Q. 中国での日本語教師就職を現在考えています。求人情報などをチェックしているのですが、求人数自体は多いのですが、中国勤務の場合、契約などでトラブルも多いと聞きます。中国ならではの注意点などありますでしょうか?


A. はい、日本語教師の求人は、3~4割は、中国(及び日本にやってきた中国の留学生など)に関するもので占められています。特に中国に関しては、日中間の領土問題で右往左往があったものの、それでも(人口が多く)元々の勤務先の絶対数が多いため、現在も日本語教師の主要な働き先の国となっており、比較的求人数は、他国に比べれば「ある」のが現状です。

また、日本と同じ漢字圏ということもあり、中国の学習者は(非漢字圏の学習者に比べ)日本語の吸収率も早いので比較的教えやすいという特徴もあります。そのため、中国は、初心者の日本語教師の働き先の国として、登竜門的な位置付けにあるとも言えます。

中国ならではの注意点

しかしながら、働き先があるほど、勤務先の環境もピンキリで、大中小様々なトラブルがあるのも事実です。以下に、中国で日本語教師勤務する場合の典型的なトラブル例を挙げておきますので、求人応募する際などの参考にしていただければ幸いです。

 例1:仲介斡旋料5万円払って現地に赴いたが学校がまだできていなかった

求人応募の流れそもそも日本語教師の有給の一般就職で、5万円等何かしらの金銭を支払う時点でおかしいです。その支払い名目が、「仲介料」「手数料」「登録料」如何を問わず。また、金額5万円、10万円如何問わず。

中国への日本語教師派遣を、中国人の斡旋業者が行い、日本の主要な日本語教師の求人サイトに求人広告を掲載し、募集をかけているケースは少なからずあります。もちろん、これらすべての業者が悪いというわけではありませんが、日本人が提供するサービスと異なり、提供するサービスや情報の質、信憑性が「ガサツ」なことが多いので、求人応募初期段階から注意が必要です。

中国・・・に限らずアジアを中心としてよくあることですが、「約30%のデキ」で「できた」とみなす国(及び国民性の人々)が多いのです。
英語で例えると、例えば、日本人はほぼ100%(せめて80-90%程度以上は)話せて、初めて「私は英語がしゃべれる」と公言しますが、中国ほかアジアの一部の人々は、英語が30%程度もろくに話せていないのに、自信を持って「私は英語ができる!」と宣言します。

それと同じで、製品の質が30%程度のロークオリティーなのに、「製品として完璧だ」と消費者に提供する性質を持つ国の人々は、世界には少なからずいらっしゃいます。

この中国の、「派遣業者に仲介料(登録料)5万円払って、現地まで行ったのに、まだ学校ができていなかった」というのもまさにそのケースで、まだ学校建設準備段階なのに、ほぼ要項が固まった段階で、「もう大丈夫」とみなし、見切り発車で日本語学校や大学などを運営しているところもあります。

【予防方法】:

斡旋業者、仲介業者に委託・外注しないことです。通常、中国の日本語教師の求人というのは、無料でネット上に公開されていますので、わざわざお金を払って、派遣されるものではありません。

あなたが日本で就職する際、業者にお金を払って依頼するでしょうか?
普通はしないでしょう。通常、自分で履歴書や職務経歴書などを書いて、直接自分で会社に提出しますよね。

それと同じで、特に中国の業者などに依頼してしまうと、例え日本語でやりとりができたとしても、あまり日本人が行かないような、人気のない場所、つまり悪環境の派遣先に飛ばされてしまう可能性がありますので、業者に自分の運命を外注しないことです。

また、派遣業者、仲介業者に依頼しても、その勤務先は、たいがい別途、求人広告で公知され、無料で応募できる勤務先がほとんどです。そして応募者がいない人気がない勤務先、つまり残りものの「訳あり物件」は、業者に委託して誰か派遣してもらうよう仲介を依頼するわけです。残りものには福はないことにご注意を。

そもそも就職というのは、ご自分が応募書類や面接などの過程で、ご自身も勤務先担当者などとの直接のコミュニケーションを通じて、自分に合った条件の職場かどうか見定めるところに就職活動の意義があるのです。その重要な部分を仲介業者に外注してしまうと、勤務先を見定める大切な機会を失ってしまいます。

