すべての日本語教育現場の中のシェア20%程度ではありますが、法務省告示校(法務省告示の日本語教育機関)で日本語教師になるための方法を解説します。

よく誤解されている方が多いのですが、日本国内のすべての日本語教育現場が、法務省告示校というわけではありません。

法務省告示校とは

法務省告示校とは、「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の留学の在留資格に係る基準の規定に基づき日本語教育機関等を定める件」(下表示参照)にて定められた教育機関のことを指します。

法務省 入国管理局
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukanho_ho28-2.html

分かりやすく言えば、「日本に来る外国人留学生を受け入れるために法務省管轄でビザ発給を必要とする日本語学校」のことで、具体的には以下の一覧リスト(PDF)に記載された日本国内の学校を指します。

www.moj.go.jp/content/001327333.pdf
法務省告示校リスト

(過去の法務省参考文献URL控え)

  • 20200831:http://www.moj.go.jp/content/001327333.pdf
  • 20170814:http://www.moj.go.jp/content/000107266.pdf

ちなみに、「日本語学校全調査」という、全国の日本語学校や大学・短期大学日本語別科、専門学校日本語科のすべてを対象にしたアンケート調査をもとにまとめた学校情報誌もあります。
日本語学校全調査
「日本語学校全調査」
(全調査シリーズ)

全国の大学・短期大学留学生別科、専門学校日本語科ならびに日本国政府官報告示校(法務省)を対象に実施したアンケート調査をもとにまとめられたもの。
通称「赤い本」として、日本語教育機関関係者に親しまれています。

法務省告示校で日本語教師として働くには

当ページは、2024年3月までの制度に関する情報です。国家資格(登録日本語教員)制度施行後、令和6(2024)年度以降は、変更となります。

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以下は、2024年3月までの状況をふまえた過去の記事となります。ご了承ください。

 

この法務省告示校含む法務省告示機関にて働くには、「日本語教育機関の告示基準」などのガイドラインに記載された資格条件などを満たしている必要があります。

→「日本語教育機関の告示基準」(新基準)(http://www.moj.go.jp/content/001199295.pdf)
→「日本語教育機関の告示基準解釈指針」(http://www.moj.go.jp/content/001200381.pdf)
※平成28年7月22日に公示、平成29年8月1日から施行

求められる資格

上記告示基準から要点をまとめると以下の通り。

(法務省告示機関で働く)全ての教員が、次の【1】~【4】のいずれかに該当する者であること。

  • 【1】大学/大学院で主/副専攻
    大学(短大は不可)または大学院において「日本語教育に関する教育課程」を主専攻(45単位)または副専攻(26単位)し、卒業した者(主副専攻ともに教育実習1単位以上を含む)

    • 通信制の大学で主専攻の場合、45単位中11単位以上は面接授業又は同時双方向性が確立しているメディアを利用して行う授業であること。通信制の大学で副専攻の場合は、26単位中6単位以上は面接授業又は同時双方向性が確立しているメディアを利用して行う授業であること。
  • 【2】四大卒+(文化庁届出受理)日本語教師養成420時間講座修了
    学士の学位を有し(四大卒)かつ日本語教育に関する研修であって適当と認められるものを420単位時間以上受講し、これを修了した者 →文化庁認定の日本語教師養成講座一覧リストはこちら

    • 四大卒以上でなければ420時間講座を修了しても有資格者とはなりません。
    • 1単位時間は45分を下回っていないこと
    • 研修内容が文化庁に届出され受理されていること(海外の講座は文化庁の審査対象外)
    • 420単位時間以上の研修は、教育実習45単位時間以上を含まれていること。
    • 通信教育の場合は、420単位時間以上の研修のうち、120単位時間以上は面接または同時双方向性が確立しているメディアを利用して行う研修であること。

    ※上記【1】【2】ともに、「日本語教育に関する教育課程」は、文化庁のシラバス「日本語教員養成において必要とされる教育内容」を踏まえ、「社会・文化・地域」、「言語と社会」、「言語と心理」、「言語と教育」、「言語」の五つの区分にわたり、授業科目が設定されたものであること。

  • 【3】日本語教育能力検定試験に合格した者
  • 【4】その他【1】~【3】に掲げる者と同等以上の能力があると認められる者
    • 例1:海外の大学または大学院において、【1】に準じる「日本語教育に関する教育課程」を履修し卒業したことを証明できる者
    • 例2:学士以上で、告示基準の公表日から遡ること3年以内に、法務省告示校にて日本語教員として1年以上従事したことがあり、その職を退職してから3年経過していない者。

【注意】:上記はあくまで法務省告示の日本語教育機関(上記リストの法務省告示校など)で働くための決まりです。法務省告示機関以外で働く場合は、上記資格条件は適用されません。例えば、法務省告示機関以外の日本語スクールや語学学校、会社、派遣出向型、オンライン講師、個人などの形態、その他海外の多くの機関で日本語教師として働く場合には、この「日本語教育機関の告示基準」のガイドラインの縛りはありません。

関連Q&A

Q.法務省告示校の日本語教師の求人は?

