日本語教育能力検定試験を独学で合格された方の体験談をご紹介します。
検定合格を目指されている方のご参考にしていただければ幸いです。

尚、日本語教育能力検定試験は、

  1. 2011年の「一部改定」以降、「基礎項目」を中心に出題されるようになり、
  2. また、日本語教育能力検定試験の出題範囲移行の意味と影響の通り、令和4年度(2022年)の検定試験から「必須の教育内容」 (文化庁)に準じた出題範囲へ移行するという発表があり、さらに基本的・基礎的な出題内容に原点回帰することになりましたので、

今後も以下と同じような勉強方法が参考になるかと存じます。

日本語教育能力検定試験出題範囲

 

尚、国家資格(登録日本語教員)制度施行後、令和6(2024)年度以降の日本語教育能力検定試験およびその資格としての効果については、こちら『今後、日本語教育能力検定試験はどうなるか 』をご参照ください。

当ページは、令和5(2023)年度までの状況をふまえた過去の記事となります。ご了承ください。

合格者詳細

合格証書

  • 会社員(女性,42歳)
  • 受験日:2017年10月22日(合格通知日:同年12月18日)
  • 独学勉強期間:約10ヶ月弱(1月~10月)
  • 日本語教師養成講座受講歴:なし
  • 検定対策講座受講歴:なし
  • 日本語教師経験:なし(10年程前にボランティア経験は1年程あり)
  • 日本語教育能力検定試験受験歴:なし(1回で合格)
  • 独学でかかった費用:26,000円+税(下記のテキスト代のみ)

Q1.いつ頃から日本語教育能力検定の勉強を始めましたか?

受験する年の1月からです。海外で日本語教師ボランティアを経験してから、気になっていた資格検定ではあったのですが、難しいと聞いていたので受験することは躊躇していました。
独学で合格した人の体験談を読み、やってみようと決心しました。
最初はほぼわからないことだらけで無謀かなとも思いましたが、9ヶ月もやればなんとかなるかもしれないと、まずは知らない専門用語を少なくすることを目標に参考書にとりあえず目を通すことからはじめました。あの頃は「合格」の文字は全く見えていませんでした。

Q2.一日の勉強時間はどのくらいでしたか?

まとまった勉強時間としては、だいたい平日で1~3時間、休日で用事がある日は1~2時間、ない日は4~6時間以上はやっていたと思います。

長期間に及ぶので、日によってやる気にムラもあり、勉強をしたくない日ももちろんありましたが、どんなに体調が悪くても3日以上はさぼらないようにしました。

どうしても気分がのらない日は、参考書を2~3ページだけ目を通したり、問題一問解いただけ、それすらやりたくない日は、BGMとして聴解問題のCDをかけているだけ、という日もありましたね。それでも全く何もやらない日を何日も作るよりはよかったと思います。

独学中何時間勉強すれば合格するというよりも、暇さえ見つけてはテキスト片手に毎日何かしら試験に関連する事柄に触れる、という習慣をつけることが大事だと思います。

テキストは片付けず、すぐ目につくところに置いておくようにして、隙間時間も上手く活用すると結構勉強は進みます。

試験3ヶ月前からは、できるだけテレビを消して、何となくテレビを見ることをやめることで、それまで以上に時間を作るようにしました。試験が終わってから、こんなに暇な時間があったのかと驚くほどです。

短期間集中で合格する人もいるらしいですが、長期間長時間、勉強に時間をかけたからこそ、試験直前に「もうここまで時間をかけて勉強してきたのだから後にも引けないし、来年も受けるのは絶対嫌だ!合格するしかない!」とエンジンがかかったように思います。試験一週間前は「もうやりたくない~」とよく言いながら勉強していました。ここまで長期間長時間しっかり勉強したのは久しぶりです。

Q3.具体的な勉強の方法は?