雇用者と被雇用者が対等の立場にたって、お互いの条件を出し合って、お互いを心底確認するのが真の就職活動と言えるものです。就職サポートを期待している人、他人に頼りたい人は、日本語教師には向いていませんのでご注意ください。

 例2:往復航空券が支給されなかった

日本語教師の待遇で、航空券をめぐるトラブルも多発しています。

よくあるのが、求人応募の際には、(契約任期満了時)「往復航空券支給」もしくは「往復航空券代支給」と書いてあったのに、任期終了後、請求したら、学校から支給拒否された、といったケース。

日本語教師のトラブル事例通常、
1.ネットなどで求人を見て求人応募、

2.書類選考→面接→内定

3.雇用契約書締結

4.ビザ等取得→現地赴任

といった流れが一般的ですが、この「雇用契約書」というのに注意しなければなりません。

求人情報の時に掲載されていた内容と異なる場合があるから、です。例えば、見た求人では往復航空券支給などと書いてあっても、いざ契約書を見てみると、航空券とは書いていないケースがあるのです。

例えば、こんな文言が契約書に書かれていたとします。
交通:甲方将在乙方抵昆、最后離昆及平日办理公事時提供免費交通。
甲とは雇用者である学校側、乙とは被雇用者である日本語教師のことですが、簡単に約すと、
「交通:公的な行事及び赴任と(任期満了後の)離職時に限り、無料での移動手段の提供が乙に提供する。」
といった趣旨のことが書かれているのですが、これには実は、日本~中国間の航空券は含まれていない、あくまで費用支給ではなく、「無料での移動手段の提供」つまり学校最寄の空港から学校までの「学校側が用意したリムジンやバス、車等での送迎」までしか含まれていない(航空券は含まれていない)ので注意が必要です。

「最初の求人広告にそう書かれていた」とか、「他の学校は通常、往復航空券代も支給してくれていた」といった思い込みのまま、契約書もよく読まずにサインしてしまうと、航空券代は支給されない、という思わぬ落とし穴に落とされることがあります。

通常、求人広告を見て、契約交渉に入り、十分に交渉して双方納得したから、契約書締結に至った、というのが一般解釈ですので、最初がどうであれ、常に後の契約書のほうが有効ですので、後から知らなかった/勘違いしてた、と学校にクレームを言っても時すでに遅し、となります。

ましてや相手方は中国の学校ですので、それが民間の語学学校であれ、大学の外事処であれ、訴えようにも日本のようにはすんなりいきません。関係諸機関にこの問題について日本語教師1人が働きかけても、結局、航空券を自己負担したほうが費用的には安くなる場合が多いので、泣き寝入りするしかありません。(元々、契約書をよく解していなかった人が悪いのですから。)

【予防方法】:

上記のような文言を契約書でみたら、これは航空券を含むのか必ず確認し、口頭だけでなく、必ず文字で契約書に航空券の文字を記載させるように、契約締結前に学校側にオーダーしてください。また、それ以外にも、一言一句、契約書をしっかり読み、確認することです。これは日本語教師に限らず、中国でのビジネスでは常識です。日本でのそれ以上に、細心の注意を払っていかなければなりません。

中国の日本語教師に関しては、「直接法で教えるから中国語力は必要ない」とか、求人情報に関しても直接的には「中国語力」は求められていない場合が多いですが、実際はこのように身を守るためには中国語力が必要な場合が多いのが現実です。

 例3:ビザ・サポートが雑・ビザが申請できない・認可されない

パスポートとビザ認可ビザ絡みもよくあるトラブルですが、求人情報ではビザ申請のサポートやフォローがあるように記載されていたにも関わらず、いざ内定をもらってビザ申請をしようとすると、その書類案内が雑だったり、まったくビザについて無知な学校機関も、非常に多くあります。前任の日本人の先生とコンタクトが取れれば、教えてもらうことも何とかできますが、日本語教師を雇用する現地学校側が、日本人のビザについて無知なケースは非常にたくさんあります。

【予防方法】:

就職過程では、「内定もらった!」とウキウキで進むのではなく、学校からの案内ややりとりは、すべて一言一句疑うような、石橋を叩いて渡る気持ちで臨むことが非常に重要です。
中国に限らず、海外はいい加減な学校も本当にたくさんありますので、「その最悪さ」が赴任前に分かっただけでもこれ幸いと考え、やりとりの過程で少しでも変な学校や学校担当者と遭遇したら、そこへの就職はやめ、別の所へターゲットを早々に移しましょう。

仲介業者を介さず、学校と直接やりとりすることの利点が、ここにあります。

学校側を自分で直接審査することができるわけです。本来、就職活動というのは、あなたが審査されるだけでなく、あなたもその勤務先が就職するに値するか審査するものなのです。自分の人生なのですから、自分の感覚を信じましょう。

 例4:インターネットで公知の求人サイトだから信頼できるのか?

