいれば、そのうち常勤・専任の職に就けるチャンスがまわってくる可能性は高くなります。

薄給のメリット

デメリットばかりに見える待遇面ですが、デメリットはメリットと表裏一体。例えば配偶者がいる方(主婦の方など)は、年収をコントロールすることで以下のようなメリットがあります。

  • 年収103万円以下
    103万円以下に抑えると、正社員、派遣社員、非常勤、パート・アルバイトなどの勤務形態に関係なく、配偶者の扶養家族の待遇のまま働ける、というメリットもあります。
    ・年収103万円以下だと所得税が免除される。
    ・配偶者(夫など)の所得税も減額される。
  • 年収130万円以下
    ・配偶者がおり扶養家族である場合は、自分で健康保険や国民年金の保険料を払う必要がない。
    ※年収130万円を超えると、健康保険や年金の保険料を日本語教師であるあなた自身で払わなくてはいけなくなる、ということ。これら社会保険料はおよそ年収の1割は引かれるようになりますので、薄給の非常勤教師にとっては非常に負担が大きいものになります。

収入面のまとめ

一概に年収を103万円とか130万円に抑えればよい、というものではなく、あくまで世帯全体での収入とのバランスで考える必要がありますし、自治体によっても適用される保険料などが異なりますが、一般的には年収130万円ラインが、損得のボーダーラインになることが多いようです。雇う学校側もなるべく教員の人件費を抑えなければならないニーズとも合致し、需要と供給の一致から、日本語教師は主婦に最適な資格・職業となっている一面もあり、非常勤としてのメリットをフル活用して働いている方も多くいらっしゃいます。→参考:[ 常勤と非常勤のメリット・デメリット ]

収入を増やすには

収入が不安定な日本語教師ですが、一般的に収入を少しでも安定させる方法として、以下のように努力されている方もいらっしゃいます。

  • 何校か学校を掛け持つ
  • 学内の営業職も兼務して営業手当等を得る
  • プライベートでも生徒を募る
  • オンライン講師なども兼務する→オンライン日本語教師になるには
  • 教員としての奮闘経験等をブログやホームページに綴り、アフィリエイト(広告)で副収入を得る

就職成功率・待遇改善につながるアピールポイント

上記の日本語教師養成講座修了などの基礎的な資格の他、以下のようなスキルがあれば採用側の学校から重宝され、採用の際にも優遇/採用後の別途特別手当て等の支給につながります。

(1)外国語ができる(かつ海外経験や海外の知識が豊富)
(2)日本語以外の科目も教えられる
(3)日本語を教えた経験
(4)パソコンスキル
(1)外国語ができる

上記(1)については、日本語教師の仕事は文法や文化を教えるだけではありません。学校はどこも経営に余裕がなく、留学生の生活指導や入学・転学・ビザ絡みの事務手伝い・保護者対応などオールラウンダーとして働ける人材が求められています。その際に必要になるのが外国語力です。英語・中国語・韓国語などの他、勤務する学校に占める割合が多い留学生の国の言語ができると優遇され、Facebook等SNSで保護者に生徒の母語で情報発信するなど積極的に学校運営に関与すれば、リストラされるリスク回避や、役職手当などの収入増加の可能性にもつながります。
→参考:日本語教師は英語力は必要ですか?

(2)日本語以外の科目も教えられる

上記(2)については、日本の語学学校に入学する留学生は、日本の大学や短大・専門学校などの入学を目的としている人も少なくありません。そのため、それら進路の入学試験科目に対応した、特に数学や理科系の科目も外国人にわかりやすいように外国語も織り交ぜながら教えられるスキルを持っている方はとても優遇されます。
また、海外の語学学校などでは、アジア人及びアジアの言語は一括りで見られてしまうことが多いので、中国語や韓国語も教えられる教師は優遇されます。「日本人なら当然 中国語や韓国語を話せるだろう」と誤解している人も意外と多いです。

(3)日本語を教えた経験

上記(3)については言うまでもありませんが、日本語を教えた経験があるほど採用は優遇されます。どこでどんな教材を使ってどのように教えていたか、を履歴書や職務経歴書などで具体的にアピールしましょう。
「個人的に教えただけ」とか、「ボランティアで教えただけ」という経験でも、無いよりはマシなので、どんな些細な経験でも、関連付けできる経験があれば、忘れずにアピールすることが大切です。

(4)パソコンスキル

パソコンスキルについては日本語教師に限ったことではありませんが、書類作成やデータを扱うことが多い職ですので、ワード、エクセル、パワーポイントなどの基本的なスキルは必須です。
求人応募の段階から、パソコンでのやりとり(書類の授受)になることがほとんどです。

また、オフラインでのパソコンスキルの他にも、例えば学校での活動状況をFacebook等でのSNSで、生徒の母国に住む保護者などに向けて発信するようなスキルや積極性が、日本語教師にも求められています。

  • 日本語教師になるには
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