Q. 法務省告示校で日本語教師として就職するには、その求人はどこにあるのでしょうか?

A. 「日本語教師 求人」「日本語学校 求人」などのキーワードで検索すれば出てきます。

当サイトでは、こちら 法務省告示校の日本語教師の求人のページに、新着順にリスト形式でまとめてあります。

Q. 高卒ですが日本語教師になれますか?

Q1.質問ですが、私は最終学歴が高卒なのですが、就職に関係してきますでしょうか?日本語教師になれる可能性はどのくらいあると推測されますか?厳しいのは承知しています。しかしチャレンジしたいのです。私はカナダに半年間語学留学していていました。現在30歳で小学生に1年間家庭教師として英語を教えた経験あり。最近までオンライン(有料)で日本語を教えていましたが、あまりにも生活が不規則になった為、継続は考え中。現在、幼稚園で教壇に立ち書道の先生をしています。

A. あくまで理論上かつ当記事アップ時現在の制度上ではありますが、法務省告示機関では、上記「日本語教育機関の告示基準」の通り、高卒であっても、日本語教育能力検定試験さえ合格していれば、なることはできます
但し、上記の「告示基準」はあくまで最低限の条件であり、実際の求人情報を見てみると、「法務省告示機関」であっても検定合格者にも「四大卒であること」の条件を独自に採用側が課しているケースは多いです。

  • 【国内】:
    そのため、日本国内において、高卒でもなれる可能性は、3-4割程度ぐらいとみられます。
  • 【海外】:
    また、海外においては、四大卒でないとその国の就労ビザが取れない場合が多いので、海外で高卒の方がなれる確率は2-3割程度になるかと存じます。
    但し、海外の場合、配偶者ビザその他、就労するのに適正なビザを別に保持している方は、高卒云々は関係なくなり、後はその採用機関独自の採用基準のみとなります。極端な話、海外ではビザの心配がない人は、「日本人だから」という理由だけで、無資格・学歴不問で日本語教師をやっている人もいらっしゃいます

Q. 文化庁認定の420時間養成講座を修了すれば有資格者になれますか?

A. いいえ。ただ「文化庁認定の420時間養成講座を修了」さえすれば有資格者になれる、というわけではありません。上述の通り、法務省告示機関で日本語教師として働く場合は「420時間講座」修了者には、四大卒以上であることが有資格者の1条件として併せて求められています。つまり、いくら文化庁認定(届出受理)講座を受講しても、四大卒以上の学歴が備わっていなければ資格としては成立しないという落とし穴があるということになります。

講座の運営団体では、「文化庁受理」「認定」ばかりを前面に押し出して、肝心の学歴部分(四大卒でなければいくら420時間の養成講座を修了しても資格とはならない)をあまり説明しないで受講の勧誘をおこなっているところが多いので注意が必要です。

Q. 通信教育は420時間と認められないというのは本当ですか?

Q2. ある会社のホームページに「通信教育は420時間講座修了と認められない。だから(そのある会社の)日本語教師養成プログラムも通信講座なので、この条件(「日本語教師養成講座で420時間以上の教育を受けていること」)は満たしません。」との記載があったのですが、本当ですか?

A. いいえ。その会社のホームページの表記は古いアップデートされていない情報であり、かつ誤解を与える表記であり正確ではありません。まず、上述の通り、最新(2017年8月1日以降施行)の法務省入国管理局及び文化庁の指針では、その条件下で、通信教育であっても420時間修了と認められています。「通信教育だから一律で認められない」という論理は成立しません。
念のため、文化庁にも確認しましたが、

今回の新基準においては,通信及びeラーニングによる日本語教員養成講座が教員要件として緩和されました

との回答を得ています。
また、元々、「法務省告示機関」以外で働く場合は、上記指針は関係なく、通信教育であっても採用基準を満たす資格として認められており、実際、通信講座修了で就職し、日本語教師として働かれている方は昔からいらっしゃいます。

