最近は、日本国内の日本語学校や専門学校の日本語教師の求人の応募資格において、四大卒(学士)以上を必須としている求人が増加傾向にあります。

資格の重荷

検定合格者も四大卒である必要

これまでは、法務省告示の新基準においても、「日本語教育能力検定試験に合格さえしていれば学歴は問われない」という抜け道はありました。

そのため、大卒に満たない方、例えば高卒・短大卒・専門学校卒の方が日本語教師を志す場合、日本語教育能力検定試験の合格を目指す、というのが1つの鉄板ルートでした。

しかし、最近の実際の日本語教師の求人では、わざわざ

四大卒で日本語教育能力検定試験合格

とか、

4年制大学卒業以上で以下のいずれか1つ以上に該当している者
・大学または大学院で日本語教育主専攻/副専攻修了者
・日本語教育能力試験合格者
・学位を持ち、なおかつ文化庁が受理した420時間以上の日本語教師養成講座修了者

と、日本語教育能力検定試験合格者にも 四大卒以上であることを応募条件に課している求人が急激に増えています。

背景

1.国家資格化(登録日本語教員制度)

これは国家資格化(登録日本語教員制度)が数年以内に始まることを見越してのことかと思われます。

四大卒に満たない検定合格者を今採用してしまうと、登録日本語教員制度が始まれば、登録日本語教員の要件を満たさなくなる可能性があるため、すぐに辞めてもらわなければならなくなるのでは?と考える雇用者もいるためです(現状、制度の細部が不明瞭なことに原因があります)。

これまですでに法務省告示の日本語教育機関で一定年数以上、日本語教師をされている方は、経過措置(救済措置)期間は、国家資格化(登録日本語教員制度)が始まっても、そのままスライドでしばらく日本語教師を続けられますが、今から新たに日本語教師になる方に関しては、その「一定年数以上」等細部の条件に満たない可能性があるため、今から万全を期して、四大卒に満たない方の採用は見合わせておこう、という考えの求人者が多くなってきた模様です。

2.外国人の日本の大学進学希望者の増加、大学も生存をかけて必死

2つ目の背景にあるものは、日本の四年制大学へ進学を希望する外国人留学生(日本語学校の生徒など)の増加が挙げられます。

その一方で、日本の私立大学は、すでに定員割れを起こしており、統廃合・吸収合併その他、生き残りに必死な危機的な状況であり、外国人学生の獲得に躍起になっています。

そうした背景から、EJUの科目を教えられる日本語教師の需要が高まっています。

  • EJUとは・・・日本留学試験(Examination for Japanese University)のことで、外国人留学生として、日本の大学(学部)等に入学を希望する者を対象に、日本の大学等で必要とする日本語力及び基礎学力の評価を行うことを目的に実施する試験です。

EJUにおいて、日本の大学入試の科目を教えられる日本語教師が求められることが多くなっており、日本語教師自身が大卒でなければ教えられませんし、それ以前に大卒ではない人が教えても説得力がありません。
EJUでは、特に理系科目を教えられる日本語教師が不足しており、ニーズが高まっています。

また、外国人生徒が、日本の大学生活やその後の進路などを知りたがっているのに、教師自身が大学生活を経験していないことには、リアルな日本の大学生活を伝えることもできません。

3.学歴にうるさい外国人生徒も多い

それ以前に、韓国や中国など、厳しい学歴社会に生きてきた国の留学生らは、教師の学歴にも厳しい目を向ける傾向があります。

自分に日本語を教える教師が、どの大学を出ているのか?最低でも四年制大学を卒業していないと、不服な生徒も少なからずいます。

いずれにしても今後は、特に法務省告示機関に携わる教員で、四大卒に満たない方は肩身が狭くなることは間違いありません。

以上のような背景から、2020年以降に日本語教師になろうと考えている方で、四大卒以上の学歴に満たない方は、各種資格を取得する前に、まずは四年制大学卒業以上の学歴をクリアすることを目標に掲げた方がよいでしょう。

四大卒をクリアするには?

短大卒の方や専門学校卒の方で、学歴が満たないため、日本語教師になることを悩んでいらっしゃる方も多いようです。最近寄せられた関連するご質問を紹介いたします。

Q. 短大卒でも編入すれば学士(四大卒)になれるか?

Q. はじめまして。最近の日本語教師の制度改定の記事で、四大卒という言葉を使われていますが、短大卒の人が通信大学などに編入し、学士を取得する場合も四大卒に該当するのでしょうか?それにより日本語教師を今後選択するかどうかを検討しています。お返事をお願いいたします。

A. はい。一般論として、理論上は短大卒や専門学校卒の方でも、大学(通信制も含む)に編入し卒業すれば、四大卒(学士)の学歴をクリアすることになります。

但し、個々人のこれまでの履歴(取得単位等)により条件が異なる場合がありますので、その編入しようとする大学に、事前に確認されることを推奨いたします。

ちなみに、サイバー大学にも、同じように短大卒の方が、「大卒資格の取得」のために入学したという体験談が載っていました。

サイバー大学に入学した一番の目的は大卒資格の取得です。私は短大とIT系の専門学校を卒業して合計4年間勉強してきましたが、大卒者と比べてランクが下だと判断されることがあります。就職活動の時と転職活動の時にそのことを痛感しました。・・・(中略)・・・たとえ学業と仕事の両立に悩むことがあっても、長期的にキャリアプランを見据えて大卒資格を取得しておけば、後で必ず役に立つと思いました。

昔は一部の特別な人が選択していた通信制大学ですが、近年では、通信制の大学で大卒資格(学士)を取ることも、それほど珍しいことではなくなってきました。

サイバー大学について

ITの発展に伴って、通学と大差ない授業環境で履修を進めることができるようになったことと、人々がIT機器に慣れ親しんできたこと、生涯学習の価値観が浸透し、社会人になってから働きながら学ぶことが普通になってきたこと、などが背景にあるためだと思われます。

ある程度年齢が行ってから大学に通学することは、世代間ギャップや見た目などの面で抵抗があるかもしれませんが、通信制の大学であれば、その辺りは気にする必要がなくなります。

サイバー大学などの通信制の大学は、特に以下のような方々に需要があるようです。

  • 短大卒
  • 高専卒
  • 専門学校卒
  • 大学中退者
  • 他の大学に1年以上在学者
  • 社会人の方

通学不要なので、社会人の方でもうまく空き時間を利用して、大卒資格を取得できる有効な手段の1つと言えるでしょう。

本ページの「日本語教師」は、あくまで「法務省告示の日本語教育機関」に勤める場合の日本語教師を念頭に記載しております。「法務省告示の日本語教育機関」以外で日本語教師をする場合は、必ずしも同様に四大卒が必須条件とは限らない場合もありますので、ご留意ください。