求人情報の保証と信憑性そもそも上記例1、2の間違いの始まりは、「ネットで見た情報、特に文字情報は信頼できる」といった潜在下の先入観にあります。人間なにかと文字など視覚で見たものは信用してしまう傾向はありますが、日本語教師に限らず、教師・教員は頭がお堅い人が多いことも手伝い、「日本語教師の求人サイトとして世間に知られているから」「何年も運営されているから信頼できる」といった勝手な固定観念で突き進んでしまい、トラブルに見舞われる方も少なくありません。

しかし、実際はどの求人サイトも、基本的には求人内容の精査はしておらず、基本的には寄せられた求人情報をそのまま掲載しているだけです。実際、以下のような注意書きが各日本語教師の求人サイトに見受けられます。

「求人サイトA 」

情報を利用する際のご注意:ここに記載されている内容は直接募集機関から寄せられた情報ですが、必要最小限の情報です。応募、契約の際には個々の責任において、詳しい情報を得てください。なお、記載内容は募集機関と確認作業をしておりますが、(該当求人サイトが)保証するものではありません。

「求人サイトB」

求人情報は、募集機関が情報を登録したものがそのまま自動的に掲載されています。
求人内容につきましては、直接募集機関にお問い合わせ下さい。

「求人サイトC」

海外で就業される方へ:雇用に関するトラブル報告が年々増加しております。雇用契約前に待遇や条件など雇用主と十分ご確認ください。
※当システムでは、募集先の団体または企業の正当性を完全に保障することはできません。
※ご自身の判断と責任においてご利用していただきます様お願いいたします。万一生じた一切の損害・トラブルその他一切の事柄についての責任は負いかねます。

つまり、どの求人サイトも、その求人の信憑性や求人を掲載した団体について、一切、保証はしていないわけです。極端な話、あなたが適当な学校名で架空な条件を作成して、掲載させてしまうこともできるのです。そもそもこれだけ世界各地に散在する団体を管理・チェックし、保証を求めること自体、不可能な話。世の中、無料で求人情報を得られる利便性の代償に、自己責任でその信憑性を確認していかなければならないリスクも負わなければいけないのは日本語教師の求人に限ったことではありません。もしその雇用側の身元の保証を求めるのならば、その代償に何十万円もの対価を支払わなければならないのが、世の中というものです。(上記の例の5万円程度の中途半端な斡旋手数料では収まりません。)

【予防方法】:

一切の他人任せの部分、他力本願な部分、甘えを自分の中から排除することです。例えば、「公知な求人サイトだから安心だろう」も、根拠のない他力本願な甘えです。どんな情報であれ、例えそれが国によって提供された情報であったとしても、最終的には自分自身で、自己責任の下、判断するしかないのです。ご自分で判断できない/自己責任を負えない場合は、その進路に進むべきではありません。

よくネット上の質問サイトなどに、「~が不安だが大丈夫でしょうか?」的な質問をされる日本語教師希望者が毎日のように見受けられますが、他人に質問しないとわからない/不安ならば、「今はその時ではない」のです。あなたが質問しないとわからない、他人に尋ねないと不安が解消されないような進路は、今は進む時でありません。

「できる人」というのは、自分ができることをコツコツと積み上げていきます。「できない人」は自分ができないこと、不安なこと、他人に聞かないとわからないことばかりに手を出して、挙句に人生の迷路に迷いこんでしまいます。
他人に質問しなくても「まったく疑問も不安もない」状態になった時が、その進路に進むべき時ですので、ネットに質問などを投げかける行為をされてしまった方は、その進路に対して今は不適性ですので、機が熟すまで待たれたほうがよいでしょう。

いずれにしても、ほとんどのトラブルが、知識の習得と注意力という自身の努力によって避けることができるので、海外、特に中国などで勤務される方は慎重に行動されるよう、ご注意ください。

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