Q. 日本語教師の資格を管理する団体はどこなのか?

Q3.日本語教師について、そもそも検定試験合格者や420時間の講義を受けた者に資格を与える設定し、一元的に管理している団体は何なのですか。420時間の講義を受けようと考えているのですが、何処の団体が420時間の講義を受ければ日本語教師になっても良いとお達しを出しているのですか。お達しを出している団体のお墨付きをもらった420時間講座の専門学校というのはないのですか。

A.
「どこで」日本語教師になろうとしているのかで、回答が変わってきます。大きくわけると、
【1】「法務省告示機関」で働く場合と、
【2】「法務省告示機関以外」で働く場合の2つに分けられます。

【1】法務省告示機関(日本国内の一部の日本語学校など)で働く場合:

もし、日本国内の法務省告示機関で働きたいという場合でしたら、
管理しているのは法務省 入国管理局 です。上記「日本語教育機関の告示基準」(新基準)及びその「解釈指針」参照の通り。
そして その法務省の新基準にそって、「420時間講座」の内容を審査・管理するのが 文化庁 です。「お達しを出している団体のお墨付きをもらった420時間講座の専門学校」というのは、文化庁のホームページ(www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/kyoin_kenshu/)内の、「日本語教員養成研修実施機関・団体」にて公開されています。→参考:[日本語教師養成講座を比較-評判や費用,認定一覧] 但し、これらはあくまで、日本国内の一部の学校(法務省告示校)でしか適用されない規定であり、法務省告示機関以外で働く場合は、これらの資格規定は関係ありません。

【2】上記(法務省告示機関)以外で働く場合(国内・海外):

その他の日本国内の日本語学校や、語学学校、スクールで働く場合や、個人で教えたり、オンライン講師で教えるような場合、そして海外で日本語教師をやる場合は、この法務省や文化庁の基準は関係ありませんし、管理している団体なぞありません。資格も何もかも自由です。どこの420時間講座でもOK、通信講座でも何でも「日本語を教える能力があると証明」できさえすれば何でもOK(採用者の判断基準次第)ということになります。
→さらに「日本語教師になるには」にて条件や給料など詳しく説明しておりますので、ご参照ください。

法務省告示機関以外の求人の見つけ方

Q4. 私が420時間の資格を取得した時は、大卒ではなくとも日本語学校で働けました。しかし2017年の法務省の新基準で、大卒でない人は、日本語教師として働けないと制度が変わるみたいです。これから別の業種で就職活動しなくてはいけないのでしょうか?

A. 制度自体は上記の「日本語教員資格ガイドライン」参照の通り、1988年頃から大して変わっていません。元々、「420時間修了者」+「四大卒」はワンセットなのが基本的な枠組みです。よって、ご質問者様の場合は、以下の(1)-(3)の対策が考えられます。

  • (1)日本語教育能力検定試験に合格する。検定試験に合格すれば、その新基準下でも学歴は求められませんので、法務省告示校でも働き続けることができます。
  • (2)通信制の大学含め、大学に通い直す(但しこれは時間・費用的に現実的ではないでしょう)。
  • (3)法務省告示機関以外で働く(→ひとまず告示校以外で働きながら、検定合格を目指せばよいでしょう)。探し方は簡単です。
1.「日本語教師 求人」などのキーワードで検索し、気になる求人をピックアップする。

2.その求人の勤務先が上記「法務省の告示リスト」に載っていないかチェック。

3.その求人の学校名がリストに載っていなければ、それは法務省告示校ではありません。

法務省告示校以外の求人は、たくさんあります。こちらの法務省告示校以外の日本語教師の求人情報などもご参考にされてください。

その他参考:

ご質問者様に限らず、一般的には、経済的・時間的にも、上記(1)または(3)の選択肢が現実的かと存じます。

Q. 専門学校卒業でも日本語教師を目指せますか?

Q5.最終学歴が高卒や専門卒の方も、御社の日本語教師養成講座を受けに来られる方は多いですか?
私は国語・日本語とは全く関係のない専門卒です。実際に四大卒で無い方でも働いている方もいるでしょうし、働く場所によると思いますが、現状として四大卒でないとやはり就職には不利になりますか?

A. 最終学歴が高卒や専門学校卒の方でも、当日本語教師養成講座 420時間 通信教育を受講されている方はたくさんいらっしゃいます。これまで受講生は下は16歳から上は70歳台の方まで、高校生・主婦・社会人の方々など老若男女様々な方が受講されていらっしゃいます。当420時間講座は検定試験対策の学習も含まれておりますので、420時間通信講座を受講しながら、検定試験も合格すれば、上述の「告示基準」(新基準)の通り、法務省告示機関でも働ける条件を満たすことになります。日本国内はもちろん、海外からも受講可能です。

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