順番にまとめると6段階あったかなと思います。

1.試験概要のリサーチと把握

まずは独学で合格を目指している人の体験談をインターネットで探し、情報収集をして参考書や勉強のプランなどを参考にしました。

まず、

  • アルクの「日本語教育能力検定試験に合格するための本
  • ヒューマンアカデミーの「日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド

の2冊で試験内容を探るところから始めたのですが、最初は何がわからないのかわからないくらいに「?」だらけで、途方にくれました。

独学の進め方

とりあえず聞いたことがない言葉を減らすことから始めようと、用語集を買い、わからないことがあれば調べ、ノートに写し用語集にも載っていない言葉はインターネットでも調べ、それでもわからない時は理解できなくても先へ先へ参考書を読み進むようにしました。

最初は「わからないことだらけなのは当たり前だ。だからこそ挑戦の意味がある!」と思って勉強をやめないこと、わからないところで詰まりすぎないことも大事だと思います。

2.過去問に挑戦

一通り「合格するための本」と「完全攻略ガイド」をさらったところで、ヒューマンアカデミー「日本語教育能力検定試験合格問題集」と凡人社「日本語教育能力検定試験過去問題集」を購入して挑戦したところ、ほぼ全滅に近い状態。
選択問題といえ、あてずっぽうやまぐれで受かる試験ではないと痛感しました。

インターネットサイトで過去問の解説をしているページを見つけたので、一問一問解説を読みながら参考書と照らし合わせることをしました。

わかってきた

やっとこのあたりで、自分が何がわからなくて、これから合格に向けて何をすべきかがぼんやりとですが、わかってきました。

3.基礎知識の強化と自分の弱点の把握

最初に購入したテキストは難しすぎたので、基礎力強化のために説明がやさしい参考書を何冊か探しました。特に日本語文法の基礎の強化には時間をかけました。

聴解はかなり苦戦しましたが、英語の音声学は好きだったので、調音点と調音法の基礎をしっかりと頭に入れてからは、少し面白く感じるようにはなりました。

暇さえあれば参考書を読み、一冊の参考書を2回以上は黙読、音読、重要と思える部分や暗記すべきことは書き写すの繰り返し。2~3冊読み終わった頃には、ようやくなんとなく問題を解けそうな気がしてきました。

4.問題を解きまくることと弱点の強化

参考書の練習問題や過去問を暇さえあれば、解きました。最初は4択あるいは5択の選択肢の全てが同じに見えてわからない問題だらけでしたが、だんだん消去法で答えを2~3択に絞れるようになり、その中に正解が含まれている率が高くなっていきました。

問題を解く練習をしていくと、自分のケアレスミスの傾向もわかり、気をつけなければいけない点や強化すべき点がわかっていきます。また、よく出題される語句や問題の傾向もわかってくるようになってくるので、とにかくたくさんの問題に当たることは大事だと思いました。

5.過去問を解きまくる

だんだん過去問だけに絞って、何度も何度も繰り返し3年分を解き続けました。何度も繰り返していると解答を覚えてしまうので、なぜその解答をしたのかも説明できない場合は、参考書の該当箇所に戻ったり、解説をしているホームページを読み直したりして、丸暗記にならないようにしました。

試験直前になる前は、時間は気にせず、問題をしっかりと読んでじっくりと解くようにしました。(そうでないと、解答丸暗記で文章をよく読まずに解答するようになってしまうからです。)

6.仕上げのまとめ

10月に入ってからは、本番さながら制限時間を区切って、一日に一回分の検定試験問題をやりきるようにしました。

記述対策では、参考書を読み、例文をノートに書き写し、論文の書き方や文章構成のポイントをつかむようにしました。

聴解問題はとにかく耳を慣らすために毎日聞くようにしました。

それからアルクの「日本語教育能力検定試験に合格するための本」を初心に戻って読み返し、練習問題を解きました。

試験直前には、アルク「日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識」の本をさらっと読んで、最後の確認をしました。

10ヶ月の独学の軌跡(スケジュール)

1~3月「合格するための本」「日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド」を読み込んで、試験範囲の概要をつかむ。「合格するための本」の練習問題と解答、「完全攻略ガイド」の確認問題の解答をノートに書き写す。(この時点では内容が理解できなくてもひたすら読み込み、書き写すことを繰り返す。) わからない語句もその都度、用語集等で調べてノートに書き写す。
4月「ヒューマンアカデミー日本語教育能力検定試験合格問題集」を解いて解説を読み込む。全滅覚悟で過去問に挑戦してみる。
5~7月「考えて、解いて、学ぶ日本語教育の文法」にて基礎文法を徹底強化。
インターネットサイトで過去問解説を読んで理解する。
6~7月「日本語教育のスタートライン」「日本語教育能力検定試験に合格するための文法27」をひたすら読み込み文法強化。
7月聴解問題対策。
8月過去問を再度解きながら、間違えたところをテキスト該当箇所で確認。文法書を再度読み込み。「日本語教育能力検定試験に合格するための記述式問題」で記述問題の傾向対策等さらっとつかむ。
9月「日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識」を読み込んで今までの復習。過去問題集をひたすら解く(時間制限なし)。聴解問題の口腔断面図を手書きでまとめ。
10月短時間で過去問を解く練習を繰り返し。聴解問題に慣れるため、時間があれば聴解問題を聞く。記述問題を書く練習。

Q4.独学と検定対策講座での学習との違いは?

Q独学で勉強するのは大変でしたか?独学と日本語教師養成講座や検定対策講座受講で勉強するのと違うと思う点は?

最終的には自分次第なので、日本語教師養成講座を受講しても独学でも勉強が大変なことは変わらないとは思います。

独学のディメリット

ただ、独学の場合はテキストを自分で探さなければいけないこと、学習の適切な順序や課題を出してくれる人がいないので自分で模索しなければいけないこと、わからないことがあっても聞く先生はいないので、自分で調べて解決するかどうしてもわからないことはあきらめる(捨て問題と割り切る)しかないこと、が日本語教師養成講座を受講している人と違うところかと思います。

検定対策講座のメリット

上記の勉強方法で言う1~3が最短距離を通って行けるのが日本語教師養成講座や検定対策講座を受講するメリットかもしれません。モチベーションの維持も独学だと厳しいところはありますね。受験にあたって応援してくれたり、刺激し合える受講生仲間や先生の存在は大きいと思います。

それから、独学の場合はどうしても検定合格のための勉強に偏ってしまう部分はあるので、日本語教師としての基礎力をしっかりと付けたい方、すぐに日本語教師として教える予定のある方は、日本語教師養成講座等で勉強して基礎力を培うことをおすすめします。(私は検定には合格しましたが、まだまだ自分には実践的な力が足りないと思います。)

独学ならではの達成感

ただ、勉強の方法からテキストから自身で模索して独学で合格した達成感は、養成講座等を受講した方とは違った意味で大きいかもしれませんので、「あえて難しいことに挑戦したい。」とか「なるべくお金をかけずに合格したい。」と言う方は独学で挑戦もいい経験と自信にはなるとは思います。

Q5.役に立った参考書は何ですか?

私が勉強に使った参考書は以下の通りです。トータルで26000円(+税)程度でした。

参考書

  • 「日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド」ヒューマンアカデミー
  • 「日本語教育能力検定試験50音順用語集」ヒューマンアカデミー
  • 「日本語教育能力検定試験合格問題集」ヒューマンアカデミー
  • 「日本語教育能力検定試験に合格するための本」アルク
  • 「日本語教育能力検定試験に合格するための文法27」アルク
  • 「日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識」アルク
  • 「日本語教育能力検定試験に合格するための記述式問題40」アルク
  • 「日本語教育能力検定試験試験問題」凡人社(過去問3冊/直近3年分)
  • 「考えて解いて学ぶ日本語教育の文法」原沢伊都夫
  • 「日本語教育のスタートラインー本気で日本語教師を目指す人のための入門書」荒川洋平著

日本語教育能力検定試験攻略ガイドヒューマンアカデミーの「完全攻略ガイド」
アマゾンでも「ベストセラー」の検定独学の必須本
日本語教育関連でベストセラーは珍しい

ヒューマンアカデミーの「完全攻略ガイド」はくまなく試験範囲をカバーしているのですが、基礎知識がある上級者向けなので、まずこれを読んでわからなければ不足を補う参考書が能力に応じて必要になるかと思います。

私は文法を強化したかったので「考えて解いて学ぶ日本語教育の文法」で基礎を固めました。初級者にはわかりやすい参考書です。

個人的に気に入っていてオススメなのは「日本語教育のスタートラインー本気で日本語教師を目指す人のための入門書」。日本語教育能力検定試験の範囲をカバーしつつ、読み物としても面白いので勉強に飽きた時の息抜きにも使えますし、説明に出てくる例えが面白く、基礎知識のない初級者にもわかりやすい本です。

「日本語教育能力検定に合格するための文法27も初級者向けで説明がわかりやすいように思いました。著者によって例文や説明文のテイストが違うので、色々な参考書を読んでいくことで理解が深まります。また息抜きになるような読み物的な関連本も併せて使うことは重要です。

聴解用の参考書を一冊購入した方がよかったかなとは思いましたが、適切なものが見あたらなかったので、過去問と各問題集についている練習問題を繰り返し何度もやりました。

記述問題対策は「日本語教育能力検定試験に合格するための記述式問題40の一冊です。例題、例文が多く、書き方のポイントがよくまとまっているので、この一冊で十分かと思います。

過去問(日本語教育能力検定試験試験問題)凡人社は日本語教師養成講座等を受講している方でも独学の人でも必須です。検定試験の傾向の探りと最後の詰めは過去問がないとできません。3年分くらいあると繰り返し解けるのでいいかと思います。

「日本語教育能力検定試験に合格するための本は一番はじめに買いましたが、主に勉強のさわりと最後のまとめとして使い、最初に検定内容の把握に使う方も多いらしいアルクの「日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識は私は最後のまとめと確認として、読みました。

こちらの12冊の独学で合格した方法にて、これらのテキストの感想や勉強方法のコツについて、さらに詳しくまとめてあります。

Q6.自己採点結果はどのくらいでしたか?合否を分けたポイントは?

解答を写しきれていない問題もいくつかあったので正確なところはわかりませんが、マーク式で150点以上は点が取れていたようです。
合格点は推定165点前後らしいので、記述問題が合否を分けたのだと思います。記述式は参考書を直前にさらったくらいで、自分で作文する練習はあまりしていなかったので心配でしたが、私にとって書きやすいテーマだったこともあり、割と自信がありましたので、20点満点中15点以上は取れていたと思います。(おそらくぎりぎり合格点に達した感じです。)

試験時間が足りずに最後の問題まで解答できなかったという声も試験後に受験生から聞こえてきましたので、最後の記述問題まで落ち着いて解けるように問題を制限時間内に解く練習をしっかりしておいたことも合格につながったと思います。

Q7.合格の秘訣は?

最後まで合格することをあきらめなかったことです。範囲が広く試験勉強にかける期間も長くなるので、試験日までモチベーションを保ち、勉強をし続けて試験日を迎えることが意外と大変です。

日本語教育能力検定試験は毎回20%くらいの出願者が欠席するそうですが、おそらく出願後、途中で勉強をあきらめてしまう人が多いのだと思います。
試験勉強をはじめた頃はちんぷんかんぷんだったとしても、少しずつ勉強を続ければ必ず合格に近づきますので、試験当日まで気力を保ち、勉強を続けることです。
試験終了後は燃え尽き症候群のようになりましたが、それだけやりきったからこそ結果がついてきたのだと思います。

Q8.来年以降、日本語教育能力検定を受験する人へ

試験範囲も広く、また当日の試験時間も長いのでとてもハードな試験ではありますが、それだけに合格した時の達成感は大きいです。

日本語教師養成講座等で学ぶにせよ、独学にせよ、最終的には自分でやらないと良い結果はついてこないですし、「絶対合格する!」という気合いがないと乗り切れないと思います。

試験当日や直前に弱気になった時には「来年もあるから」と気を落ち着かせるのもいいですが、試験勉強をしている最中は来年の受験はないと思って勉強する方がいいと思います。

そして合格するには、とにかく時間を作って少しでも長く勉強すること。
3ヶ月集中で合格できた人もいるようですが、個人差も大きいので、1発合格を目指すなら、今日から勉強を少しずつでも毎日やることをお勧めします。試験当日まで気を抜かず、頑張ってください。

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